社会人が大学院に行って、失敗しないために...

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   近年は、社会人が大学院に進学することも珍しくない。政府が社会人のリカレント教育を進めているからだ。だが、学問作法がわからず、うまくいかないケースも少なくないという。

   本書「社会人のための文系大学院の学び方」(青弓社)は、社会人院生が陥りがちな「落とし穴」を指摘し、ゴールにたどり着く方法を指南している。

「社会人のための文系大学院の学び方」(齋藤早苗著)青弓社

   著者の齋藤早苗さんは、徳島大学卒業後に民間企業や職能団体などで約20年間働いたあと、一橋大学大学院社会学研究科修士課程に2年間在籍し、修了後は大学院受験予備校で小論文の講師を務めた。さらに2018年、東京大学大学院総合文化研究科修士課程を修了。著書に「男性育休の困難」がある。

大学院はカルチャーセンターではない

   齋藤さんが見てきた社会人院生には、以下のような特徴があったという。

・大学院を、カルチャーセンターや公開講座の延長線上だと考えている。
・自分の職業経験と学問上の議論を混同してしまう。
・社会科学の調査方法を学ばず、我流で調査する。
・自分が思い描く理想論に向かって研究しようとする。

   このようにふるまうことで、学卒の大学院生から距離を置かれたり、教員から見放されてしまったりして、結果的に大学生のレポート程度の修士論文を書いて修了していく人もいるという。

   そもそも大学院とは何をするところか、から説明している。

   社会人院生が大学院に進学するときの「もっと勉強したいと思ったから」というときの「勉強」とは、これまでの学びの延長線上にある、と指摘する。それは大学までの「授けられる学び」だ。

   これに対して、大学院での学びは「自ら動いて身につける学び」である点が大きく異なる。修士論文は学生だけの作品であり、教えてもらうのではなく、「自分で調べる」スタンスで臨むことが求められるのだ。

   また、「仕事世界」と「学問世界」の違いもある。

   仕事では、「いま存在しないもの、いま存在しないサービス」を新たに生み出すために、「いまできないこと」をクリアしていこうとする行動様式がベースになっている。

   一方、学問の世界では、いま、問題になっていることの実情をつかみ、そうした問題が生じるメカニズムを見つけることに主眼が置かれている。

   したがって、「未来に視点をおく」という見方をいったん封印し、「現在」や「過去」と向き合う必要がある、と指摘する。

   大学院での2年間をどのように過ごすべきか。社会人院生の最初の難関は「仲間を作る」ことだという。学部から上がってきた学生は、教授たちの正確や指導の特徴をよく知っているので、教わることも多い。

   年齢は違っても、フラットな姿勢で付き合うことが大切だという。

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