空前の好決算を謳歌、次なる一手は?...東洋経済「総合商社」、ダイヤモンド「お金の終活」、エコノミスト「日本株」を特集

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   「週刊東洋経済」「週刊ダイヤモンド」「週刊エコノミスト」、毎週月曜日発売のビジネス誌3誌の特集には、ビジネスパースンがフォローしたい記事が詰まっている。そのエッセンスをまとめた「ビジネス誌読み比べ」をお届けする。

総合商社が国内市場に熱視線を送るワケ

   3月20日発売の「週刊東洋経済」(2023年3月25日号)の特集は、「シン・総合商社」。市場が縮小していくだろう日本に、総合商社は熱い視線を送っているという。空前の好決算の中、今後の事業環境をどうみて、どこに商機があると考えているのか。各社の狙いに迫っている。

   三菱商事が35年ぶりに国内で新規に開設した秋田支店のルポから特集は始まる。秋田県で洋上風力発電事業を進める同社は、2021年末、国の洋上風力発電入札の第1ラウンドで秋田、千葉の3海域を独占し、業界の注目の的になった。

   秋田支店のたたずまいは地味だが、中は企業連合を組む三菱商事と中部電力子会社の社員で熱気にあふれている。

   国内に熱い視線を注ぐのは三菱商事だけではない。丸紅の柿木真澄社長は「国内は飽和している市場なのかと、もう一度よく見ると意外とそうでもない。日本のビジネスは宝の山だ」。

   丸紅は20年4月に国内統括(国内市場担当役員)を置き、国内事業推進課を新設した。女性の健康を支援するフェムテック(女性が抱える健康の課題をテクノロジーで解決するツール)を事業化したり、社員を地方銀行に派遣して地元産品の海外販売事業を支援したりするなどの取り組みを進めているという。

   三井物産も20年10月、関西支社に国内事業開発室を新設し、関西で空飛ぶクルマの空域管理、高速道路でのトラック自動運転のプロジェクトに携わっている。

   同社は今年2月、約700億円を投じて国内給食最大手のエームサービスを完全子会社化することを発表した。そこから派生するオフィスの「空間づくり」事業なども次の中期経営計画の中で進める。

   少子高齢化、過疎化、人手不足などの課題が山積する日本市場に、なぜいま商社が投資を振り向けているのか。資源高騰の宴の先を各社がすでに見据え始めているからだ、と説明している。

◆課題は次の成長に向けた投資先

   総合商社はいま、資源市況の高騰を追い風に空前の好決算を謳歌している。

   三菱商事は今年2月、23年3月期の純利益が1兆1500億円となる見通しを発表した。三井物産も鉄鉱石、LNG(液化天然ガス)市況が吹き上げ、23年3月期は1兆0800億円の純利益を見込む。三菱商事、三井物産にとって過去最高純利益だが、商社全体を見ても純利益が1兆円の大台に乗るのは史上初だという。

   一方、課題となるのは次の成長に向けた投資先だ。

   三井物産と三菱商事が出資するロシアのLNGプロジェクト「サハリン2」では、ロシアのウクライナ侵攻後、事業がいつまで継続できるか不透明な状況になった。

   住友商事が参画したミャンマーの国営通信事業もクーデター後、批判にさらされるなど、海外投資へのリスクは高まっている。相対的に割安感もあり、国内へ商社の投資資金が向かいやすくなっているというのだ。

   インタビューで伊藤忠商事の岡藤正広会長CEOは、「灯台下暗しではないが、足元を全然見なかったら、こんなもんがあったのか、ということが起こる」と、国内のビジネスチャンスを逃す可能性について語っている。日本は法制度がしっかりしており、ビジネスがしやすいという。

   その伊藤忠商事は、コンサルティング業界の王者・アクセンチュアに対抗。世界最大手の広告代理店である英WPP傘下の米AKQAと合弁会社を設立し、国内企業向けに「顧客体験(CX)デザイン」のコンサルを行うという。岡藤会長はコンサル領域を含む情報・金融カンパニーを「ファミリーマートに次ぐ第2の成長の柱」と位置づけた。

