総資産がスイスGDPの7割超、スイス国立銀行には重荷すぎる
同欄では、東洋大学国際学部の野崎浩成教授(金融、ファイナンス専攻)が、スイスの金融事情を説明した。
「クレディ・スイス社は金融安定理事会が指定するG-SIB(Global Systemically Important Bank, グローバルなシステム上重要な銀行、最新リストで30社)です。G-SIBは通常より高い自己資本比率が求められ、SVBなどと比較ができない財務基盤を有しています」
と指摘。つづけて、
「しかし、(日本の)長銀等のケースからも、市場が危機を深刻化させる力を有していることも確か。単独で生き残るか、再編に向かうか予断は持てませんが、最悪の事態でも国が救済しにくい点は認識すべきです。大銀行は救済されるというモラルハザード排除のため、G-SIBはRRP(再生破綻処理計画)策定を求められています。相場の重石になる懸念は続きます」
と、スイス国立銀行の救済姿勢に疑問を示した。
また、同欄では日本経済新聞社特任編集委員の滝田洋一記者も、けた外れに巨大なクレディ・スイス社の救済の難しさを解説し、
「1スイスフラン(約143円)台の最安値。この株価水準がすべてを物語っています。必要なら流動性を供与する、とスイス中銀は緊急声明を発表しましたが、クレディ・スイスへの市場の疑心暗鬼はいまや極限に。流動性を供与するといっても、市場は資本が大丈夫なのかと懸念しているのですから、預金流出が止まらず、焼け石に水となりかねません」
と、公費が無駄になると指摘した。
「ならば公的資本の注入による国有化で打開できるかというと、規模の問題が大きな障害になります。クレディ・スイスは経営規模を圧縮中とはいえ、2022年末の総資産は約5700億ドル。名目GDP(国内総生産)が約8000億ドルのスイスという国家にとって、丸ごと救済するには荷が重すぎる存在なのです」
GDPの7割以上を占める超巨大企業を、国民の痛みなしでどうやって救済するのか、というわけだ。
一方、ヤフーニュースコメント欄では、日本総合研究所上席主任研究員の石川智久氏が、
「ひとまず、今回のスイス中銀の支援で一息つけますが、単なる資金流出ではなく、本業が苦しい状況では、リストラを急がないと再び経営危機が起きるリスクがあります。さらに、当面、第2、第3のクレディ・スイスを物色する動きが市場に出てくるとみられ、国際金融市場は不透明感が強い状況が続くとみられます」
と指摘。そのうえで、
「リーマンショックの反省から、金融危機を発生させないような規制や枠組みはできており、過度な警戒は不要であるものの、市場の不安の早期解消のためには、こうした枠組みの高度化を加速する必要がありますし、各国の政府・中銀が協力する姿勢を示すことも重要です」
と国際協力を求めた。