日本で働く外国人社員は、雇用の安定を評価する一方で、「給与水準」や「日本語への配慮」、「人事評価基準」には不満をもっていることがわかった。外国人留学生就職情報サイト「リュウカツ(R)」を運営するオリジネーター(東京都渋谷区)が、2023年3月24日に発表した。
外国人社員の定着のカギは、企業の人事評価制度やキャリアパスの明示にあるとみている。
日本で働いて良かったこと、「雇用が安定している」
調査によると、日本で働く外国人社員を対象に、「日本で働いて良かったこと」(複数回答)を聞くと、54.0%の人が「雇用が安定している」と答え、最多だった。次いで、「やりたい仕事ができて、やりがいを感じる」と答えた人は25.8%で、2倍以上の差がついた。
世界的に先行き不透明な経済情勢が続くなか、日本企業に浸透している「長期雇用」は外国人社員にとって魅力となっているようで、前回調査の2021年からさらに傾向が強まっていることがわかった。 また、「日本語力にかかわらず、専門性があれば仕事を任せてくれる」も21.0%と、前年調査から4.7ポイント増え、2021年の7位からランクアップした。【図1参照】
外国人社員の不満、第1位は「給与水準が高くない」こと
その一方、「日本で働いてみて、不満に思ったこと・がっかりしたことは?」(複数回答)を聞いたところ、最も多かったのは「給与水準が高くない」で51.6%。前回調査から19.8ポイントも増えた。【図2参照】
オリジネーターによると、「国によっては留学経験者に対して日本以上の高い水準の給与を支払うケースもあるため、そういった国や地域出身の外国人社員らみると、日本の給与水準が思ったほど高くないという印象になったと推測されます」としている。
第2位は「日本語ネイティブでないことへの配慮が不足」(30.6%)、第3位は「人事評価の基準が明確でなく、外国人だと昇給・昇進できない」(29.0%)、第4位の「残業が多い」(27.4%)が、それぞれ約3割を占める結果となった。
第5位の「技術力が高くない」(19.4%)も、前回調査から10.1ポイント増えた。日本企業は「給与水準が高い」「技術力が高い」と思う外国人社員の割合が減っていることがわかった。
外国人社員の活躍、定着には、日本人社員側の意識改革や、人事評価制度や働き方の見直しが求められている様子がうかがえる。
その半面、「求められている役割や仕事内容が明確でない」は前回調査から14.2ポイント減って14.5%、「やりたい仕事に関われない」も7.2ポイント減の14.5%で、現在の仕事内容への不満は大幅な改善傾向がみられた。
これは受入れの際に、仕事内容を丁寧にわかりやすく説明したり、外国人社員の要望を聞いて納得を得たりするなど、以前に比べて、日々のコミュニケーションや面談で留意する企業が増えていることが推測される。
日本文化や商慣習に「困った」!
次いで、「外国人として日本企業で働いて、苦労した点・困った点は?」(複数回答)との問いに、53.2%の外国人社員が「日本特有の文化・マナー・商習慣に慣れることが大変だった」と答えた。「日本語での専門用語や業界用語など日本語の習得が大変だった」が41.9%、「上司や同僚との社内コミュニケーションが大変だった」の38.7%が続いた。【図3参照】
調査では、「外国人として、日本企業で働いて疑問に思うこと・改善してほしいこと」について、意見を求めたところ、
「日本のビジネスマナーに関する研修や教育をしてほしいです」
「ビジネスマナーをそこまで厳しく守らなくても良いようにしてほしい。メール、電話、客対応、手紙の送り方等、すべてにおいてルールがあるので大変です」
「私は外国人なので、残業時間を削ってでも家族に会うために休暇が必要です」
「会社の暗黙のルール(電話取り、セッテング、来客接待など)をはっきり明記してほしい」
「外国人という偏見を持たずに一人ひとりの人材で見てほしい」
「日本人と比べて言葉の壁もあり、同じ基準で評価されるとなかなか昇給ができない」
「人事考課の方法が不明確で、昇進・昇給の約束が果たされていない」
「半年に1回の人事異動があるが、その高頻度の転勤は本当に意味があるのか疑問」
「これまで勤めていた日本企業は、あまり新しいことに挑戦する意欲がなく、マニュアル通りに進める人が多くて効率が悪かった」
「保証人制度、連帯保証人がいないと採用されないこと」
といった声が寄せられた。
客観的な評価制度を求める外国人社員は多い
調査では、「勤務している(していた)企業にあったら、継続して働けると思う制度は?」(複数回答)と聞くと、54.8%の外国人社員が「帰国のための連続休暇制度や母国でのテレワーク勤務」と回答。次いで、「客観的な業績評価制度(実力主義)」が41.9%、「資格取得支援制度」の39.5%と続いた。【図4参照】
日本人と比べて言葉の壁もあり、「同じ基準で評価されるとなかなか昇給ができない」といった意見もあることから、客観的な評価制度を求める外国人社員が多いことがわかった。
なお、調査に協力した外国人社員の日本の企業で働いている、または働いていた年数(合計)を聞いたところ、最多の46.0%が「1年以上3年未満」。次いで、「3年以上5年未満」が25.0%、「5年以上10年未満」(21.8%)も2割を超えていた。
また、日本での勤務先企業の転職経験・回数について聞くと、「転職したことがない」外国人社員は前回調査年から8.1ポイント減り、52.4%となった。
一方、「転職したことがある」人は47.6%(転職1回が33.1%、2回8.9%、3回5.6%の合計)まで増え、転職経験者と未経験者の割合の差が縮まった。
現在、転職を考えている外国人社員は62.9%で、増加傾向にある。「今後、日本でどのくらい働きたいですか?」の問いに、「できるだけ長く」と答えた外国人社員は48.4%。前回調査から7.3ポイント増えた。
調査は、日本で就職したい新卒の外国人留学生や転職を考える外国人材を企業とマッチングする外国人留学生就職情報サイト「リュウカツ(R)」の登録者のうち、日本で働いている(または働いたことがある)外国人社員を対象に、2023年2月にインターネット(日本語と英語)で実施。有効回答数は124人。調査は、前回(2021年)に続き、2回目。