「契約するまで帰らない!」「キャンセル料40万円!」...急増する中古車売却トラブル! 業者の強引商法に負けず、愛車と気持ちよく別れる4つの対策

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   ここ1、2年、愛車を手放す時の中古車売却トラブルが急増している。査定時に強引に契約させられ、車を持っていかれたり、高額なキャンセル料を取られたりするケースが多いのだ。

   国民生活センターは2023年3月22日、「増加する中古自動車の売却トラブル」という警鐘を鳴らす調査を発表した。

   こちらは一生に何度も車を売った経験がないシロウト、相手はその道のプロだ。愛車との別れで絶対に後悔しないトラブルの防止策とは――。

  • 愛車に愛着があるのに...(写真はイメージ)
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「事故車なので15万円だが、今すぐ渡せば25万円にする」

   国民生活センターによると、中古車の売却に関するトラブルの相談は、2021年度は1519件と、前年度(2020年度、1211件)より約25%増えた。2022年度はさらに増加傾向にある【図表1】。これは、ここ数年の半導体不足の影響で新車販売台数が減り、中古車の需要が高まっているためだ。

(図表1)中古車売却に関するトラブル件数の推移(国民生活センターの作成)
(図表1)中古車売却に関するトラブル件数の推移(国民生活センターの作成)

   また、トラブルに遭う人も50歳代以上の年配者が増えている。特に70歳代以上が全体の約2割を占める。背景には運転免許を返納する年齢層の子どもが売り主にはなるケースが多いためだ。

   こんな事例が代表的だ。まず、強引に契約を迫るケースから。

【事例1】査定時に強引に契約させられ、車を持っていかれた

   インターネットで一括査定サイトを利用し査定を依頼すると、5社から連絡があり、その中の1社が自宅へ査定に来た。「ドアに修理歴がある。事故車なので15万円だが、今日すぐに引き渡せば25万円で買い取る」と言い、強引に契約させられ、車を持っていってしまった。

   契約書は携帯電話にメールで送付され、紙の書面は受け取っていない。30分後に担当者へ「他社の査定額と比較したいので車を戻してほしい」と伝えたが、「今から車を返すのは面倒だ。他社にはこちらから連絡する」と言い、返してもらえない。25万円も受け取っていない。解約して車を取り戻したい。(2022年2月・70歳代、女性)

【事例2】業者が居座り帰らないので、やむなく契約してしまった

   査定のため、午前に1社、午後に2社、自宅訪問を依頼した。午前中に来た業者からは、査定後、買い取り額として約320万円が提示された。「午後に来る2社の査定額も聞いてから決めたい」と伝えると、非常に強引な態度で居座られ、契約するまで帰らない様子だったので、やむなくタブレットに署名して契約した。

   午後の2社の査定額は午前の業者よりも高かったため、午前の業者に断る電話を入れた。すると、「解約はできない。どうしても解約するのであれば店に来て、免許証を出してもらうことになる」と言われ、その後も20回近く電話がかかってきた。強引に勧誘され、やむなくサインしたのに店に行かなければ解約できないのか。(2022年9月・20歳代男性)

売却価格の20%、40万円のキャンセル料を迫られ...

長年運転してきた愛車だが...(写真はイメージ)
長年運転してきた愛車だが...(写真はイメージ)

   次に多いのが「キャンセル料」の請求をめぐるトラブル。

【事例3】勝手に契約したことにされ、断ったらキャンセル料を請求された

   高齢の父が約20年前の車を手放すことにしたので、インターネットで探した業者へ電話をかけた。業者は「値が付くかわからないが、車検が残っているので3万円程度にはなるかもしれない」と言い、契約になるとは思わずに見積もりのつもりで車検証と自賠責保険証の写真をメールで送った。

   その後、別の業者が無料で処分してくれることになり、業者へその旨の電話をすると、「最初に当社へ電話をかけた時点で本契約となるため、キャンセル料3万円が発生する」と言われた。契約書類は届いたが送り返していない。そもそも契約した認識がないし、まだ売却額や車の引取日も決まっておらず、またキャンセル料の説明も受けていない。キャンセル料を支払わなければならないのか。(2022年10月・50歳代男性)

【事例4】契約後すぐにキャンセルを申し出たら、高額なキャンセル料を提示された

   一括査定サイトに登録後、業者が来訪して査定し、「15万円で買い取る」と言われた。「少し考えたい」と伝えると、「特別に50万円で買い取る」と言うので契約した。その後、別の業者から「70万円で買い取る」と言われ、最初の業者へキャンセルを伝えると、「キャンセル料が10万円かかる。75万円で買い取るのでキャンセルしないでほしい」と言われた。

