首都圏からの転出 ソフトウェア開発が過去最多
また、首都圏から転出した企業の業種をみると、「サービス業」が129社で最も多かった。なかでも、ソフトウェア開発やベンダー、ドローン開発などの先端技術産業も含めたソフトウェア産業が29社あり、サービス産業全体の2割超を占めた。
次いで多かったのは、68社の「製造業」で、前年の51社から大幅に増えたほか、12 年以来10年ぶりに60社超えた。
肉製品やビール醸造といった業種を含む食品産業が12社と多かった。「小売業」(35社)は、飲食店などを中心に転出がみられ、社数でも過去最多だった。【図3参照】
同社は首都圏外への移転の動機について、安価な土地価格や物流アクセスの利便性以外に、食品産業などでは水資源をはじめ自然環境の豊かさ、ドローン産業などでは人家が少なく研究開発に適した閑散地帯など、各産業のニーズに即した新たな基準が加わりつつあるとしている。
一方、首都圏への転入状況をみると、こちらも「サービス業」が98社と最も多かったものの、前年(124社)から26社減と大幅に減少した。
「卸売業」は41社で、1998年(33 社)以来24年ぶりの低水準を記録したほか、トラック運送などの「運輸・通信業」(7社)は前年から半減して5年ぶりに10社を下回る少なさだった。
さらに、移転企業を売上高の規模別にみると、最も多かったのは「1億円未満」の149社で、多くが小規模な企業だった。また、「1~10億円未満」(143社)が前年から大幅に増加し、2001年(145社)以来 22年ぶりの多さだった。
「脱首都圏」企業は、コロナ禍直後に多くみられた身軽な小規模企業から、業績堅調で従業員規模やオフィス規模が大きい中堅企業へと広がりをみせている。
一方、転入企業で最も多かったのは「1~10億円未満」の106社。企業数の多い首都圏に営業機会を求めた成長途上の企業が多く転入している。ただ、前年に比べて社数は大幅に減少した。【図4参照】
帝国データバンクは、
「首都圏に必ずしもオフィスを置く必要性がないという企業の認識は一過性の現象から半恒久的なものへと定着しつつある。テレワークなどコロナ禍に対応したビジネス環境の定着にともない、企業の『脱首都圏』の動きは当面続く」
とみている。