身だしなみ、挨拶、電話応対など、対面接遇に不慣れなデジタルネイティブ新入社員...どう教える?【上司力を鍛えるケーススタディ CASE25(前編)】(前川孝雄)

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   「前川孝雄の『上司力(R)』トレーニング~ケーススタディで考える現場マネジメントのコツ」では、現場で起こるさまざまなケースを取り上げながら、「上司力を鍛える」テクニック、スキルについて解説していきます。

   今回の「CASE25」では、身だしなみ、挨拶、電話応対など、対面接遇に不慣れなデジタルネイティブ新入社員の教育に悩むケースを取り上げます。

「新人に基本マナーを教えるのは、人事の仕事じゃないのか!?」

【A課長】新年度の新入社員受け入れについての人事からの通知、ちょっとおかしくないか?
【C課長(同期の人事課長)】ああ...配属された部署で、社会人としての基本マナーをしっかり教えてほしいという依頼ですね。もちろん新入社員研修で基本は教えるものの、社会人としての身だしなみや挨拶や電話応対など、なかなか身に着かない新人もいるんですよ。
【A課長】ちゃんと3次面接までして採用したのだろうに、一体どういうことなんだ?
【C課長】まあ、みんな成績は優秀でも社会人としてのマナーは別なんです。デジタルネイティブだし、コロナ禍で学生時代に対人接触の機会も少なかったですしね。
【A課長】いや、それにしても、基本マナーくらいは研修でしっかり教えてから配属するのが人事の仕事じゃないのか? ただでさえ現場は人手不足で、生産性向上が求められているんだから。
【C課長】もちろん研修後も人事としてフォローはしますが、きちんと覚えるのはやっぱり現場での実地経験あってこそですし。最初からあまり求めすぎて離職されても困りますし、少し安全運転で行きたいんですよ。
【A課長】なんだ!それで現場任せにするのか? ただでさえ新人受け入れはたいへんなのに怪しからんな!!
【C課長】まあ、そんなに怒らないで。(こんな具合でこの人、新人にマナー教えられるかな...)

大切なのはマナー・マインドを伝えること

   たしかに、新人を受け入れる現場の上司には何かと負荷がかかります。そのうえ、社会人としての基本マナーの教育まで人事が現場に依頼するのは理不尽と感じるかもしれません。CASEはややデフォルメしていますのでそこは割り引いて見てください。

   ただ、新入社員研修で接遇のプロに型を習ったとしても、それだけで現場での行動になるかは別問題です。皆さんも顧客の立場で思い起こしてください。サービス窓口や店頭での、新人のぎこちない接遇態度も気になりますが、中堅やベテラン層であっても無味乾燥や横柄であるなど、とても心地よいとは思えない接遇態度に出会うことは少なくないでしょう。

   すなわち、マナーは表面に現れる形が重要とはいえ、より根本に大切な部分があると考えられるのです。

   マナーとは、礼儀作法のこと。他者への礼儀・礼節にかなった立ち居振る舞いの方法ととらえればよいでしょう。ですから、相手に対する敬意と思いやりの気持ちが伝わることが、大事なポイントです。

   そこで現場でのマナーのあり方について新入社員に伝えたい心構えは、「相手を大切に思う気持ちを基本に、相手の立場に気を遣い、相手が心地よく感じていただけるように振る舞おうとするマナー・マインドが重要」という点です。「おもてなしの心」と言い換えてもいいでしょう。

相手に不快感を与えない心構えを

   「おもてなしの心」のなかで特に留意したいのは、マナーはあくまでも相手の立場に立って考えるものだということです。たとえ自分が「おもてなし」の気持ちで選んだ服装や言動であっても、対面したお客様や取引先がどう感じ受け止めるかが肝心。相手によい印象を持ってもらえること、不快感を与えないことが大切だという点をしっかり理解してもらいましょう。

   自分がよかれと思っても相手に違和感を持たれるようでは、結果としてマナー失格です。

   服装で言えば、まだ学生感覚が抜けない新入社員は、同世代の視点で見て何が好まれるかで、自分のファッションを決めることになりがちです。今までの学生の立場は、学費を払って授業を受ける消費者の立場。しかし、これからは商品やサービスをつくり買って頂く生産者やサービス提供者の立場です。180度意識を変えることが大切なことを、十分に理解してもらいましょう。あくまで顧客目線、相手目線に立って、謙虚に自分のマナーをチェックし修正していく心構えが不可欠だと伝えましょう。

   そして、マナーに関する上司や先輩からの注意も、決して上からの趣味・趣向を押し付けているのではないこと。顧客目線でのマナーに近づけるためのアドバイスだと、理解してもらいましょう。

   では、新入社員にマナーを教えるうえで、さらにどのようなポイントがあるか。<身だしなみ、挨拶、電話応対など、対面接遇に不慣れなデジタルネイティブ新入社員...どう教える?【上司力を鍛えるケーススタディ CASE25(後編)】(前川孝雄)>で、解説していきます。

※「上司力」マネジメントの考え方と実践手法についてより詳しく知りたい方は、拙著『部下全員が活躍する上司力 5つのステップ』(FeelWorks、2023年3月)をご参照ください。
※「上司力」は株式会社FeelWorksの登録商標です。


【プロフィール】
前川 孝雄(まえかわ・たかお)
株式会社FeelWorks代表取締役
青山学院大学兼任講師、情報経営イノベーション専門職大学客員教授

人を育て活かす「上司力」提唱の第一人者。リクルートを経て、2008年に管理職・リーダー育成・研修企業FeelWorksを創業。「日本の上司を元気にする」をビジョンに掲げ、「上司力研修」「50代からの働き方研修」「eラーニング・上司と部下が一緒に学ぶ パワハラ予防講座」「新入社員のはたらく心得」などで、400社以上を支援。2011年から青山学院大学兼任講師。2017年働きがい創造研究所設立。情報経営イノベーション専門職大学客員教授、一般社団法人 企業研究会 研究協力委員、一般社団法人 ウーマンエンパワー協会 理事なども兼職。連載や講演活動も多数。
著書は『50歳からの逆転キャリア戦略』(PHP研究所)、『「働きがいあふれる」チームのつくり方』(ベストセラーズ)、『コロナ氷河期』(扶桑社)、『50歳からの幸せな独立戦略』(PHP研究所)、『本物の上司力~「役割」に徹すればマネジメントはうまくいく』(大和出版)、『人を活かす経営の新常識』(FeelWorks)、『50歳からの人生が変わる 痛快! 「学び」戦略』(PHP研究所)等30冊以上。最新刊は『部下全員が活躍する上司力 5つのステップ』(FeelWorks、2023年3月)。

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