内定時から始まる会社も...新入社員研修、どんなスキルを身に着けてもらいたい? 今、企業側が強化している研修内容とは

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   研修担当者の「悩み」である、新入社員の「定着・離職防止」や「早期の戦力化」の課題に、「内定時期から研修を実施している」と答えた人が5割超にのぼることが、ベネッセコーポレーション(岡山市)の「2023年度 新人研修に関する意識調査」でわかった。2023年3月20日に発表した。

   企業の人材育成の強化が求められるなか、新入社員の研修や育成に関する課題やニーズを調査したところ、企業内ではDX(デジタルトランスフォーメーション)人材の育成が進むものの、新入社員には基礎的な社会人として心得やマナー、ビジネススキルの早期習得に力を入れている。若手世代のキャリア観が多様化するなか、企業側が「離職防止」を重視していることがわかった。

「自社への定着と早期離職の防止」が課題

   研修担当者が新入社員研修で課題に感じていること、悩んでいることは何か――。調査によると、最多の34.7%の人が「自社への定着・早期離職を防ぐこと」と答えた。

   次いで、「業務に必要なスキルや知識・マインドの習得」の33.0%、「研修で得たことを配属後に活かすこと」の32.5%が続いた。【図1参照】

図1 新入社員研修の課題「自社への定着、早期離職を防ぐこと」が34.7%で最多(ベネッセコーポレーション調べ)
図1 新入社員研修の課題「自社への定着、早期離職を防ぐこと」が34.7%で最多(ベネッセコーポレーション調べ)

   ベネッセコーポレーションは、

「キャリアが多様化し、転職も当たり前になっている現代に、『就社意識』が低い新入社員のエンゲージメント向上のために、どのような教育環境を作るかが育成担当者の大きな課題となっています」

と指摘する。

   50.7%と半数を超える担当者が「内定時から研修を実施する」と答え、内定者の時期から教育機会を提供。「自社へ定着させるため」「内定辞退や早期離職を防ぐため」という取り組みに力を入れる企業は多い。

労働環境の変化で、「ジョブ型雇用」推進の流れ

   また、調査では、新入社員研修に「早期の戦力化」を求める傾向があることもわかった。

   新入社員研修で「得てほしいこと」を聞いたところ、「業務に必要なスキルや知識を早期に習得すること」が47.3%で最も多かった。次いで、「自社の社員としてふさわしいマナーを身につけること」が46.0%だった。【図2参照】

   これまで日本では、新卒一括採用や終身雇用、年功序列など、長期雇用を前提とした人材育成に注力してきた。

   しかし、労働力人口の減少や急速なデジタル化などを背景に、労働環境が大きく変化し、生産性を重視した「ジョブ型雇用」の採用を日本でも推進する流れが生まれている。この流れは新入社員研修にも求められており、同社は「多くの企業で新入社員の即戦力化が叫ばれている」と指摘する。

図2 新入社員には「業務に必要なスキルや知識を早期に習得してほしい」(ベネッセコーポレーション調べ)
図2 新入社員には「業務に必要なスキルや知識を早期に習得してほしい」(ベネッセコーポレーション調べ)

   新入社員研修の内容(スキル)の中で、「最も強化させたいもの」との問いには、70.6%がビジネススキルをテーマとした内容を実施していることがわかった。具体的には、「セルフマネジメント」、「タスク・時間管理」、「プレゼンテーション」などだ。

   その一方で、「情報セキュリティ」や「DX(デジタルフォーメーション)の基礎」といったIT関連のテーマも51.8%が実施。ビジネスにITが欠かせない現代で、「IT」も新入社員として習得すべきテーマであるという意識が高まっていることが、背景と考えられるという。【図3参照】

   また、早期の戦力化やDX人材の育成の流れを受けて、「Officeスキル」やDX関連の研修が実施されているとみられる。新入社員にも、DX分野での即戦力化を希望する傾向があるようだ。

図3 スキル習得を目的とした研修の内容(ベネッセコーポレーション調べ)
図3 スキル習得を目的とした研修の内容(ベネッセコーポレーション調べ)

新入社員研修もオンライン化、6割が実施

   一方、新入社員研修の形式には、変化がみられるのか。

   調査で聞いたところ、「対面形式」による実施が76.4%(「対面のみ」と「ハイブリッド」の合算)で、コロナ禍の行動制限の緩和に伴い、対面での研修が戻りつつあるとみられる。

   もっとも、「オンライン形式」も59.9%が実施しており、「オンラインを取り入れることで時間や場所にとらわれず参加でき、研修の質を保つことが可能になる」などのメリットはやはり大きい。

   「対面とオンラインの両方を実施する」と答えた企業も45%と約半数。そのうちの75.4%が、その有効性を感じていると答えた。同社は、「対面形式が戻る一方で、引き続きオンラインの利点も活かした『ハイブリッド』での研修の実施が多くなることが予想される」としている。

※研修形式の定義
・オンライン形式...eラーニング/動画学習、オンライン形式のグループワーク、オンライン形式の講義
・対面形式...対面形式のグループワーク、対面形式の講義、対面形式での合宿

図4 対面とオンラインの「ハイブリッド」研修は45%(ベネッセコーポレーション調べ)
図4 対面とオンラインの「ハイブリッド」研修は45%(ベネッセコーポレーション調べ)

   では、対面とオンラインと対面の「ハイブリッド形式」の利点はどんなものがあるのだろうか。回答者からは、

「オンラインのみだと緊張感に欠け、オフラインのみだと疲れてしまう。場合によって分けるのが良いと感じた」(薬品・化粧品・化学関連業)
「オンラインで最初に研修を受けてもらってからで対面研修に参加してもらうと、新入社員もある程度知識を持って参加できるので、教える側としてもやりやすく安心できる。新入社員からの質問のレベルも高くなる。新入社員はこれから働くことへの不安が大きいため、対面で会話するほうが安心できると思う」(広告代理業・調査業・マーケティング業)

といった声が寄せられた。

   ベネッセコーポレーションUdemy法人営業担当課長の中谷健太氏は、

「新入社員には社会人としての基礎スキル(プレゼンやExcelなど)へのニーズが高いことがわかります。この傾向は、ここ数年でのリモートワークの増加やOJTとのコミュニケーションが減ったことも影響していると思われます。
また事業のDX化が加速するなか、新入社員にもDXや経営戦略として基礎的なリテラシーを学ばせる傾向もあり、企業側が新入社員のいち早い戦力化を望んでいることもうかがえます」

   とコメントしている。

   なお、調査は2023年度の新入社員研修に関わる人材育成の担当者を対象に、新入社員研修におけるトレンドや研修での課題・意識、実施状況などを明らかにする目的で聞いた。2023年2月17日~20日にインターネットで実施。有効回答者数は643人。

   同社では、法人向けにオンライン学習サービス「Udemy Business」を国内で展開。内定者や新入社員向け研修として導入企業に活用してもらっている。

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