「やらなきゃならないことがたくさんあるのに、どうも気が乗らない」 「だから、ついつい先延ばししてしまう」 「結果的には仕事がつまり、さらに大変なことに......」
今回取り上げたいのは、2020年6月、「日本一ネット」というウェブサイトで書評執筆本数日本一として「認定」された著者・印南敦史さんの本。多くの連載を抱えている印南さんが、先延ばしで困ったことになってしまう人に向けて、先延ばしせずにやり続ける習慣と秘訣と技術を伝授する一冊である。
「先延ばしをなくす朝の習慣」(印南敦史著)秀和システム
コツコツと連載を継続できた理由とは?
著者の印南(いんなみ)さんが連載を続けてこられた理由は、いたってシンプルだと言う。疑問を抱くことなく、いただいた仕事をただ愚直に続けてきた結果だ、と。
「なぜ疑問を抱かなかったかといえば、『書評を書きませんか?』と話をいただいたときに、ものすごくうれしかったから。ちょうど仕事がなかった時期だったので、『仕事をいただけてありがたい』という感謝の気持ちでいっぱいだったのです。そんな思いを忘れず続けてきた結果、気がつけばこれだけの時間が過ぎていたというだけのこと」(印南さん)
「かっこつけたいわけではなく、本当にそれだけの話なのです。そのせいか、いわゆる『先延ばし』をしたことはほとんどありませんでした。もちろん人間ですから、『なんとなくやる気が出ないなあ......』と思うようなことは何度でもありましたけれど、『だから先延ばしにしちゃえ』という発想にいたることはあまりなかったのです」(同)
印南さんの連載は、日刊のものが多い。毎日締め切りがあるので、穴を開けることができなかったと言う。先延ばしを繰り返せば、信頼を毀損しかねない。
「約束を破った以上は『あいつにはよくない過去がある』という印象はついて回ることになります。それはビジネスパーソンとして非常に不利で、みすみすチャンスを逃すことにもなりかねません。少なくとも僕は、一時的にモチベーションが上がらなかったというだけの理由で、チャンスを失いたくはないと考えているのです」(印南さん)
「毎日続けてきた結果として確実にわかったことがあります。先延ばしせずにきちんとやって約束を守っていれば、目の前のそのタスクを軸として、仕事全般にまつわるすべてがうまくいくようになっていくものだということ。クライアントから『約束を守る人だ』と思ってもらえるようになれば、次の仕事につながっていくことになるわけです」(同)
Yahoo!ニュースで高アクセス!
ひるがえって私(尾藤)の場合は、2010年頃からニュース記事の投稿をはじめた。時事問題や世の中の問題を追及するジャーナル記事が大半だった。ある日、献本された本を紹介したところ、Yahoo!ニュースで高アクセスを記録したことがあった。その時は、一気にamazonで本が売り切れた。「本の紹介でもアクセスが増えるものだ」と私は感心したが、当時は書籍を紹介する人はあまりいなかったのだろう。
こんなエピソードもある。ある日、某大手出版社から、風水に関する本が送られてきた。著者は台湾で事業を展開している占い師である。ヒアリングをしている際の「台湾では長財布を使ったり、黄色の財布を使うことはない」という主張に、私はピンときた。翌週、「間違いだらけの占いや風水、黄色い財布で金運アップはウソ?」という趣旨の記事を掲載した。その結果、Yahoo!ニュースでアクセス1位を記録し、amazonは即完売となった。
いまでは、ステマのそしりを受けるかもしれないが、当時は競合が存在しなかったのだろう。とくに、Yahoo!ニュースの効果は抜群だった。アクセスランキングで100回以上の1位を獲得した人も滅多にいないと思う。日々の投稿でネットに精通することもできた。
その後、出版社や著者から、1日10冊近くの献本が届けられるようになった。誰から聞いたのか事務所にも大量の本が届くようになった。その後、ポストが何回か破損したことがあり、出版社以外の献本を控えてもらうようになった。
どうやってオファーを集めたらいいか?
2019年からは、J-cast 会社ウオッチで「尾藤克之のオススメ・読んでためになるビジネス本」を連載している。サイト側から中止を言われない限り継続させるつもりだが、いつの間にか、私自身の著書も20冊を数えた。
現在、リモートワークが一般化したこともあり、ライターを副業にする人が増えている。ボーダーは1文字=1円クラスと言われる。これではいくら記事を書いても、稼ぐことはできないだろう。ボーダーから突き抜ける一つの手段が出版ではないかと思う。今回、紹介した印南さんも著者であり、ベストセラーも上梓している。
本書は、タイムマネジメントを意識した内容に仕上がっているが、むしろ副業やライターを目指している人に読んでもらいたい。目指しながらもなぜ稼げないのか、それはちょっとした気づきやコツではないかと思う。印南さんにはなぜオファーが舞い込むのか? そこを突き詰めるだけでも学びがあるはずだ。(尾藤克之)