2024年卒学生向けの就活シーズンが本格化した。新卒採用予定数を増やす企業が前年に比べ約3割増加するなど、就活生にとって、かつてない「売り手市場」だ。学生たちはどんな企業に注目しているのか。
そんななか、就職・転職のジョブマーケット・プラットフォーム「OpenWork」を運営するオープンワーク(東京都渋谷区)が、いわゆる上位校とされる13大学の「2024卒就活生が選ぶ、就職注目企業ランキング【大学別編】」を、2023年3月16日に発表した。
東京大学と京都大学、早稲田大学と慶應義塾大学、そしてMARCH(明治大学・青山学院大学・立教大学・中央大学・法政大学)と関関同立(関西大学・関西学院大学・同志社大学・立命館大学)の13大学だ。
合計の約3万人の学生が選んだベスト20位の企業から見えてくるものは――。
総合上位は、若手に任せて大きく成長させてくれる企業
「OpenWork」は、主に社会人の会員ユーザーが自分の勤務している企業や官庁などのクチコミ情報を投稿する国内最大規模の口コミサイト。社会人のほか、口コミを通じて生々しい企業の就職情報を得ようとする学生ユーザーも多く登録している。会員数は約540万人(2023年2月時点)という。
OpenWorkでは、企業の評価を「待遇面の満足度」「社員の士気」「風通しの良さ」「社員の相互尊重」「20代成長環境」「人材の長期育成」「法令順守意識」「人事評価の適正感」の8つの指標を5段階で評価している。
今回の調査は、すでに登録している2024年卒業予定の13大学の学生ユーザー3万1197人が、どの企業に注目して口コミ情報を調べたか、検索件数をもとに調査した。「検索件数が多い企業ほど注目度が高い」と評価したわけだ。
【総合】
まず、全体としての「総合」を見ると、1位は外資系コンサルト会社のアクセンチュアだ。以下、2位にITと人材に特化したメディアのレバレジーズ、3位にNTTグループ一員で情報サービス大手のNTTデータ、4位に総合不動産大手のオープンワーク、5位に自動制御機器開発・販売のキーエンス。
6位にコンサルトの野村総合研究所、7位にインターネットメディア・広告のサイバーエージェント、8位にソフトウェア開発のSky、9位に総合エレクトロニクスメーカーの富士通、10位に電機メーカーの日立製作所という結果になった【図表1】。
ひと昔前は、総合商社が上位に並んだものだが、ベスト20に1社も入っていないことが目につく。年功序列型の代表というイメージが影響しているようだ。
これら上位企業の共通点として、「20代成長環境」への社員からの評価が高いことがあげられる。(上位5社中4社が『20代成長環境』の社員評価スコアが5点満点で4.5超)。企業の採用サイトをのぞいても、「早期から裁量権が与えられる」「20代のうちにリーダー職になる人が多い」といった発信が目立つ。
背景には、「転職前提の就職活動」というZ世代のキャリア観に加え、企業側も「ジョブ型雇用」を推進するなど、学生と企業双方に入社早々にスキルを高めたいというニーズがあることが考えられる。
また、最近では「ゆるい職場」(仕事に厳しさがなく、やりがいや成長の機会に乏しい職場)や「クワイエット・クィッティング」(静かな退職)がキーワードになるなど、若手の裁量権の大きさに注目が集まっている。
東大はコンサル系、京大は地元企業とメーカーに注目
東京大学と京都大学ともに1、2位はアクセンチュアと野村総合研究所というコンサルタントが占める結果となった。
双方のランキングを比較して分析すると、東京大学ではマッキンゼー・アンド・カンパニーやボストン・コンサルティング・グループ、三菱総合研究所といったコンサルティング・シンクタンク系企業が半数以上を占めており、根強いコンサル系企業への関心の高さが見られる【図表2】。
一方、京都大学では関西電力、サントリー、パナソニックといった関西に本社を置く企業が多くランクインし、地域色を出しているのが特徴だ。また、旭化成、日立製作所、トヨタ自動車といった大手メーカーに対する関心が高い点も東京大学との違いだ【再び図表2】。
東京大学と京都大学の学生が注目した企業ではどういった働きがいや成長環境があるのか、新卒入社した社員のクチコミから見ると――。
マッキンゼー・アンド・カンパニー「一緒に働くチームメイトは頭がよくやる気のあること、上司も基本的にいつもサポーティブであること、クライアントは○長級(本部長、部長など)が多く、大きなワークストリームを任せてもらえること、パフォーマンスが評価ないし給与に直結していることなどから、働きがいはかなりあると思う」(コンサルタント、女性)
ゴールドマン・サックス証券「周りが優秀な人ばかりなので、いやでも切磋琢磨される。かかわる案件も新聞紙面を飾るような大規模案件が多く、結果が見えるので士気が自然と上がる」(投資銀行、男性)
関西電力「日常生活を送るのに欠かせない電力を通じて、社会全体を支えているという実感がある。また、新規事業など電力会社というスケールの大きさを活かした新しいフィールドでのチャレンジができる」(技術系総合職、男性)
旭化成「それぞれに与えられる裁量が広いため、働きがいは高いと感じる。素材メーカーならではの自由度の高いビジネスをつくる楽しさが経験できる」(技術職、男性)
早大は商社、慶応は広告代理店 MARCHはIT企業、関関同立は「地元愛」注ぐ
【早大・慶大】
続いて、早稲田大学と慶應義塾大学のランキングを比較すると、早稲田大学では楽天グループ、リクルート、サイバーエージェントなど「toC向け」(一般消費者向け)のサービスを展開する企業が多くランクインする傾向にあった。また、ほかの大学のランキングと比較して早稲田大学のみでランクインする企業として、伊藤忠商事が目についた【図表3】。
一方、慶應義塾大学では三井不動産、三菱地所などの不動産や、三菱UFJ銀行、三井住友銀行などの金融が多くランクインする傾向にあった。特に、広告代理店大手の電通と博報堂は、総合やほかの大学を含めて慶應義塾大学にのみ登場する特徴のひとつだ【再び図表3】
【MARCH・関関同立】
最後に、関東と関西の有名私大グループであるMARCH(明治大学・青山学院大学・立教大学・中央大学・法政大学)と、関関同立(関西大学・関西学院大学・同志社大学・立命館大学)のランキングを分析すると――。
MARCHでは、SCSKや楽天グループ、日本IBM、伊藤忠テクノソリューションズ、NECといったIT企業が、関関同立と比べると、多くランクインする傾向が見られる【図表4】。
一方、関関同立では、京都大学と同じく関西に本社があるサントリーや関西電力、パナソニックが登場するが、京都大学ではランクインしなかった京セラや村田製作所、クボタといった関西企業がさらに多く入っているのが特徴だ。より「地元愛」が高いといえそうだ。
調査は、OpenWorkに登録している2324年卒学生ユーザー約16万人の中から対象大学を限定して集計した。内訳は東京大学(2905人)、京都大学(2080人)、早稲田大学(5588人)、慶應義塾大学(4770人)、MARCH(明治大学・青山学院大学・立教大学・中央大学・法政大学、計1万4002人)、関関同立(関西大学・関西学院大学・同志社大学・立命館大学、計1万852人)の合計3万1197人。(福田和郎)