賃上げの理由「従業員の生活安定」「人材定着」 一方で「賃上げしたくてもできない」の声も
つぎに、正社員と非正規雇用の分類で賃上げ対象をみると、「正社員と非正規社員の両方」と回答する企業は56.8%」と過半数を超えた。
これについて同社では
「雇用形態に関わらず賃上げを実施する事業所が過半数を占めた一方で、30%以上が『正規雇用のみ』と回答しました。雇用形態による待遇格差が解消されていない現状を示す結果にもなっています」
とまとめている。
賃上げをする理由については、「従業員の生活を支えるため」が「58.5%」で1位となり、2位の「従業員の定着率向上(引き留め)のため」も「52.5%」で、半数以上がいずれかを賃上げ理由として選択している。3位の「物価高騰による生活費増加に対応するため」も5割に迫っている。
一方で、「賃上げを実施する予定はない」と回答した企業に理由を聞くと、「業績の向上(回復)が見込まれていないため」を「47.4%」の事業所が選択している。
次いで、「現在の賃金が適切であるため」(37.5%)となり、中小企業の厳しい経営状況がうかがえ、現状においては賃上げの必要性を感じていない事業所も少なくないようだ。
そのうえで、全事業所に対して、物価高騰に対応するための特別手当を支給するかを聞くと、「すでに支給した」(9.9%)、「これから支給する」(5.1%)を合わせて「16%」の企業が手当を支給する意向が分かった。
もっとも、今回の調査では、賃上げを実施する企業が過半数を超えている一方で、インフレ手当は大半の企業が支給しない結果となった。
自由回答欄で賃上げを実施する企業の記述を見てみると、
・定着率の向上のためには必須(建築・不動産/5~9名/京都府)
・物価高ではあるが、企業にとっても資材価格が上がっていて賃上げは簡単ではない(建築・不動産/10~19名/京都府)
・成長を続けることにより待遇面を改善できるが、社員には危機感を持って行動してもらいたい(出版・印刷/10~19名/大阪府)
という意見が上がる。
反対に賃上げを実施しない企業の記述では、
・社会保険料の負担と物価高の影響が大きく、賃上げどころではない(介護・福祉/5~9名/茨城県)
・電力料の高騰の為したくてもできない(工場・製造/10~19名/愛知県)
・営業利益減少、経費増加の中での賃上げは難しい(教育/~4名/大阪府)
などが挙がっている。
同社では総括として
「賃上げ状況は横ばいではありますが、賃上げ内容については『定期昇給』または『ベースアップ』を実施する事業所がそれぞれ50%以上。特に企業にとって人件費増につながる『ベースアップ』を実施する事業所の割合が前年(39.4%)よりも増加した点は、記録的な物価上昇や激しさを増す人材獲得競争などを背景に、給与水準の引き上げが避けられない状況にあることを示しているのかもしれません」
「一方、賃上げを『実施しない予定』の事業所は全体の45.4%です。その半数近くが『業績の向上(回復)が見込めない』ことを理由として挙げており、『賃上げしたくてもできない』という意見も散見されました。
2023年度は大手主要企業が高水準の賃上げを予定しており、中小企業との格差拡大が懸念されていますが、今回の調査結果からは中小企業間における格差の広がりも進んでいることがうかがえます」
とのコメントを出している。