限定的有名人を調べるには?
本書のサブタイトルは「国会図書館秘伝のレファレンス・チップス」。さまざまなテクニック、ノウハウが披露されている。
たとえば、有名人ではないが、限定的有名人(政治家、学者、タレント、地方名士など)を探す場合はこうする。Googleブックスで人名検索し、どの時代のどのジャンルかのアタリをつける。
日外アソシエーツが刊行する「人物レファレンス事典」などが図書館に置かれ、日外アソシエーツが提供している契約データベース「WhoPlus」があるが、後者を個人で契約するわけにはいかず、国会図書館へ行っても利用できない。
そこで紹介する裏ワザが「Web NDL Authopities(国立国会図書館典拠データ検索・提供サービス)」である。明治以降、およそ本を書いた人と本に書かれた人ならば誰でも全員、このデータベースに登録されているから、半有名人、限定的有名人の多くで最低限の情報がわかる。
見たことも、聞いたこともない本を見つけるワザというのも興味深い。国会図書館の書誌データを家から検索できる。NDLオンラインで件名を引けば、未知の文献を見つけることができるはずだ。
だが、実際に「件名:徳川家康 小説」で引いてみると、「ヘンテコなもの」が3件出てくるだけで、山岡荘八「徳川家康」すら出てこないという。なぜなら、文学作品、娯楽書は除外されているからだ。
明治期からの新聞記事を「合理的に」ざっと調べる方法も参考になるだろう。「新聞集成」というレファレンス図書がある。新聞編年史の目次データを国会図書館のリサーチ・ナビ内目次データベースで検索できるようになった。
「(元祖)新聞集成」の明治分のデジタルコレクション版がインターネット公開されているので、家にいながら明治の記事を読めるので便利だ。
このほかに、新聞記事のスクラップブックをデジタル化した神戸大学附属図書館デジタルアーカイブには、明治末から1940年頃までの経済記事が収められており、実用的だと評価している。本文テキストと切り抜き版面が画像データでみられるので、便利だ。
ネットでただで引ける新聞データベースがもう1つある。それは「官報」だ。
昭和前期まで、「官報」には雑多な記事が載せられており、戦前の「官報」は「社説のない新聞紙」と考えていいそうだ。これは国会図書館のデジタルコレクションで見ることができる。
家にいながらでも、相当な調べ物ができることを知った。将来は国会図書館の地下書庫に眠る何万もの明治以降の新聞雑誌などが、すべて撮影、画像化され、フルテキスト化されることになるだろう、と小林さんは期待している。(渡辺淳悦)
「調べる技術」
小林昌樹著
皓星社
2200円(税込)