日本を出て、海外で仕事をしたり、生活したりする人が増えている。
外務省が発表した「海外在留邦人数調査統計」によれば、2022年10月1日現在の推計で、日本人の海外の「永住者」は前年比3.6%増の55万7034人と、過去最高を更新した。
為替市場で円安傾向にあることに加え、この約30年で平均賃金がほとんど増えない日本より、米国やオーストラリアといった海外で働いた方が高い収入を得られることなどが背景にあるようだ。
日本の平均賃金424万円、米国より300万円も安く
外務省の調査統計によれば、永住者以外の「長期滞在者」は同6.9%減の75万1481人で、3年連続で前年を下回った。新型コロナウイルス禍の影響で留学生や企業の駐在員などが減ったためとみられる。
その一方で、永住者はコロナ禍と関係なく増え続けており、2003年以降、連続して前年を上回っている。22年の永住者は10年前の12年(41万1859人)と比較した場合、約15万人も増えている。
外務省の調査は年齢などの詳しい内訳を公表していないが、最近では若者が海外で職を求める「出稼ぎ」などが強まっているとされる。
その大きな要因は賃金だ。
経済協力開発機構(OECD)の2020年の調査によれば、日本の平均賃金は約424万円だ。在留邦人が最も多い米国は約763万円で、日本を300万円以上も上回っている。米国だけでなく、日本人に人気のオーストラリアや英国をはじめ、いまや韓国の平均賃金も日本より高い。
日本ではバブル期以降、平均賃金はほぼ変わっていないのに対し、米国では1990年比1.5倍に伸びるなど、主要国のほとんどは年々上昇しており、日本との格差が開いてしまった。
こうしたなかで、「ワーキングホリデー制度などを使って海外に出向き、そのまま定着してしまう若者も増えている」(海外移住などに詳しい研究者)と言われている。
特に、2022年から急速に円安が進んだことで、海外で得る賃金はいっそう割高になり、日本人の海外行きを後押ししているとされる。