就職先や転職先、投資先を選ぶとき、会社の業績だけでなく従業員数や給与の増減も気になりませんか?
上場企業の財務諸表から社員の給与情報などをさぐる「のぞき見! となりの会社」。今回取り上げるのは、メディアショップ「GEO」やリユースショップチェーンストア「2nd STREET」の運営を行うゲオグループの持株会社、ゲオホールディングス(ゲオHD)です。
1986年、愛知県豊田市にビデオレンタル店を開業。各地の企業を民事再生支援を通じて100%子会社化しながら事業規模を拡大してきました。2004年に東証一部(現プライム)への上場後もM&Aを繰り返し、2019年のおお蔵で主な買収は14社目となります。
コロナ禍で一時最終赤字も...直近では回復傾向
それではまず、ゲオHDの近年の業績の推移を見てみましょう。
ゲオHDの売上高はここ数期、右肩上がりに伸びています。2019年3月期こそ前期比減となっていますが、代わりに営業利益が急増し、営業利益率も5.4%に。最終利益も100億円を超えました。
翌期からも、売上高の増加が続きますが、営業利益は減少。2021年3月期には営業利益率が1.3%まで落ち込み、7.5億円の最終赤字に転落します。
この背景にはコロナ禍があり、DVD等映像レンタルは第1四半期に巣ごもり需要が発生したものの、通期では悪化し、業績不振店舗の減損損失を特別損失として計上しています。
2022年3月期は、下期以降の外出自粛ムード緩和に準じる形で業績が回復し、見事に増収増益を果たしました。
2023年3月期の業績予想は当初、売上高が前期比4.5%増の3500億円とわずかに増加するものの、営業利益は同14.4%減の70億円、最終利益も同36.5%減の38億円と見込んでいました。
ところが、第2四半期決算時に上方修正を発表し、営業利益を同22.3%増の100億円、最終利益を同3.9%減の57.5億円としています。
事業の主軸は「GEO」から「2nd STREET」へ?
ゲオHDは「小売サービス事業」の単一セグメントですが、子会社による「リユースショップ」と「メディアショップ」の運営を主な事業内容としています。
「リユースショップ事業」は、衣料・服飾雑貨・家電製品等の中古品の買取販売を行う「2nd STREET」「OKURA TOKYO」を運営。「メディアショップ事業」は、ゲーム・スマホ・家電などの買取販売、新品ゲームの販売、DVD・CD・コミックのレンタルを行う「GEO」の運営をしています。
2022年3月期の決算説明資料には、商材別の売上高と売上総利益が記載されています。
売上高は、「リユース」が最も大きく1684億円で全体の50.3%を占め、「新品」が1047億円で同31.3%、「レンタル」が430億円で12.8%、「その他」が187億円で5.6%でした。
なお、紛らわしいのですが、商材別の「リユース」には、前述の「リユースショップ」だけでなく「メディアショップ」における買取販売も含まれているので、話題になっていた「レンタルDVDのゲオが古着の会社になっている(古着の売上高が過半数)」という理解は不正確といえるでしょう。
リユースの内訳は、「2nd STREET」における衣料など、「OKURA TOKYO」におけるラグジュアリー商材等の「リユース系リユース」が1116億円で全体の33.3%を占めており、「GEO」におけるゲーム機器等の「メディア系リユース」が568億円で同17.0%となっています。
リユース系リユースは、売上高で前期比42.7%増と大きく伸びており、売上総利益でも全体の39.1%を占めています。さまざまな事業環境の変化を受けて、事業の柱はレンタルやメディアリユースから、衣料品等のリユースに移りつつあるといえるのかもしれません。
なお、連結売上高に占める割合が10%を超える子会社2社の業績を見ると、ゲオストアが売上高1887億円、当期純利益が13億円、セカンドストリートが売上高755億円、当期純利益が31億円となっており、利益ではセカンドストリートがゲオストアを上回っています。
「GEOグループでは41歳で500万円くらい」は正しくない
ゲオグループの連結従業員数は、2018年3月末の4222人から右肩上がりで伸びており、翌2019年3月末から4390人→4932人→5304人→5333人と順調に増えています。
特に2020年3月期には、コロナ禍にもかかわらず1年間で542人も増加していますが、この理由について会社は「新卒採用並びに業容の拡大に伴う期中採用の増加」によるものと説明しています。
ゲオHDの単体従業員数は2018年3月末以降、256人→242人→314人→419人→408人と推移しています。なお、2021年3月期に105人増えた理由は「主として組織再編により当社連結子会社への出向を解除したもの」としています。
ゲオHD従業員の平均年間給与(単体)は、2022年3月期は500万7027円に。平均年齢41.06歳、平均勤続年数11.90年となっています。とはいえ、これはある時点での持株会社における平均であり、これをもって主要事業を担うグループ会社の給与相場は判断できません。
ゲオHDの採用サイトを見ると、バイヤーや店舗開発から、社内SEや経営企画など幅広い職種で中途採用を行っています。
たとえば、「GEO」のリテール商品課バイヤー・MD(実務担当)の想定年収は500~800万円。前述の従業員の平均年間給与を上回っています。社内SEのセキュリティエンジニアでは400万円~900万円、経営企画室の実務担当は700万円~900万円です。
このように、給与テーブルががっちり決まった伝統的な大企業のように「GEOに入ると41歳で500万円くらいらしい」という見方は、必ずしも正しいとはいえません。持株会社のデータを見るときには注意すべき点といえるでしょう。
なお、ゲオホールディングスは2023年3月15日、2023年3月末在籍の正社員に10万円、継続雇用社員に5万円の特別手当を支給するとともに、2023年4月分より正社員の賃金を一人当たり合計17193円、6.64%の昇給をすると発表。あわせて、大学卒新卒社員の初任給を現行の20万8000円から23万円に引き上げるなどの改定を行うとしています。
「レンタル事業」の落ち込みを「リユース事業」の急成長がカバー
ゲオHDの株価は、2022年1月に1100円台に落ち込みましたが、同年12月には2300円台の高値をつけました。その後2000円台で推移していましたが、2023年に入って下降気味となり、現在は1600円前後で推移しています。
ゲオグループの祖業である映画のパッケージソフトのレンタル事業は、インターネット配信サービスの普及もあって市場縮小が急速に進んでいます。しかしゲオでは、トップシェアを盤石とし、スペース効率化を図るなど「レンタルを主要な収益源として大事にする方針に変更はありません」としています。
一方で、セカンドストリートのような「リユース系リユース」という新たな成長事業を育て、レンタル事業の落ち込みをカバー。現在では「メディア系リユース」を加えた「リユース事業」の売上総利益が全体の半数を超えるまでに成長しています。
そのセカンドストリートでは最近、国内のみならず海外展開を積極的に行っています。海外の直営店舗数は2023年2月末現在で、米国が21、マレーシアが11、台湾が17。2023年3月には台湾の宜蘭市に初出店します。
また、最近は、クリエイターが二次元コンテンツを販売できる「DLsite」などのデジタルコンテンツ事業も強化しており、新たな事業の柱となることが期待されています。(こたつ経営研究所)