47都道府県別に見る「学校数と教育費」...幼稚園・保育園、小中高が多い、少ないのはどこか?【俯瞰して見る日本(5)】(鷲尾香一)

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   シリーズ連載中の「俯瞰して見る日本」。第5回は、学校数について取り上げる。少子化は日本にとって最大の問題だ。少子化により児童・生徒数が減少し、学校の存続が危機に瀕している。そこで、保育園、幼稚園、小中高等学校の割合と教育費の状況を取り上げた。

10万人当たり保育園の数...最多は青森県、最小は奈良県 幼稚園の数...最多は徳島県、最小は鳥取県

   2020年度の0~5歳人口10万人当たりの保育園数が最も多いのは、青森県で1042園。全国平均が534.5園なので、青森県には全国平均の倍近い割合で保育園がある。一方、最も少ないのは奈良県の404園となっている。(表1)

   下位に入っている都道府県が保育に対して積極的ではないのかと言えば、上位10の県は人口減少県で子どもの数が少ないのに対して、下位10は人口数が多く、子どもの数も多い県であることから、「保育園不足」の表れととらえることができそうだ。

   一方、2020年度の3~5歳人口10万人当たりの幼稚園数では、最も多いのは徳島県の712園で、全国平均324園の倍以上の割合で幼稚園がある。最も少ないのは、鳥取県の150園で徳島県の3分の1以下だ。(表2)

   保育園数と幼稚園数を比較すると、保育園数の下位10には人口が多い都道府県が多く、保育園不足の状況が見て取れたが、幼稚園では上位下位とも人口減少県が多く、大都市を抱える県では宮城県以外は入っていない。

   もう一つの特徴は、幼児教育の場が保育園主流と幼稚園主流で分かれており、保育園の上位10で幼稚園の上位10に入っているのは、島根県のみだ。一方で、秋田県と新潟県は保育園で上位10に入っているが、幼稚園では下位10に入っている。保育園、幼稚園とも下位10に入っているのは愛知県のみとなっている。

10万人当たり小中学校&高校の数...最多は高知県、最小は神奈川県

   幼児教育では、保育園主流と幼稚園主流に分かれていたが、かたや小中学校、高等学校では、児童・生徒数の影響が鮮明に表れている。

   2021年度の6~11歳人口10万人当たりの小学校数でトップは高知県の721校。全国平均が311校なので、2倍以上の学校数となっている。最も少ないのは神奈川県の197校で高知県の3分の1以下だ。(表3)

   これは、中学校、高等学校でも変わらない。2021年度の12~14歳人口10万人当たりの中学校数のトップは高知県の755校。全国平均は312校なので、やはり2倍以上の学校数。最も少ないのは神奈川県の203校で、高知県の3分の1以下。

   2021年度の15~17歳人口10万人当たりの高等学校数でトップは高知県の255校。全国平均は146校で、高知県は100校以上多い学校数。最も少ないのは神奈川県の98校で高知県の3分の1に近い。

   小中学校、高等学校の上位10と下位10を見ると、そのメンバーはほとんど変化がない。

   つまり、児童・生徒数の少ない県が上位10に入り、多い都府県が下位10に入っている。これは1校当たりの生徒数が上位では少なく、下位では多いという状況を示している。学校数は少ない生徒数でも学校を維持している状況の表れでもあるのだ。

   それは、児童・生徒1に当たりの教育費に明確に表れている。小中学校、高等学校とも同じ傾向だが、2019年度の小学校児童一人当たりの教育費を取り上げると、最も高いのは高知県の151万2245円で、最も低いのは埼玉県の75万4925円。神奈川県が2番目に低く、81万9006円となっている。(表4)

   この上位10、下位10のメンバーは、小学校数の上位10、下位10とほとんど同じだ。そして、教育費の上位10、下位10のメンバーは小学校、中学校、高等学校ともほとんど変わらず、また、学校数の上位10、下位10ともほとんど変わらない。

   つまり、学校当たりの生徒数が少ない県は、それだけ教育にコストがかかっているということだ。これは教育のレベルや熱心さとは関係なく、あくまでもコストパフォーマンスの問題だ。

1000人当たり不登校児童比率...小学校の最高は沖縄県、最低は福井県 中学校の最高は北海道、最低は福井県

   さて、最後に小中学校の1000人当たりの不登校児童比率を取り上げる。

   2020年度の小学校の不登校比率では、沖縄県が最も高く15.35%。最も低いのは福井県の6.00%で、沖縄県は福井県の倍以上の比率で不登校が発生している。(表5)

   全国平均は10.05%で、上位22位の栃木県までが平均を上回っている。沖縄県の15.35%は100人に1.5人、全国平均の10%は100人に1人の不登校が発生していることを示している。

   2020年度の中学校の不登校比率では、北海道が最も高く50.74%。最も低いのは福井県の29.52%。全国平均は41.35%で上位23位の新潟県までが平均を上回っている。北海道の50.74%は100人に5人の不登校が発生していることを示しており、上位22位の茨城県までは100人に4人の不登校が発生している。(表6)

   小学校と中学校の不登校の比率を見ると、島根県、福岡県、高知県、北海道の4県は小中学校とも上位10に入っている。

   一方、福井県、岩手県、香川県、山形県、秋田県、埼玉県の6県は小中学校とも下位10に入っている。また、富山県は小学校では上位8位ながら、中学校では下位5位に入っており、中学校での不登校が大きく減少している。

   今回は学校数について取り上げた。第6回目は、住まいの関連について取り上げることとする。【第6回につづく】

鷲尾香一(わしお・きょういち)
鷲尾香一(わしお・こういち)
経済ジャーナリスト
元ロイター通信編集委員。外国為替、債券、短期金融、株式の各市場を担当後、財務省、経済産業省、国土交通省、金融庁、検察庁、日本銀行、東京証券取引所などを担当。マクロ経済政策から企業ニュース、政治問題から社会問題まで、さまざまな分野で取材。執筆活動を行っている。
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