春闘の交渉結果が続々と報じられるなか、ところで中小企業の賃上げ水準はどのくらいなのだろうか?
ネットオン(大阪府大阪市)が2023年3月29日に発表した、同社の採用業務クラウドの登録ユーザーである335社の中小事業所への「2023年の賃上げ予定に関するアンケート調査」によれば、54.6%の事業所が賃上げを実施予定ということが明らかになった。
また、全体の63.4%が5%未満の範囲で賃上げを実施するという結果も出た。2月の全国の消費者物価指数の上昇幅が3.1%なので、このあたりの水準で賃上げが実現されるといいのだが。
賃上げ行う事業所は54.6% 企業も「ベースアップの必要性を意識せざるを得ない状況」
連合(日本労働組合総連合会)の3月の春季労使交渉における中間発表では、賃上げ率は平均で4.49%程度となる模様。最終回答で賃上げ要求が4%を超えれば、1998年以来の25年ぶりの高水準となる。
いずれにしても、「賃上げ」への関心が高まっている中、ネットオンによる今回の調査は2023年3月9日から3月16日まで、同社製品「採用係長」を利用する全国の従業員規模が20人以下の事業所を中心に、「飲食」、「建築・不動産」、「介護・福祉」、「運輸」などさまざまな業界の人事・労務担当者からインターネットアンケートで回答を得た。有効回答数は335社。
はじめに、2023年度の賃上げ予定について聞くと、「54.6%」の事業所が「実施する予定」と回答し、過半数を超えた。2022年3月の調査と比較すると0.4ポイントの上昇となった。
続いて、初めの質問に「賃上げを実施する予定」とした企業に内容を尋ねると、半数以上の事業所が定期昇給とベースアップを行うことがわかった。企業が一時的な増額よりも、従業員にとって長期の安定につながる定期昇給とベースアップを優先するかたちとなった。
同社では、
「今回の調査ではベースアップが前回調査(39.4%)から12ポイント上昇しています。ベースアップは長期にわたる人件費増が見込まれますが、その割合が増加した点からは、企業がベースアップの必要性を意識せざるを得ない状況にあることが読み取れる」
とコメントしている。
また、賃上げ率は「2~3%未満」が「20.2%」、「1~2%未満」が「15.8%」、「1%未満」が「3.3%」、「3~4%未満」が「7.7%」、「4~5%未満」が「16.4%」という結果だった。全体の63.4%が、5%未満の範囲で賃上げを実施するという。
ちなみに、2023年の春闘で傘下の労働組合が要求した賃上げ率が平均4.49%と発表しているので、この水準と近い賃上げ率を予定している企業は、4~5%未満を予定している「16.4%」が当てはまるということになるだろう。