2023年4月から労働基準法の一部改正が施行され、「PayPay」や「d払い」、「au PAY」といったスマホ決済サービスを通じて、従業員に賃金を支払うことができるようになる。
そこで、エイチームライフデザイン(愛知県名古屋市)が2023年3月16日経営者・役員500人を対象に行った「給与デジタル払いに関するアンケート調査」の結果から、企業側の意向をみてみよう。
それによると、経営者・役員のなかで、給与デジタル払いに対応する意向があるのは、以外にも「46.3%」に達することがわかった。その理由には、「銀行口座振り込み時の手数料削減のため」や「給与受け取り方法の多様化による従業員満足度向上のため」、「外国人労働者が多いため」といった声が多いようだ。
給与デジタル払い、積極的になれない理由に「メリット感じない」「通信環境が心配」
この調査は給与デジタル払いを検討している全国の会社の経営者・役員497人を対象にインターネット調査を実施したものだ。
はじめの設問「給与デジタル払いを実施する方向で考えていますか?」と尋ねたところ、実施する方向にある人は「46.3%」いることがわかった。一方で、しない方向にある人は「26.0%」。「決められていない」は「27.7%」。
続いて、「給与デジタル払いを実施する予定」という企業に向けて、「給与デジタル払いの実施を考えている一番の理由は何ですか?」と尋ねたところ、「銀行口座振り込み時の手数料削減のため」が「63.9%」という回答が最も多かった。次いで、「給与受け取り方法の多様化による従業員の満足度向上のため」(25.6%)、「外国人労働者が多いため」(9.1%)となった。
このほかにも、
「帳簿等も電子式に変わっていくので将来的な準備を兼ねて」
「会社の業務全般をデジタル化するためその一部として給与デジタル払いを実施する」
「管理費抑制、生産性向上のため」
といった意見が上がったという。
一方で、デジタル払いを導入しない方向で検討している人にその理由を聞いたところ、「従業員へのメリットをあまり感じられないため」が多くを占めて「32.6%」に上った。2番目は「法律がしっかり整備されていない状態で実施するのに不安を感じるため」で「24%」。3番目は「実現までの準備や管理などに手間がかかるため」が「20.2%」となった。
上記以外では、
「通信障害などで一部の人には支払いができていないなどのトラブルが想定されるため」
「他企業の導入事例を参考にしてから検討したいため」
などの声が上がっているという。
準備していることは、「給与システムの見直し」「従業員情報の管理体制の構築」「費用の把握」
調査ではさらに詳しく、「実施にあたり準備していること」を聞くと、「給与システムの見直し」が「65.2%」で最も多く、「従業員情報の管理体制の構築」(47%)、「費用の把握」(36%)、「必要性の確認(希望者を把握するためのアンケート調査など)」(27.8%)の順になった。
最後に、「給与デジタル払いを検討するにあたり、国や政府に一番期待していることは何ですか?」と質問すると、「メリット・デメリットを明確化してほしい」という回答が「28.8%」と最多になった。
以下、「給与システム管理を簡易化してほしい」(19.3%)、「法律の整備」(18.3%)、「通信障害や不正利用などのトラブル時の対策」(18.1%)、「キャンペーンなど導入する企業がお得になるイベントの実施」(6.6%)と並んでいる。
この調査結果を受けて専門家の意見として、スキラージャパン株式会社のファイナンシャルプランナーの伊藤亮太氏は、
「アンケートを見ると、4割以上の企業が給与デジタル払いを実施する方向であるとのこと。意外に多いなというのが正直な感想です。
これだけの企業が給与デジタル払いを検討する可能性があることを加味すると、給与の支払い方法が大きく変わることも想定できます」
「その一方で、まだまだ慎重な企業がいることも事実です。
とはいえ、初期から導入する企業が多ければ、今後一気にデジタル払いが加速する可能性もあります。
その結果、様々な店舗におけるキャッシュレス促進にもつながる可能性があり、さらにキャッシュレスが日本全体で進んでいくと言えるのではないでしょうか」
とのコメントを出している。
なお、調査はインターネットアンケートで全国の給与デジタル払いを検討する経営者・役員561人に質問し、2023年2月20日から2月25日までの間に497人の有効回答を得た。