リモートによる会議やミーティング、商談......。コロナ禍で大きく変わったのが、こうした「対面」でのシーンが激減したことだろう。名刺を直接交換する機会も減ったことは間違いない。
そうしたなか、「木の名刺」や「木のストロー」などを制作、販売するクレコ・ラボ(東京都港区)の興津世禄(おきつ・せいろく)社長は、「『木』の名刺は、ジワリと売り上げが伸びているんです」と、「対面」を大事にする「逆バリ」で成果を上げている。
同社の「木の名刺」は、ホンモノの木から作られている。そのため、木目を印刷した紙では生まれない、木の香りや質感といった自然の温かみや味わい深さを感じさせてくれる。
「木は持続可能な素材」 いろいろな「個性」がある
初対面の時のコミュニケーションツールとして使われる名刺は、相手に自分のことを知ってもらうための情報が詰まった一枚だ。
クレコ・ラボの興津世禄社長は、
「『木の名刺』はホンモノの木で作られているから、手紙のように真心や温かみを相手に感じてもらえます。木の名刺なら、名刺を渡した時に自然と生まれる会話が弾むこと、請けあいです」
と話す。
木は、サステナビリティ(持続可能)な素材だ。同社の木の名刺はすべて手作業でつくられ、一枚一枚が木目も色みも異なる。名刺のほか、ストローやはがき、折り紙なども品揃えされ、紙としてだけではなく壁紙やシール、布など、いろいろな素材として使用できるという。
その素材は、職人が木材をうすくスライスして、厚さ0.1~0.15ミリメートル以下の極薄シートに加工。裏地に紙などを貼り合わせて生まれる。使用する木材はすべて国産で、ヒノキや赤松、黒松、スギ、桜などさまざまだ。
白みを帯びた明るい色みが特長のヒノキは、一番人気。つるつるとしていて、匂いもかすかに感じる。桜は、広葉樹のため全体的に赤みがあり、スギはやや濃い色合いで、香りが残る。
たとえば、赤松の名刺は、岩手県久慈市の木材を継続的に使用しているという。もともと東日本大震災の前から使っていたが、津波による海水で他の名刺が全部ダメになったなか、赤松の名刺は海水をかぶっても、再度乾かすことで使えるようになるなど、通常の紙よりも耐久力のある丈夫な素材だそうだ。
ほかにも、黒松(島根県)や、大胆な木目とざらっとした質感が特徴の琉球松(沖縄県)など、その土地の木材を使用してオリジナルの木の紙を制作。観光地のおみやげや限定商品、ノベルティなどの地域に特化した商品に使っている。
ホンモノの木を使っているから、湿気や時期、樹種によって反ることがある。また、経年変化によって木の色も少しずつ変わっていき、時間とともに風合いが楽しめる。樹種によって特徴が変わるのも、魅力の一つ。名刺になっても「木」は生きている。