どうしたら正しく調べられるか? 元国会図書館、レファレンスのプロが明かす

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   原稿のチェックや論文執筆など、仕事でも趣味でもちょっとした「調べもの」をする際に、きちんとした答えを出すにはどうすればよいのか?

   本書「調べる技術」(皓星社)は、国立国会図書館で、長く利用者の調べ物相談(レファレンス)に従事した著者が、その実践的な技術を公開した本である。

「調べる技術」(小林昌樹著)皓星社

   著者の小林昌樹さんは、1992年、国立国会図書館に入館。2005年からレファレンス業務に従事。2021年退官し、慶応義塾大学でレファレンスサービス論を講じる傍ら、近代出版研究所を設立して同所長。

   「独学大全」の著者、読書猿さんが、「私が私淑する『探しものの魔法使い』が書いた司書の奥義を公開した本です」と勧めている。

国会図書館の「リサーチ・ナビ」がすごい!

   最初に、「次のような人に向いている」と小林さんは書いている。

・仕事でちょっとした調べ物をする人。編集者、翻訳家、校正者、記者。
・趣味で好きなことを調べている人。趣味人。在野研究者。
・理系的なことを調べるのではなく人文社会的なことを調べる人。
・調べ物をしたいのに図書館に出かけづらい人。

   2006年頃から日本でもGoogle検索だけで、そこそこ調べ物の答えが出るようになったという。それまで小林さんのようにレファレンスに従事する人は、「見当づけ」をしてから、おもむろに専門データベースや専門事典を引きにかかったという。

   日本語文献世界の全体感を得るために、仕事として、「新聞の全ページを広告も含めて全部読む」ということを毎朝やっていたそうだ。

   今は、まるでベテランの司書のようなGoogleというものが無課金で利用できるので、「使うにしくはない」と書いている。このようにアタリをつける作業は、Googleがやってくれるが、その先の専門的ツールをどう使うかを詳しく解説している。

   ネット上のいろいろなレファレンス・ツールの置き場がネットに集約されている。それも「国営で」と強調している。

   主要な目録・書誌類はほぼ、ネット情報源に移行。日本始まって以来、江戸時代までの全図書の総合目録「国書総目録」(岩波書店)は、いま「新日本古典籍総合データベース」(国文学研究資料館)に置き換わり、ネットで無料で見られるという。

   また、どんな場所(URL)にどんなデータベースがあるのかが分かるリンク集もある。国会図書館の「リサーチ・ナビ」というサイトに格納されている「人文リンク集」だ。名前が「人文」となっているが、社会科学、自然科学を除く全部的リンク集だという。ネット情報源サイトが700件以上採録されている。

限定的有名人を調べるには?

   本書のサブタイトルは「国会図書館秘伝のレファレンス・チップス」。さまざまなテクニック、ノウハウが披露されている。

   たとえば、有名人ではないが、限定的有名人(政治家、学者、タレント、地方名士など)を探す場合はこうする。Googleブックスで人名検索し、どの時代のどのジャンルかのアタリをつける。

   日外アソシエーツが刊行する「人物レファレンス事典」などが図書館に置かれ、日外アソシエーツが提供している契約データベース「WhoPlus」があるが、後者を個人で契約するわけにはいかず、国会図書館へ行っても利用できない。

   そこで紹介する裏ワザが「Web NDL Authopities(国立国会図書館典拠データ検索・提供サービス)」である。明治以降、およそ本を書いた人と本に書かれた人ならば誰でも全員、このデータベースに登録されているから、半有名人、限定的有名人の多くで最低限の情報がわかる。

   見たことも、聞いたこともない本を見つけるワザというのも興味深い。国会図書館の書誌データを家から検索できる。NDLオンラインで件名を引けば、未知の文献を見つけることができるはずだ。

   だが、実際に「件名:徳川家康 小説」で引いてみると、「ヘンテコなもの」が3件出てくるだけで、山岡荘八「徳川家康」すら出てこないという。なぜなら、文学作品、娯楽書は除外されているからだ。

   明治期からの新聞記事を「合理的に」ざっと調べる方法も参考になるだろう。「新聞集成」というレファレンス図書がある。新聞編年史の目次データを国会図書館のリサーチ・ナビ内目次データベースで検索できるようになった。

   「(元祖)新聞集成」の明治分のデジタルコレクション版がインターネット公開されているので、家にいながら明治の記事を読めるので便利だ。

   このほかに、新聞記事のスクラップブックをデジタル化した神戸大学附属図書館デジタルアーカイブには、明治末から1940年頃までの経済記事が収められており、実用的だと評価している。本文テキストと切り抜き版面が画像データでみられるので、便利だ。

   ネットでただで引ける新聞データベースがもう1つある。それは「官報」だ。

   昭和前期まで、「官報」には雑多な記事が載せられており、戦前の「官報」は「社説のない新聞紙」と考えていいそうだ。これは国会図書館のデジタルコレクションで見ることができる。

   家にいながらでも、相当な調べ物ができることを知った。将来は国会図書館の地下書庫に眠る何万もの明治以降の新聞雑誌などが、すべて撮影、画像化され、フルテキスト化されることになるだろう、と小林さんは期待している。(渡辺淳悦)

「調べる技術」 小林昌樹著
皓星社
2200円(税込)

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