シリーズ連載中の「俯瞰して見る日本」。第4回は、税金と福祉に焦点を当てる。税金は、都道府県で税額差の出やすい「住民税」と「固定資産税」を、福祉面では「老人福祉費」と「児童福祉費」を取り上げる。
1人当たり住民税...1位の東京都、最下位の秋田県とは3倍違う
2019年度の1人当たり住民税では、東京都が24万円で圧倒的に高額だ。上位2位の愛知県の14万8000円を10万円近く上回っており、20万円台は全国でも東京都だけ。東京都は、最下位の秋田県の8万円の3倍の住民税額となっている。
ただ、全国平均は12万9000円で、平均を上回っているのは4位の大阪府の13万3000円までで、それ以下は平均を下回る。これは、いかに大都市に所得の多い人が多く住んでいるのかを鮮明に表している。
住民税は各地方自治体が徴収する地方税で、都道府県民税と市区町村民税を合わせたもの。税額は所得に応じて計算する「所得割」と定められた額の「均等割」を合計した額となる。したがって、簡単に言えば、所得の高い人が多くの住民税を払うことになる。
上位10には、連載の第3回目で取り上げた1人当たり所得の上位10のうち、東京都、愛知県、静岡県、滋賀県、神奈川県の1都4県が入っている。
また、下位10には、1人当たり所得の下位10のうち、沖縄県、宮崎県、青森県、鹿児島県、鳥取県、長崎県、高知県の7県が入っており、所得水準が住民税に反映されていることが明確にわかる。(表1)
一方、2019年度の1人当たり固定資産税でも1位は東京都で11万3000円。上位2位の愛知県の8万5000円を3万円近く上回っており、10万円を超えているのは東京都だけ。東京都は最下位の長崎県の5万円の倍以上の固定資産税となっている。
ただ、全国平均は7万3000円で、平均を上回っているのは9位の神奈川県までで、それ以下は平均を下回っている。これは、いかに東京都の地価が高いかの表れだろう。
上位10には、連載の第3回目で取り上げた住居の消費者物価指数で上位10のうち、東京都、神奈川県、大阪府、静岡県、三重県の1都1府3県が入っている。
また、下位10には住居の消費者物価指数の下位10のうち、秋田県、鳥取県、奈良県、北海道の1道3県が入っており、地価が固定資産税に大きく影響していることを表している。(表2)
さて、住民税と固定資産税の関連性をみると、住民税上位10で固定資産税上位10に入っているのは、東京都、愛知県、神奈川県、大阪府、静岡県の1都1府3県。
一方、住民税下位10で固定資産税下位10に入っているのは、秋田県、鹿児島県、長崎県、鳥取県、高知県の5県。やはり、住民税の多さ(所得の高さ)と固定資産税の多さ(地価の高さ)にはある程度の関係性があるとみた方がよさそうだ。
東京都だけは高齢者人口が少ないのに、老人福祉費が多い
では、税金はどのように使われているのかを老人福祉費と児童福祉費で見てみる。
65歳以上の高齢者を対象とした1人当たり老人福祉費の2019年度実績では、上位10には高齢化が進む都道府県が並ぶ。その中で、比較的に高齢化の進展が遅い東京都も入っている。
連載の第1回目で取り上げた人口に占める65歳以上の割合の上位10の中で、老人福祉費の上位10に入っているのは、高知県、徳島県、島根県、和歌山県、大分県の5県。
一方、65歳以上の割合の下位10で、老人福祉費下位10に入っているのは、神奈川県、滋賀県、埼玉県、千葉県、宮城県の5県。(表3)
つまり、高齢者人口が多ければ、老人福祉費がかさむ構造になっているが、東京都だけは高齢者人口が少ないのに、老人福祉費が多い。これは、東京都の物価水準の高さに起因するものと思われる。
同様の傾向は17歳以下を対象とした児童福祉費にもみられる。
2019年度の1人当たり児童福祉費が最も多いのは、東京都の87万7000円。2位の鳥取県の62万3000円から25万円以上も高い。東京都は、最も低い岐阜県の40万円の2倍以上となっている。
児童福祉費の上位10の中で、連載の第1回目で取り上げた人口に占める15歳未満の割合の上位10に入っているのは、沖縄県、熊本県、宮崎県、鹿児島県の4県。一方、児童福祉費の下位10で、15歳未満の割合の下位10に入っているところはない。(表4)
したがって、児童数と児童福祉費との関連はそれほど強くないように思われる。
たとえば、児童福祉費が1位の東京都は、15歳未満の割合では下位8位となっている。東京都の場合には、老人福祉費と同様に物価の影響があると考えられるが、15歳未満の割合が下位2位の青森県、下位7位の山形県は、児童福祉費では上位10に入っている。
一方で、15歳未満の割合が上位8位の愛知県は、児童福祉費が下位5位に入っている。これは、児童福祉に対する姿勢の違いなのかもしれない。
そこで、第5回では教育について取り上げてみたいと思う。【第5回につづく】