「年収の壁」対策で、政府は企業への助成金を検討...だが、2つの「不公平」がある
岸田首相は2023年3月17日、少子化対策をテーマに記者会見し、育児休業の取得促進策などとともに、手取りの逆転を生む「年収の壁」対策にも言及した。
政府内で浮上しているのが、106万円と130万円の壁への対応だ。
具体的には、結婚して配偶者の扶養に入っている人を対象に、年収の壁を超えると生じる保険料負担を企業が肩代わりすれば、企業にその分の助成金を出すというもの。
自民党の萩生田光一政調会長らが1月の衆院予算委員会で検討を求めた。岸田首相は国会では「問題意識は共有する」と述べつつ、「公平性の問題もある」とも答弁していた。
公平性については、2つの「不公平」がある。
同じようにパートで働いていても単身者は助成されないので、扶養される主婦のパートだけが優遇されるという足元の不公平が一つ。
さらに、106万円の壁で言えば、国民年金の第3号被保険者から勤務先の厚生年金に切り替わったとき、本人の負担なしに老後の年金額まで単身者に比べ優遇されることになるという、将来にわたる不公平だ。
さすがに、こうした批判を意識し、岸田首相も、助成は時限的な措置にとどめる考えとされ、「制度の見直しに取り組む」と述べている。
制度見直しとは、究極的には被扶養者が保険料を負担しない仕組み、つまり第3号被保険者をなくす方向になる。