「週刊東洋経済」「週刊ダイヤモンド」「週刊エコノミスト」、毎週月曜日発売のビジネス誌3誌の特集には、ビジネスパースンがフォローしたい記事が詰まっている。そのエッセンスをまとめた「ビジネス誌読み比べ」をお届けする。
部長や課長になっても厳しい現実
3月27日発売の「週刊ダイヤモンド」(2023年4月1日号)の特集は、「部長課長の残酷」。企業の部長や課長は、いったいどれくらいの報酬をもらっているのか。その一方で、新しい人事制度や役職定年制度で狙い撃ちされている、厳しい現実を報告している。
部長、課長といえば高給をもらっていると思われがちだが、厚生労働省の「賃金構造基本統計調査」(2021年)によると、部長の平均年収は900万円、課長は762万円。部長は平社員の平均年収445万円の倍以上もらっているものの、年収1000万円には達しない。
大企業に限ると、部長は1193万円、課長は935万円、平社員は525万円だ。しかし、部長や課長に昇進しても、一定の年齢に達するとポストから外れる「役職定年」が待ち構える。特集では、各企業の部長、課長の残酷な現実に迫っている。
働かない管理職を対象にシニア包囲網が構築されているという。その例に取り上げられているのが、ホンダである。3つの策に打って出たというのだ。
1つは21年4月に導入した早期退職制度「ライフシフトプログラム」だ。定年の65歳になる前に退職すれば、割増退職金が加算される。55歳の管理職ならば、退職金総額は8000万円に上るという。
これに応募者が殺到。21年7月末~22年3月末の退職者は3200人で、うち2500人がこの制度を利用した。これは、ホンダの国内正社員の6%に相当する規模だ。
退職者が多いのは鈴鹿製作所、本田技術研究所、埼玉製作所と四輪事業の生産・開発部門だったという。ホンダでは四輪の電動化に向けて製造部門の集約を進めており、拠点の統廃合をにらみ、社員が先んじて退社を選んだと見られる。
このほか、役職任期制、成果報酬部分を増やす評価制度の導入が検討されており、「最低評価でも年収1100万円」社員の淘汰が図られそうだという。
パナソニックホールディングス(HD)では、年功序列の廃止で部長課長の若手登用を狙っている。管理職試験の内容を見直し、面接中心の選考に切り替えた。
HD子会社で電子部品事業を展開するパナソニックインダストリーでは、23年4月の人事から管理職試験を廃止。同時に課長職で約750、部長職で200ある全ポストを「公募制」として、管理職の資格がなくてもあらゆる社員が課長・部長のポストに挑戦できるようにした。
ソニーグループも15年から社員の報酬を職務給とする「ジョブグレード制」を導入した。事業部長まで上り詰めれば2000万円を超す社員もいるようだが、同社の課長・部長は、職務スキルにかかわらず、年齢で一律解任されて「ヒラ」等級に降格する厳しい現実もあるという。
◆メガバンクも「実力主義」強化
メガバンクの人事制度にも、実力主義が強化される変化が出ている。
三菱UFJ銀行では、職階(資格)を5階層から3階層にスリム化した。実力ある若手や中堅行員を、相応の職務に早く就けるようにするためだ。「S(経営職階)」に昇格すれば、新制度では30代後半でも本部の部長になれる。若手登用の波が押し寄せ、50歳前後の世代にしわ寄せが出そうだという。
このほか、東京海上日動火災保険が24年4月から導入を予定している新人事制度、バブル入社組があふれ返るビール4社共通の悩みなどをリポートしている。
16業界別の部長・課長の年収ランキングも興味深い。
部長の年収トップは金融・保険業界の1331万円で、課長でも1082万円と、16業界で唯一、1000万円超えだ。
2位は電気・ガス・水道業界の1192万円、3位は情報通信業界の1065万円と続く。苦しいのは宿泊・飲食サービス業界で、大企業の部長でも年収716万円と、トップの半額以下である。どの業界を選ぶかで、年収格差がついてしまう現実が露わになっている。