   このほか、量子コンピューターも活用し、ソフト力で物流施設を磨こうとしている住友商事やオンデマンド交通革命に取り組む丸紅の動きも紹介している。

   各社の社風や待遇の違いについても、社員に匿名座談会で語ってもらっている。給与も高く、就活ランキングで人気上位を占める総合商社だが、各社とも仕事は相当きついことがうかがえた。

シニアに魅力の「ドル建て社債」

   「週刊ダイヤモンド」(2023年3月25日号)の特集は、「ボケでも寝込んでも安心! お金の終活」という刺激的なタイトルだ。

   ボケたり、寝込んだりする前に、残された配偶者や子供が困らないためのお金の終活をどうするか――いろいろな選択肢を探っている。

   シニア投資では、金融機関の言いなりにならないことが大切だ。警戒すべき金融商品・サービスの見抜き方を以下のようにまとめている。

・コストの説明があいまいで、運用中の費用がはっきりない
・リスクや失敗時の話をせず、良い話ばかりをする
・過去の良い実績が将来も続くかのように提案してくる
・仕組みが複雑で、何度聞いても理解できない
・ライフプランや将来の資金計画を考慮せずに商品を提案

   そうした中で、元本が減らない利息収入が期待できる「ドル建て社債」の魅力を紹介している。社債はその会社への貸付金なので、満期(償還日)まで保有していれば、その間ずっと毎年決まった利息がもらえる。

   しかも、額面で償還される元本保証。安定と定期的な利息収入の両方が欲しい人に向いている。為替レートの関係で損益分岐点が低くなる可能性もあるが、満期時に円高で損する場合には、引き続きドルで保有して円に戻すタイミングをコントロールすることで、リスクを回避できるという。

   選び方について、発行体の格付けはA以上、満期までの期間は10年以内、利回りが米国債より高いことを挙げている。実際にどの証券会社で買えるのか? 体験取材が興味深い。

   このほか、配当型ETF(上場投資信託)、60歳からの住宅ローン「リ・バース60」の活用法などを紹介している。

   第2特集は、「複合機『ドル箱』崩壊」。大手日系メーカーのドル箱だった複合機事業に暗雲が立ち込めているという。そろって好業績で工場もフル稼働なのに、なぜなのか? 各社が進出する「ソリューションビジネス」にも落とし穴があるというのだ。

   業界再編の動きを予想している。最近、複合機大手のトップセールスだった知人が、別のIT大手に転職した。いち早く危機を察したのだろうか、と思った。

株主還元や株式分割で生まれ変わる日本株

   「週刊エコノミスト」(2023年3月28日号)の特集は、「日本株の大逆襲」。収益性や成長力の低さから投資家離れを招いていた日本株だが、積極的な株主還元や株式分割などで生まれ変わりつつあるという。

   大日本印刷が2月に発表した「経営の基本方針」で、PBR(株価純資産倍率)1.0倍超の早期実現を目指す」という記載が市場関係者を驚かせた。

   同社の昨年末時点のPBRは0.64倍と、1倍を下回る典型的な「割安銘柄」。しかし、アクティビスト(物言う株主)の米エリオット・マネジメントが1月下旬に大日本印刷株を取得したと報じられると、株主還元の増加の期待から株価が急騰していたという。

   発表翌日、株価は前日比14%上昇。さらに3月9日に1000億円(発行済み株式の15.05%)が上限の自社株買いを実施すると発表、株価は一時、16年10カ月ぶりの高値を付けた。ほかにも、商社カナデンやシチズン時計も自社株買いを発表すると、株価が上昇した。

   低PBRは日本株を象徴する指標だが、昨年4月の東証再編により、状況は変わったという。今後、低PBR銘柄が株主還元に本気になり、収益性も伴って株価が上昇すれば、日本株全体の底上げと持続的な成長につながる、と期待している。

   このほか、株主還元の強化やファーストリテイリング、信越化学など、相次ぐ株式分割の背景、オリックスなどが廃止したが、個人投資家に根強く残る株主優待の最新事情をリポートしている。

   第2特集の「チャットGPTのスゴい世界」も興味深い。実際に使ってみたら、要約のレベルの高さに驚いたという体験記、大量の事前学習と並列処理で自然な言語を生み出す技術解説が参考になる。話題先行で敬遠していたが、チャットGPTを使ってみよう。(渡辺淳悦)

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