大学卒業式「心を震わす学長の挨拶」はコレ!会社ウォッチ編集部が独断で選ぶ珠玉の言葉の数々【1:熱き志で世界を救おう編】

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キミたちは、わが身を省みず被災者のために頑張った学生たちの後輩だ

福島大学の三浦浩喜学長(福島大学公式サイトより)
福島大学の三浦浩喜学長(福島大学公式サイトより)

   3年前の2020年、福島大学は「地域とともに21世紀的課題に立ち向かう大学」という新しい目標を掲げた。三浦浩喜(みうら・ひろき)学長は「その原点はいうまでもなく、2011年に起きた東日本大震災と、東京電力福島第一原子力発電所事故でした」と、こう語りかけた。

「12年前の3月のこの日、皆さんが今座っているこの第一体育館の床には、被災地から命からがら避難してきた百数十名が身を寄せる、ダンボールの仕切りが立ち並ぶ避難所でした。本学は、全国で唯一、避難所を設置した大学となり、教員と学生が一丸となって避難者の命を守りました」
「大学の意地にかけても、避難者に冷たいものは食べさせない、と毎日温かい食事を作り続けました。避難所を運営していたのは、教職員のほかに、公共交通機関が寸断され、自宅に帰れなくなった70名ほどの学生でした。その中には、3月25日に、皆さんのように晴れの姿で卒業式を迎えるはずだった4年生も大勢いました。10日間も風呂に入れないまま、就職先のアパートも探しに行けないまま、避難者のお世話を続けていたのです」

   大学の外でも、学生のボランティア活動は行われていたようだ。不安定になった子どもたちを忍耐強く見守る学生たち。「目の前で困っている人を放って、自分だけが就職していくことは考えられない」と就職試験の直前までボランティアを続けた学生もいたという。

「あれから12年がたち、問題のフェイズは大きく変わりました。人口流出・少子高齢化の中での自治体の再建、復興のための新産業の創出、再生可能エネルギーやALPS処理水の問題。この福島県は、世界的な課題を一足先に抱えた地域となっています。ここに立地する本学は、まさに『21世紀的課題』に取り組まなければならない大学なのです」

   三浦浩喜学長はウクライナ問題にも触れた。

「恐怖に震える人々の表情、地下壕で疲れ切った避難者、救いを求める人々の長い列は、東日本大震災を彷彿とさせます。本学とウクライナは、原発事故を体験した当事者として共同研究を行い、身近な関係にありました」
「世界は常に変化し続けています。大震災や新型コロナ、現在も続くウクライナの悲劇。私たちは危機に直面する度に、ほんとうに大切なものは何か、守るべきものは何かを真剣に考えるチャンスが、与えられます」

   そして、卒業生にこう呼びかけたのだった。

「卒業生の皆さん、皆さんは、12年前に、わが身を省みず被災者のために頑張り抜いた学生たちの後輩であること、福島大学は、そうした貴重な経験を踏まえて、新しい研究分野を開拓してきた大学だということを忘れないでください」
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