突然やってきた「金融危機」 シリコンバレー銀行の破綻、米国経済にこの先どう影響していくか?(志摩力男)

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米国経済、「ノーランディング」は吹き飛ぶ事態に

   金融危機が発生すると、なかなか不安の連鎖は止まりません。クレディ・スイスがUBSに吸収される際、株価は2スイスフラン前後で取引されていましたが、結果的に0.76スイスフランとなり、株主の利益は大きく毀損しました。しかし、交渉の最初の段階では、UBSは0.25スイスフランを提示していました。

   しかも、スイス政府は一部債券に関して、投資家の負担を求めました。AT1債160スイスフランの価値はゼロとなりました。いわゆるCOCO債(偶発転換社債)です。この影響は大きいでしょう。

   リーマン・ショック以降、ボルカールールを制定し、銀行が危機に際しても二度と倒れないようにしてきましたが、今ここに潰れることになりました。米国は、さらに強固な規制を求めてくるでしょう。5月1日までに、新しい規制を決める予定です。

   推測になりますが、おそらく自今資本比率等を今よりも高めるでしょう。銀行検査も同時に入ります。新規の融資を進めるような状況にはならないでしょう。つまり、信用の伸びが鈍化します。これはGDPにネガティブなインパクトを与え、景気後退が現実的な問題となってきます。

   景気があまりにも強いので、ハードランディングでも、ソフトランディングでもなく、ノーランディングと言っていたのですが、これも吹き飛びました。CMEが示すFFレートを見ると、次3月の利上げが最後となり、今後は来年向けてFOMCは毎回のように利下げする局面が予想されています。来年7月には3%です。

   こうした状況では、やはり円高に進まざるを得ないでしょう。これまでドル高円安を想定してきましたが、リスクオフが進む展開となり、ある程度の円の揺り戻しを想定したほうが良いと思います。(志摩力男)

志摩力男(しま・りきお)
トレーダー
慶応大学経済学部卒。ゴールドマン・サックス、ドイツ証券など大手金融機関でプロップトレーダー、その後香港でマクロヘッジファンドマネジャー。独立後も、世界各地の有力トレーダーと交流し、現役トレーダーとして活躍中。
最近はトレーディング以外にも、メルマガやセミナー、講演会などで個人投資家をサポートする活動を開始。週刊東洋経済やマネーポストなど、ビジネス・マネー関連メディアにも寄稿する。
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