最近、若い共働き夫婦の間で、家事と家計を割り勘・折半にする「別財布」「別会計」方式がトレンドになっているが、そこにトラブル勃発!
妻が、担当する保育園の送迎が大変ということで、貯金を多く持っている夫に「電チャリ(電動自転車)を買って」と頼むと、夫は「高すぎる、ママチャリで十分!」と断固拒否。そこで妻が「電チャリをねだるのは甘えでしょうか?」と訴える投稿をした。
回答者の間では「電チャリは贅沢品か、必需品か」といった賛否と同時に、イマドキ共働き夫婦の「2つの財布」にも疑問が噴出。「今から電チャリ1台の購入費でもめて、将来の子どもの教育費どうする?」というわけだ。
専門家に聞いた。
家計運営の手段(How)と、何をするか目的(What)が大切
<「イマドキ共働き夫婦に多い「家計割り勘」...保育園送迎用電チャリ、どっちが買うかで大論争!「今からそれで、将来の教育費どうする?」...専門家に聞いた(1)>および<「イマドキ共働き夫婦に多い「家計割り勘」...保育園送迎用電チャリ、どっちが買うかで大論争!「今からそれで、将来の教育費どうする?」...専門家に聞いた(2)>の続きです。
――前回記事(2)の最後、「投稿者さんと夫の見解相違の原因は、財布の分け方よりも、もっと根本的なところにあるのではないでしょうか」とご指摘されたのが、まず最初に言われた「電動自転車の問題ではない」ということですね。
川上敬太郎さん「はい。『夫婦別財布』とか『夫婦の財布を1つにする』などは、家計を運営するための手段(How)です。しかし、Howを考える前にまずハッキリさせておく必要があるのは、何を(What)するかという目的です。
Whatが曖昧なままHowについて話しあっても、お互いの目的が一致していないのですからかみ合うはずがありません。
電動自転車を購入する目的は、『投稿者さんの送迎負担を軽減すること』です。それがWhatになります。電動自転車を購入するのであれば、まずWhatである『送迎負担を軽減すること』が、ご夫婦の間で合意できていなければなりません。そこが合意できてはじめて、Whatを解決するための手段として何が最善かというHowを話し合うことができます。
その結果、電動自転車を購入することが最善だという判断になれば、では、費用はどこから捻出するかという次のHowを考えることになります。ご夫婦どちらの財布から購入するかという話は、この段階で考えるべきものです」
「送迎負担を軽くする」必要性が夫婦の間で合意できていない状況?
――なるほど。女性の場合、最初から電動自転車ありきでしたね。
川上敬太郎さん「そもそも『送迎負担を軽減すること』の必要性がご夫婦の間で合意できていないように感じます。もし、特に夫が必要ないと考えているのであれば、まず話し合う必要があります。
あるいは、必要であることは合意できているのであれば、続いてその解決策として最初のHowである『電動自転車の購入』が最善なのかどうかを話し合う必要があります。
そこが合意できてようやく、『費用はどこから捻出するか』という次のHowを話し合うことになります。『夫婦別財布』がいいのか悪いのかの前に、投稿者さんと夫とが、何に合意できていて何に合意できていないのかを確認することのほうが先なのではないでしょうか」
「第3の財布」を含め、家計の工夫をいろいろ知ると勉強になる
――現在、共働き夫婦の間で「別財布」や「別会計」がトレンドになっていますが、どう思いますか。
川上敬太郎さん「家庭の財布をどのように運営していくかのシステムは、ご夫婦それぞれの働き方が多様化していくにつれ、最適なパターンも多様化していくのだと思います。
どれか1つが正解ということはないはずです。また、いま最適なシステムが今後もずっと最適であり続けるとは限りません。そのつど変化していくのだと思います。
そのように、最適なシステムが移り変わることを考えると、『第3の財布』を含め、財布の分け方や会計の仕方について、さまざまなパターンを知っておいて損はないのではないでしょうか」
夫は子どもの送迎のリアルなイメージができていない?
――川上さんなら、ズバリ、投稿者にはどうアドバイスをしますか? 電動自転車をあきらめますか? それとも自分で買いますか? また、今後の家計はどうしたらよいと思いますか?
川上敬太郎さん「高額なだけに、お金を貯めてご自身で購入するというのも手なのだと思います。しかしその前に、夫と『送迎負担を軽減すること』の必要性についてしっかりと話し合う必要があると思います。もし夫が必要性を感じないというのであれば、感情的に反発はあると思いますが、まずはその理由に耳を傾けてみることです。
ひょっとすると、自分は送迎を担当しないので、夫は負担感をリアルにイメージできていないのかもしれません。あるいは逆に、投稿者さんが思うほどの負担はないだろうと考える何らかの根拠があるのかもしれません。
それらは、何回もお互いの考えを聞き合うことで見えてくるものです。そして、考えが理解できれば、お互いが納得できる解決策も見つけやすくなると思います。
必要性について合意しないまま「費用はどこから捻出するか」を話し合っても、ご夫婦の会話がかみ合うことはないはずです」
自分の意見を押しつけ合う親を子どもは見ている
――川上さんなら、ズバリ、投稿者の夫にどうアドバイスをしますか? 今後の家計と家事分担をどうしたらよいと思いますか?
川上敬太郎さん「もし、夫が送迎負担を軽減することの必要性については感じているものの、電動自転車の購入が最善策ではないと考えるのならば、『高すぎる・電動である必要がない』と頭ごなしに否定するのではなく、他の解決方法を奥さんと一緒に考えてみていただきたいと思います。
あるいはもし、送迎負担を軽減することの必要性を感じていないのだとしたら、その理由を奥さんに説明すると同時に、本当に必要がないのかを検証してみていただきたい。男性と女性とでは体力が異なるため、自転車を漕ぐ負担感も異なるものです。
――夫も実際に送迎してみると、その大変さがわかるはずだということですね。
川上敬太郎さん「少なくとも投稿内容からは、投稿者さんからも夫からも、お互いを思いやる気持ちが感じられないのがとても気になりました。夫は、投稿者さんの送迎負担を軽減してあげたいとは思わないのでしょうか。
一方で投稿者さんも、夫の理解を得たり、夫の考えを理解しようと努めたりする前に、電動自転車を購入することを前提に話を持ちかけてはいないでしょうか。
これからもご夫婦の間には、たくさん意見相違が発生することと思います。そのつど、自分の意見を押しつけ合っていては、お互いを傷つけあいかねません。どちらの財布から電動自転車を買うか、という問題の前に、お互いを理解しようと努めているように感じないことが最大の問題なのではないかと思います。
保育園に4月から入園するお子さんは、そんなお二人の姿を見ながら育ちます。お互いを理解し合おうと努める両親と、自分の意見を押しつけ合う両親。お子さんに見せたいのは、どちらの姿でしょうか?
投稿者さんは夫を『私より優秀で、私より稼いでいる』と書かれています。そんな夫は、朝が苦手な自分に代わって色んなことを助けてくれていると、投稿者さんに心の中で感謝しているかもしれません。意見が異なることがあっても、最大限お互いを理解しようと努める。そんなご両親の姿を、ぜひお子さんに見せてあげていただきたいと思います」
(福田和郎)