「電話番号を替えずに携帯会社を乗り換えたい」と思っても、手続きが煩雑だったが、2023年5月下旬から簡単になる。現在、契約前後の2社で手続きしなくてはならないが、1社だけで済むようになる。
そんななか、モバイル市場専門の調査会社「MMD研究所」(東京都港区)が2023年3月14日に発表した「2023年2月通信契約サービスに関する調査」によると、スマホユーザーの4人に1人が番号を変えずに携帯会社を変える「番号持ち運び制度」(MNP)の経験者だという。
ただ、「番号持ち運び制度」に関する基礎知識はイマイチのようで、せっかくの新制度も「仏(ほとけ)作って魂入れず」にならなければよいが......。
「乗り換え」を過度に引き留める携帯大手の行為が横行
総務省が2022年4月に公式サイトに公開した「MNPワンストップ化の検討状況について」や、報道をまとめると、電話番号を変えずに契約する携帯会社を乗り換える「番号持ち運び制度」(MNP=モバイル・ナンバー・ポータビリティ)について、NTTドコモ、KDDI(au)、ソフトバンク、楽天モバイルの携帯大手4社が2023年5月下旬から手続きを乗り換え先のみで完結できるようにする方針を固めた。
携帯電話各社の競争を促すため、総務省が手続きの簡素化(ワンストップ化)を求めて、システムの構築と運営開始スケージュールを大手4社と詰めていた。新たな仕組みには大手4社に加え、一部の格安スマホ事業者(MVNO)も参加する予定だ。
現在、番号持ち運び制度を利用するには、契約中の会社と乗り換え会社の2か所で手続きが必要だ。たとえば、A社からB社に乗り換える場合、まずA社に「MNP予約番号」の発行を依頼する必要がある。そのうえで、B社の販売店やホームページで予約番号を示して新しい契約を結ぶ。
手続きが2段階で手間がかかるうえ、契約中のA社による利用者の過度な引き留め行為が横行しているため、乗り換えが進まない要因となっていた。5月下旬から始まる仕組みでは、乗り換え先B社だけで手続きが済む。A社解約に伴う説明もB社で受け、A社とのやりとりが不要になる。
「番号持ち運び」が多いトップ2は「Rakuten UN-LIMIT」と「LINEMO」
さて、18歳から69歳までの男女4万人を対象とした今回のMMD研究所の調査ではまず、番号持ち運び制度を利用した経験の有無を聞いた。それによると、「3回以上利用したことがある」(5.6%)、「1~2回利用したことがある」(19.0%)を含めて合計24.6%になった。4人に1人が利用したことがあるわけだ【図表1】。
利用経験を大手携帯4社のサービスユーザー別にみると(複数回答可)、利用経験があると答えた人が最も多かったのは「Rakuten UN-LIMIT」(55.9%)、次いで「LINEMO」(55.3%)、「UQ mobile」(46.7%)、「Y! mobile」(40.9%)、「povo」(40.5%)となった【図表2】。
「番号持ち運び」基礎知識テスト、全問正解は2.8%
ところで、最初に番号持ち運び制度の利用経験の有無を聞いた時も、「言葉は聞いたことがあるが、利用方法や内容は知らない」(14.1%)、「まったく知らない」(41.6%)と、よく知らない人が6割近くいた【再び図表1】。
そこで、言葉を聞いたことがある人を含めて「認知」している2万3377人(全体の58.4%)に、番号持ち運び制度の基礎知識を9問テストして、正答率を計算した(2023年2月現在の情報)。
正答率が最も高かった項目は「通信会社を乗り換えても、携帯電話番号をそのまま使うことができる」(89.5%)で、次いで「通信会社と紐づいていたポイントを引き継げない場合がある」(78.5%)、「乗り換えた通信会社の名義は、『MNP予約番号』を取得した名義を使用しなければならない」(69.7%)の順だった【図表3】。
一方、正答率が最も低かった項目は「MNPを利用すれば、乗り換え先の通信会社のみで手続きが完了する」(36.6%)で、多くの人が両方の会社で煩雑な手続きをしなくてはならないことを知らなかったわけだ。
逆にいえば、手続きのワンストップ化によって、番号乗り換えがかなりスムーズに進みそうだ。ちなみに全問正解はわずか2.8%となった。
調査は、18歳~69歳の男女4万人を対象に2023年2月3日~6日、インターネットを通じてアンケートを行なった。回収されたサンプルを人口構成比に合わせるために、ウエイトバック集計した。(福田和郎)