京都市が、空き家や別荘など、ふだん人が住んでいない住宅に課税する「空き家税」を、2026年度にも導入すると、23年3月24日に発表した。
「空き家税」の正式な名称は「非居住住宅利活用促進税」で、京都市が条例に基づく「法定外税」として独自に創設する。京都市は市議会が条例案を可決した昨年3月以降、総務省と協議を進め、この日、課税に必要な松本剛明総務相の同意を得た。
空き家問題には、京都市のみならず、国や各自治体が頭を痛めている。ただ、その導入に向けては、不動産投資家のあいだで賛否が分かれているようだ。
対象物件は、京都市全域で約1万5000件
京都市が導入を予定している「空き家税」は、市街化区域内にある空き家の所有者で、固定資産評価額が20万円以上(施行後5年間は100万円以上)の戸建て住宅やマンション(京町家など歴史的価値のある建物は除く)を課税対象としている。
京都市によると、税率は空き家の固定資産税評価額に応じて、家屋価値割の場合は0.7%。立地床面積割では、家屋価値割の課税標準が「700万円未満」の場合の税率は0.15%、「700万円以上900万円未満」の場合は0.3%、「900万円以上」の場合は0.6%となる。
対象物件は市全域で約1万5000件にのぼるとみられ、税収は年間約9億5000万円を見込んでいる。
「観光地・京都」は、ホテルや旅館が数多く建つ。立地のよい場所には、その多くが宿泊施設となり、インバウンド需要もあって価格が高騰。結果的に、一般の人が住むための物件が不足する状態が続いていた。
また、景観を保全するため、建物の高さ規制を設けていることもマンション建設などの弊害となっている。住宅の供給不足の一因となっており、若い世代やファミリー層を中心に「京都市離れ」が起きていた。
新たに空き家の所有者に課税すれば、税収増に寄与するほか、売却や賃貸物件を若い世代向けの住宅などへの活用に促すことができ、空き家問題の解決と子育て世帯などの流入、定住が狙える。
空き家の活用を促す課税は全国で初めてで、門川大作市長は「地域を活性化し、住みたい人が住める、若い人が暮らせる街にしていく。説明責任を果たしながら進めたい」と述べた。
カギは、空き家を有効活用する担い手の存在か?
空き家問題は、いまや日本にとって最も重要な課題の一つだ。
総務省の「2018(平成30)年住宅・土地統計調査」によると、国内の空き家の数は約849万戸で、総住宅数に占める空き家の割合は13.6%と過去最高に達している。
空き家の増加で倒壊や外壁の落下などが起こるおそれがあり、防災や防犯、衛生面などへの悪影響が指摘される。増え続ける空き家は、いまや社会問題化している。
それだけに、空き家への課税を強化することで、放置されていた空き家を売り物件として不動産市場に流れやすくするという京都市の「試み」が、今後、全国に波及するのではないかという期待は小さくない。
そうしたなか、不動産投資サイトの「楽待」を運営するなど、不動産業を通じて空き家問題の解決を目指しているファーストロジックが、京都市の「空き家税」について投資家に緊急アンケートを実施した。3月23日の発表。
不動産投資家に、「(京都市が導入を計画している)空き家税を支持しますか?」との問いに、「支持する」が43%、「支持しない」が44%と、評価が二分する結果となった。「わからない」は13%だった。【円グラフを参照】
京都在住の投資家は、
「空き家が増えるとエリアの資産価値が下がるので、空き家税については賛成」
と話した。その一方で、
「買い手のつかない土地を相続した場合は永続的に課税されてしまう」
といった意見もあったという。
空き家税の導入は、増える空き家による住環境の悪化が顕在化している地域では、住民の理解が得られやすいとみられるものの、導入が空き家解消にどの程度の効果があるのかは不透明なところもある。
今後は空き家の所有者と、売却や賃貸物件となる、その空き家を有効活用する担い手側とのマッチングや、居住を希望する若い世代の呼び込みにつながる施策がカギになりそうだ。