売り手市場の中、どうしたら「ふさわしい人材」を採れるか?

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長期インターンとカジュアル面談が武器に

   新卒採用の場合は、「長期インターン」が入社後の早期退職を減らせるベストな手段、と勧めている。就業形態としては基本的にアルバイトと同じで賃金を支払う。

   長期インターンのメリットは2つある。

   1つは就活生に実態に即した就労イメージをもってもらうことで、ミスマッチが減ること。2つ目は企業が優秀な学生とのパイプを築くことで、中長期的なタレントプールをつくれることだ。

   たとえ採用に直結しなくても、インターンを通じていい体験を提供できていれば、その学生が新卒で入社した会社を、ミスマッチを理由に辞めたときに自社の存在を想起してもらいやすくなる。新卒で大企業に入社したインターン生が第二新卒として戻ってくるのは、IT系ベンチャー企業ではよくあることだという。

   中途採用の場合、大谷さんが勧めているのが、「カジュアル面談」だ。

   通常の採用面接とは異なり、履歴書やエントリーシートの類を必要としない、名前の通りのカジュアルな面談だ。多くの候補者がSNSで仕事の情報について投稿しているので、その内容からスキルレベルを判断したり、自社に合う人材なのかを判断したりできるという。

   このカジュアル面談は、新卒採用にも使えるそうだ。採用面談では、内定を取ることを目的に話を盛ることがある。本心では企業とのズレがあってもそれを取り繕って面接を通ってしまうと、離職につながることがある。

   本選考に対して、ソフトセレクションとも呼ばれる。

   大事なのは、お互いに大事にしたい価値基準や考え方、仕事のやり方、将来に対するビジョンなど、一般的な履歴書には表れない部分がどれだけマッチングするかを判断することだという。

   たとえ入社に至らなくても、潜在的な見込み入社数路増やすことが、カジュアル面談と長期インターンの強さだ。長期的な視点に立って、一緒に働きたい人との縁をとにかく大切にする戦略を「ストック採用」と呼び、これまでの「数撃ちゃ当たる」手法を「フロー採用」と呼んでいる。

   本書を読み、感心したのは、採用は「採って終わりではない」と強調していることだ。「エンプロイーサクセス(従業員の成功)」という発想である。従業員の成功に企業として貢献することで、従業員のモチベーションや満足度が上がる。

   従来の採用が「仕入れ」であったとすれば、これからの採用は「マーケティング」であり「営業」だと、大谷さんはまとめている。

   巻末には、サイバーエージェントなど、採用に強いと言われる3社の人事担当者のインタビューが載っている。採用がいかに重要な仕事であるか、各社の意気込みが伝わってきた。企業が今後どう変わるかが働く人に問われる時代になった。(渡辺淳悦)

「すごい採用」
大谷昌継著
技術評論社
2420円(税込)

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