重要度高まる「人的資本経営」への理解度は? 「内容まで知る」課長職23.6%、部長職38.4%...認知度低く 推進の課題1位は「コミュニケーション不足」

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   岸田首相が2022年4月に示した「新しい資本主義」のグランドデザインによると、「人への投資」の抜本強化が掲げられている。

   これまでは、一般的に「経営資源」に「ヒト・モノ・カネ」が挙げられ、「人材」は管理すべき「資源」としてとらえられていたが、近年は状況が変わってきた。人材を「資源」としてではなく、「資本」としてとらえるのだ。

   「人」の備える知識や能力などは、付加価値を生み出す「資本」としてとらえ、その価値を最大限に引き出すためにも「投資」することで、中長期的な企業価値向上につなげていく――こうした「人的資本経営」の考え方が求められるようになっている。

   では、こうした「人的資本経営」について、管理職への浸透度はどのくらいなのだろうか?

   ビジネスコーチ(東京都千代田区)が2023年3月24日に発表した「人的資本経営調査2023 ミドルマネジメント編」によると、人的資本経営の意味まで理解しているミドルマネジメントはわずか28%、部長クラスでも38%と少数派であることがわかった。

   また、人的資本経営推進のために管理職が人事部門に期待することは、「働き方改革」、「人事制度」、「コーチングスキル研修」がトップ3であることがわかった。制度回りのハード面の整備だけでなく、具体的な研修といったソフト面に対する関心の高さが浮き彫りになった。

  • 上司や部下とコミュニケーションしてますか?(画像はイメージ)
    上司や部下とコミュニケーションしてますか?(画像はイメージ)
  • 上司や部下とコミュニケーションしてますか?(画像はイメージ)

「人的資本経営」の認知度はどれくらいあるのか?

   「人的資本経営」について説明を加えると、「人的資本経営」とは、コンプライアンスの倫理、ダイバーシティ、リーダーシップ、健康・安全、生産性、スキルと能力などの企業を支える人材の能力や経験、意欲を高めるべく投資を行い、企業価値の向上を目指す経営手法のことだ。また、その方針を投資家との対話や統合報告書等で、ステークホルダーに説明することは、持続的な企業価値の向上にも必要不可欠だ。

   岸田政権の「新しい資本主義」のもと、この「人的資本」への取り組みが加速しており、「人への投資」を中核に据えた成長戦略を検討する企業が増えているという。

   今回の調査は、従業員300人以上の企業に勤める20代から60代までの管理職(ミドルマネジメント=部長・課長)を対象とした。インターネット調査を通じて、2023年2月15日から16日までの2日間で実施した。有効回答数は1000サンプル。

(ビジネスコーチの作成)
(ビジネスコーチの作成)

   まず、人的資本経営の内容を問う質問に対して、「内容まで知っていた」と答えた人は全体でわずか「27.9%」。課長職では「23.6%」、部長職では「38.4%」にとどまった。「内容まで知っていた」(27.9%)と、人的資本経営の「言葉を聞いたことがある」(40.4%)を合わせると、言葉への認知度は68.3%となった。

   同社では

「2022年8月に内閣官房より、上場企業向けに人的資本に関する開示ガイドラインとなる『人的資本可視化指針』が発表されたあと、人的資本経営に関して報道される機会が増加し、言葉の認知率に影響を与えている

   と分析している。

(ビジネスコーチの作成)
(ビジネスコーチの作成)

   続いて、「勤務先は人的資本経営に関心を持っているか」と尋ねたところ、「持っている」と答えたのは全体の「71.0%」となった。

   規模別で見てみると、1000人未満の会社では「65.4%」、1000人から5000人未満の会社では「70.8%」、5000人以上の会社では「75.6%」となり、会社の規模が大きくなるほど高くなった。

   これは、金融庁が2023年3月期決算以降の有価証券報告書に、人的資本に関する一部の情報を記載することを義務付けるため、特に規模の大きい上場企業においては興味関心が高いのだろう。

(ビジネスコーチの作成)
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   次に、「勤務先は人的資本経営に関心を持っているか」の質問に対して「持っている」と答えた回答者に、「勤務先は人的資本経営に取り組んでいるか」と問いかけてみると、「取り組んでいる」は全体の「49.3%」となり、「取り組んでいない」の「50.7%」がわずかに上回った。

   同社では

「理解や認識が組織全体に浸透しないままでは、人的資本経営は実践のプロセスへは至らず、掛け声倒れに終わってしまうリスクがあるのではないか」

   と危惧している。

課題は社内のコミュニケーション不足 20代・30代は「社内イベントの開催」に、40代は「コーチング・1on1ミーティングの導入」に期待

(ビジネスコーチの作成)
(ビジネスコーチの作成)

   また、人的資本経営に取り組んでいる会社に対して、推進の課題と感じていることを聞いた。それによると、一番多かったのが「対話・コミュニケーションが不足している」(34.3%)で、僅差で2位が「人事部門のスキル・人手が不足している」が「33.9%」で上位に入った。「学び直し・リスキルの支援ができていない」が「30.7%」という結果になった。

(ビジネスコーチの作成)
(ビジネスコーチの作成)

   一方で、「対話・コミュニケーションが不足している」の課題解決の方策をみてみると、全体の順位で「コーチング・1on1ミーティングの導入」(39.8%)、「コミュニケーションツールの活用」(29.2%)、「社内イベントの開催」(23.3%)の順になった。

   世代別で見ても、「20代・30代」は「社内イベントの開催」が「37.5%」でトップに。次いで「社内食堂・リフレッシュスペースの設置」が「35.4%」、「フリーアドレス制の導入」とコーチングなどの導入は「31.3%」で同率の3位となった。

   さらに、40代では「コーチング・1on1ミーティングの導入」が「41.6%」でトップとなり、「コミュニケーションツールの活用」(30.4%)、「社内イベントの開催」(23.8%)と続いた。

   同社は

「コロナ禍による在宅勤務の長期化も後押ししてか、1対1の面談『1on1ミーティング』や、面談の質を上げる『コーチング』の手法に注目が集まっている
相手に気づきや自発的な行動を促すことで早期の目標達成・成長を支援する手法や施策を積極的に活用することで、対話・コミュニケーションの活性化が図れると考えている人が多いのではないか」

   とコメントを寄せている。

(ビジネスコーチの作成)
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   最後に、人事部の育成支援策に期待することについては、全体の「働き方改革」(37.0%)、「人事制度改革」(31.6%)、「コーチングスキル研修」(30.0%)の順に並んだ。

   世代別で見てみると、20・30代が期待することの1位は「リーダーシップ研修」で「50.0%」、コーチングスキル研修が「47.9%」、働き方改革の推進が「45.8%」のような順となった。

   他方で、40代の順位をみると「働き方改革」(33.7%)、「従業員エンゲージメントの向上」(33.3%)、「コーチングスキル研修」(28.4%)となり、世代ごとに求めている施策が違うことがわかる。

   同社では、

「次世代を担う若手ミドルマネジメントには、リーダーシップ研修やコーチングスキル研修といった、より一層優れたリーダーとして活躍できるよう自己研鑽を積むことができる機会を望む人が多い模様」

   とまとめている。

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