何かと「自分らしさ」を主張するとか、「仕事とプライベート」をキッチリ分けると受け取られがちなZ世代の若者。
ところが意外にも、男女ともに「スキルアップに意欲満々」だったことがマーケティングリサーチの「アスマーク」(東京都渋谷区)が2023年2月7日に発表した「自主調査『世代別スキルアップへの取り組み』実態」でわかった。
上司・先輩のあなた、Z世代の部下・後輩のスキルアップ意欲を大いに伸ばしして、職場の頼もしい「戦力」にする参考にしてはいかが?
Z世代は「副業」と「有志のプロジェクト参加」が大好き
アスマークの調査は、22歳から56歳までの正社員の男女、合計1200人が対象。それぞれ男女100人(計200人)ずつを次の3世代に分けて分析した。
(1)Z世代(22歳~27歳)=デジタルネイティブ。幼いころからスマホやSNSに触れ合ってきた世代。
(2)Y世代(28歳~41歳)=ミレニアル(新千年紀)世代ともいわれ、2000年代に入って成人を迎えた。バブル崩壊前後に生まれ、IT機器の拡大とともに育ってきた世代。
(3)X世代(42歳~56歳)=ポスト団塊ジュニア(42歳~47歳)、団塊ジュニア(48歳~51歳)、バブル世代(52歳~56歳)の3世代を含む。バブル崩壊頃から就職氷河期時代にかけて成人を迎えた世代。
調査ではまず、Z世代のスキルアップへの取り組み意識を探るために、Y世代、X世代と同じ質問を試みて比較した。「スキルアップのために何かしら取り組んでいることがあるか」と聞いたのだ(複数回答可)。
どの世代もトップ3は、1位「インターネットでの情報収集」、2位「資格取得」、3位「ビジネス書やスキル向上につながる本を読む」という結果となった。もっとも、いずれも、Z世代が取り組んでいる割合が一番高い。Z世代の7割以上がスキルアップのために何かしら取り組んでいることがわかった【図表1】。
これは、「特に実施していることがない」と答えた人がY世代、X世代に4割以上いることを思うと、特筆すべきことだろう。また、Z世代には「副業をする」と「有志の仕事・プロジェクトに参加する」といった取り組みが、ほかの世代より多い傾向もみられる【再び図表1】。
もしかしたら、まだ若くて独身者が多く、仕事以外に使える時間が多いということが関係しているのかもしれない。
ところが、スキルアップの意欲と、実際に取り組んでいるかどうかの実践度を合わせて調査すると、興味深い結果が明らかになった。スキルアップへの積極性を、「意欲があるし、取り組みもある」から「意欲がないし、取り組みもない」までの4段階で答えてもらったのが【図表2】だ。
これを見ると、男性Z世代は「意欲あり・取り組みあり」が67.0%と、他の世代に比べて、群を抜いて高い。女性Z世代も「意欲あり・取り組みあり」が46.0%と、女性の中ではほかの世代より高い。つまりZ世代は、ほかの世代より意欲と実践を兼ね備えているわけだ【再び図表2】。
通勤中と出勤前に勉強するZ世代、しかし時間はY世代のほうが多い
さて実際に、意欲的なZ世代は、いつ、どこで、どのくらいの時間取り組んでいるのか。就業時間内か、就業時間以外か、を詳しく聞いたのが【図表3】だ。就業時間以外は、通勤中・出勤前・帰宅後・休日と、細かく分けて聞いている。
これを見ると、Z世代はそれぞれの時間帯でスキルアップに取り組んでいる人の割合が、ほかの世代より高い。
特に「通勤中」(46.7%)と「出勤前」(35.5%)というタイミングが、ほかの世代より突出して高い。ともに中堅以上の世代にはしんどい時間帯だが、若くて元気があるからだろうか【再び図表3】。
ただし、どの時間帯を見ても、取り組む時間そのものはY世代(28歳~41歳)が一番長い。家庭人としては子どもが成長、教育費にお金がかかる頃、会社内では中間管理職になり、公私ともに責任が重くなる世代だ。スキルアップに対する熱意も真剣さが増すだろう。
スキルアップにじっくり取り組むには「帰宅後」と「休日」の過ごし方がカギになる。そこで、「帰宅後」と「休日」の取り組む時間を聞いたのが【図表4】だ。休日や帰宅後にスキルアップに取り組む人は、各世代ともに5割を超える。どの世代も「30分未満」という人が最多だ。
女性と比べ、男性のほうが「帰宅後」にスキルアップに取り組む時間を作る人が多い。このあたりは、現状として、女性のほうが家事育児などで平日に取り組む時間を作りづらいことも背景にあるのかもしれない。
もっとも、「休日」になると、Y世代の男女とも1時間以上が増加して、それぞれの年代のトップになる。男性で半数以上の53.8%、女性でも4割以上の44.1%が熱心に取り組んでいる。
一方、Z世代では1時間以上取り組み割合は、男女ともX世代(42歳~56歳)とほとんど差がないありさまだ。若いのにどうしたことか。ただ、女性Z世代に関しては「30分未満」が35.5%、一方、「2時間以上」が14.6%と、人によってかける時間の差が大きいことが目立つ【再び図表4】。
つづいて、各世代に「スキルアップに取り組みたいけど取り組めていない理由」を聞くと、ほかの世代に比べてZ世代に特に多いのは、「具体的な目標がない」「環境が整っていない」「実際に行動に移すほどモチベーションが高まらない」といった項目だった。
これは、上司や先輩など企業側の指導や対策でスキルアップに一歩踏み出せそうな人も一定数いるということだ。
企業が支援すれば、Z世代はどんどんスキルアップに取り組める
さて、Z世代はどんなスキルを身につけたいのか――。
「職業的な成功のために伸ばしたいと思うスキルはなにか」(最大3つまで選択可)を聞くと、Z世代が伸ばしたいと思うスキルのTOP3は、1位がパソコン・ITスキル、2位が専門知識・技能、3位がコミュニケーションスキルだった【図表5】。
これらは、どの世代でも共通に求めるスキルだが、Z世代では「パソコン・ITスキル」が3割を超えて1位だが、Y世代・X世代では「専門知識・技能」が1位になった。若手のZ世代は基礎的なスキル、中堅以上のY世代・X世代はより業務に役立つ実戦的かつ専門的スキルを求めていることがうかがえる。
調査を行ったアスマークの担当者はこうコメントしている。
「Z世代の多くがスキルアップに取り組んでいるものの、時間をかけている人が多いのはY世代という結果になりました。 Z世代がスキルアップに取り組めない理由には、企業が支援できる面も多いように思われます。また、意欲があってもスキルアップに取り組めていない女性がやや多い傾向もみられ、企業としては勤務時間内でのスキルアップ支援について検討していくことが必要かもしれません」
なお、調査は、2022年11月22日~25日に全国の22歳~56歳の男女1200人にインターネットを通じてアンケートした。(福田和郎)