東京都だけは高齢者人口が少ないのに、老人福祉費が多い
では、税金はどのように使われているのかを老人福祉費と児童福祉費で見てみる。
65歳以上の高齢者を対象とした1人当たり老人福祉費の2019年度実績では、上位10には高齢化が進む都道府県が並ぶ。その中で、比較的に高齢化の進展が遅い東京都も入っている。
連載の第1回目で取り上げた人口に占める65歳以上の割合の上位10の中で、老人福祉費の上位10に入っているのは、高知県、徳島県、島根県、和歌山県、大分県の5県。
一方、65歳以上の割合の下位10で、老人福祉費下位10に入っているのは、神奈川県、滋賀県、埼玉県、千葉県、宮城県の5県。(表3)
つまり、高齢者人口が多ければ、老人福祉費がかさむ構造になっているが、東京都だけは高齢者人口が少ないのに、老人福祉費が多い。これは、東京都の物価水準の高さに起因するものと思われる。
同様の傾向は17歳以下を対象とした児童福祉費にもみられる。
2019年度の1人当たり児童福祉費が最も多いのは、東京都の87万7000円。2位の鳥取県の62万3000円から25万円以上も高い。東京都は、最も低い岐阜県の40万円の2倍以上となっている。
児童福祉費の上位10の中で、連載の第1回目で取り上げた人口に占める15歳未満の割合の上位10に入っているのは、沖縄県、熊本県、宮崎県、鹿児島県の4県。一方、児童福祉費の下位10で、15歳未満の割合の下位10に入っているところはない。(表4)
したがって、児童数と児童福祉費との関連はそれほど強くないように思われる。
たとえば、児童福祉費が1位の東京都は、15歳未満の割合では下位8位となっている。東京都の場合には、老人福祉費と同様に物価の影響があると考えられるが、15歳未満の割合が下位2位の青森県、下位7位の山形県は、児童福祉費では上位10に入っている。
一方で、15歳未満の割合が上位8位の愛知県は、児童福祉費が下位5位に入っている。これは、児童福祉に対する姿勢の違いなのかもしれない。
そこで、第5回では教育について取り上げてみたいと思う。【第5回につづく】