高吸水性樹脂「アクアリック」は、紙おむつ原料で世界トップシェア EV用リチウムイオン電池の粉末材料も存在感
ここで、なじみの薄い方も多いとみられる日本触媒という会社について振り返ってみる。
1941年に大阪市で「ヲサメ合成化学工業」として設立。当初の社名には創業者の名前を冠した。現社名となったのは1991年。今も本社は大阪市に置いている。
1959年に開発した酸化エチレンはペットボトルのPET樹脂の原料やポリエステル繊維の原料、建設資材や洗剤の原料など日本の石油化学工業の発展に寄与した。
1985年に大規模生産を開始した高吸水性樹脂「アクアリック」は、優れた吸水性と保水性を有することで紙おむつ材料に採用され、飛躍的に普及した。現在でも紙おむつ原料の高吸水性樹脂としては世界トップシェアを誇る。
最近では、電気自動車(EV)用のリチウムイオン電池に使う粉末材料などにも存在感を見せている。
海外売上高比率は2022年4~12月期で57.0%に達している。
日本触媒は近年、原料高分を上乗せする価格を取引先に浸透させることで高収益を保ってきたが、今回の下方修正によって肝心の販売数量が減っている事態が明らかになり、投資家の動揺を誘った。
今後、世界的に景気が減速すれば先行きの業績の重しとなりかねないといえそうだ。(ジャーナリスト 済田経夫)