配偶者に扶養されているパート従業員の就労時間の抑制につながる「年収の壁」の解消に向けて、政府が企業への助成を検討していることがわかった。
扶養から外れる人の厚生年金など保険料の一部を、勤務先が負担する場合、国が上限を設けて助成。保険料は本来、労使で折半されるが、パート従業員分も国の助成を受けた企業が実質的に肩代わりする案が浮上しているという。
そうしたなか、多様な家族像の実現に向けた事業を手がけるコネヒト(東京都港区)が、「年収の壁についてのアンケート」を実施。調査によると、扶養内で働く女性の3人に1人が「扶養範囲を気にせず、もっと働きたい」と答えていた。2023年3月15日の発表。
パート従業員に「長く働いてもらう」ことで、人手不足の解消も狙う
「収入を扶養内に収めるには、どれくらい働けばいい?」と悩む、パートタイムで働く人は少なくない。「扶養内」勤務とは、税金や社会保険のルールに則り、「被扶養者」として働くことをいう。収入を一定以内に収めて扶養内で勤務することで、税金や社会保険料の負担を抑えることができる。
また、社会保険のルールでは、扶養内で勤務をすると社会保険料の支払いが免除される。
つまり、収入を扶養内に収めることで、扶養する人の所得税や住民税、社会保険料の負担が軽減できるメリットが見込めるというわけ。そのボーダーラインの一つが、「103万円」や「106万円」といった「年収の壁」だ。
税金のルールでは、配偶者を扶養している場合は「配偶者控除」または「配偶者特別控除」を、16歳以上の親族を扶養している場合は「扶養控除」を使うことで、扶養している人の課税対象となる所得が減り、納税額が下がる。
たとえば、夫が会社員、パートで働く妻の年収103万円(基礎控除の48万円と給与所得控除の55万円を合計)以内の場合、夫は配偶者控除を使えるので、所得税はかからない。
ところが、妻の年収が103万円を超えると配偶者控除を使えなくなり、103万円を超えた部分に対して5~45%の所得税と、所得税額の2.1%に相当する復興所得税がかかることになる。
ただし、配偶者控除の代わりに配偶者特別控除を使うことができるので、すぐに税負担が増えるわけではない(扶養する人の税負担が増え始めるのは「年収150万円」がボーダーライン)。
また、社会保険のルールでは現行、従業員101人以上の企業でパートとして働く場合、年収106万円以上になると会社員として働く夫の扶養から外れ、厚生年金や健康保険、介護保険(40歳以上)の保険料を自ら負担しなければならなくなる。
このように、一定収入を上回ると税金や社会保険料の負担が発生するため、パートで働く人からは「働き損だ」との声があった。政府は、企業を助成することでパートの手取りの減少を緩和して、長く働きやすくすることで深刻な人手不足を解消する狙いもある。