   キャンセル料は一律で決まっており、契約書の約款に書いてあるという。車を引き渡しておらず、売却代金も未受領、名義変更の手続きもしていないのに、キャンセル料が高額すぎる。(2022年9月・20歳代男性)

【事例5】高額なキャンセル料の算出明細が示されない

   一括査定サイトに登録後、電話がかかってきた業者の店舗で車を査定してもらった。約230万円が提示されたので契約し、その日のうちにキャンセルを申し出たら、業者から約40万円のキャンセル料を請求された。売却価格の20%で、請求根拠は契約書に記載してあるという。

   あまりにも高額なので、業者へキャンセル料の根拠となる損害の明細を提示するよう求めると、「契約当日にキャンセルを申し出ても契約書に記載通りのキャンセル料がかかる。キャンセル料は販売する時の利益の損失を根拠に計算している」と主張し、明細を示さない。支払いたくない。(2022年12月・20歳代男性)

車を引渡した後、「事故車だから」と契約を一方的に解除

自分の車がいくらで売れるか(写真はイメージ)
自分の車がいくらで売れるか(写真はイメージ)

   また、契約後に査定額を減額された人も多い。

【事例6】修復歴を告げ、2回も査定して決まった売却額が突然減額された

   車を売却しようと店舗へ出向き査定を受けた。その後、再び同じ店舗で、駐車中にフロント左側をぶつけられ修理したなどの修復歴をすべて告げたうえで再度査定してもらい、提示額に納得して契約した。

   ところが一昨日事業者から、「車をオークションに出したら、事故車扱いとなった。契約金額から約30万円減額してもらえないか」と連絡があった。2回も査定したうえで契約したのに納得いかない。契約通りの金額を支払って欲しい。(2022年3月・40歳代男性)

【事例7】引き渡した10日後、業者から一方的に契約を解除すると言われた

   業者を呼んで車を査定してもらい契約した。10日後に入金される予定だったが、突然、業者から「この契約はなかったことにしてほしい」と連絡があった。理由を聞くと、「担当者が現地で車を確認したうえで金額を決めたが、車の引き取り後、もう一度技術者が細かく点検したところ、事故車扱いになるようなゆがみが見つかったため」と説明された。

   この車は新車で購入したが、事故を起こしたことがあり、査定時に「板金塗装もしている」と修復箇所を示したうえで査定額が決まった。一方的に解約すると言われても納得できない。(2022年3月・50歳代男性)

   こうした中古車の売却をめぐるトラブルでは、契約と解約(キャンセル料)の問題が9割を占める。

   一般の消費者にとって、車を自ら売却することは一生のうちで何回もあることではなく、売却額の相場や手続きに関する情報は圧倒的に不足している。一方、買い取り業者はその道のプロだ。そんな状況で交渉するわけだ。

   業者に、十分に考える時間を与えられないまま、「今日すぐに引き渡せば〇〇万円で買い取る」など強引に契約させられたり、不審に思って解約すると、高額なキャンセル料を請求されたりするケースが多い【図表2】。

(図表2)増えています!中古車の売却トラブル(国民生活センターの作成)
(図表2)増えています!中古車の売却トラブル(国民生活センターの作成)

「査定サイト」は「相場」を知るには便利...だが、業者が押し寄せる可能性も

査定をめぐるトラブルが多い(写真はイメージ)
査定をめぐるトラブルが多い(写真はイメージ)

   そこで、国民生活センターではこうアドバイスしている。

   (1)査定の場では契約せず、一度冷静に考える。車の売却は、特定商取引法に定められたクーリング・オフ(一定期間、無条件で契約を解除できる制度)の対象外だ。査定の場で「今日なら高く買い取る」と契約を急がされても、複数の業者から査定額が出そろった時点でしっかり比較検討することが大切。

   (2)いったん契約をすると、原則として契約書の内容に拘束されるので、特にキャンセル条項はしっかり確認する。金額とともに、どの時点から発生するのか、よく理解したうえで契約する。契約からキャンセルまでの時間が短い場合や、著しく高い場合などは、消費者契約法第9条第1号で無効となる可能性がある。

   (3)最近増えているインターネットの「査定サイト」は、車種・年式・走行距離・人気度などからおおよその売却額を算定するもので、上手に利用すれば、自分の車の「売却相場」を知ることができる利点がある。

   しかし、査定サイトに参加している業者たちに連絡先などの個人情報を知られるため、多くの業者が勧誘にくる可能性があることを認識しておこう。

   (4)契約して車を引渡した後に、業者から査定額を減額したり、契約を解除されたりしても、修復歴や事故歴を事前に適切に告げていた場合は応じる必要はない。業者から査定額を減額したりできるのは、消費者が故意または過失により、それらを隠していた場合に限られるからだ。

(福田和郎)

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