欧州に危機の火種あり、疑心暗鬼が市場に広がると...
こうした事態をエコノミストはどうみているのか。
日本経済新聞オンライン版(3月15日付)「クレディ・スイス株が急落 中銀に支援要請、FT報道」という記事に付くThink欄の「ひと口解説コーナー」では、日本経済新聞社上級論説委員・編集委員の菅野幹雄記者が、
「クレディoスイスの経営不安説はいまに始まった話ではないですが、欧州の当局者はその都度、金融システムは盤石だと、噂をはねのけてきました。SVB(シリコンバレー・バンク)の破綻で再び脆弱とみられる銀行への風当たりが強くなるなか、よりによって筆頭株主がいま、後ろ向きの発言をするとは」
と驚きを隠さなかった。そして、
「情報開示に対する疑念を払拭するのは、かなり難易度の高い話です。欧州中央銀行(ECB)は明日(日本時間3月16日夜)、金融政策を決める理事会を開きます。もちろんユーロ圏の外にあるスイスの大手銀行の話ですが、市場の不安に対してクリアな説明ができなければ、疑心暗鬼は域内にも広がります。インフレより金融不安への対応が問われる局面かもしれません」
と、指摘した。
欧州中央銀行は、すでに0.5%の追加利上げを示唆しているが、市場には0.25%の利上げ、あるいは利上げ見送りの観測も出始めた。
日本経済新聞オンライン版(3月16日付)「欧米株が下落、クレディ・スイス24%安 信用不安懸念」という記事に付くThink欄の「ひと口解説コーナー」では、みずほ証券チーフマーケットエコノミストの上野泰也氏が、
「金融面の不安心理がグローバルに増大中。証券化商品経由で危機が『伝染』した2007~08年頃の金融危機と異なり、破綻した2つの米銀の問題は大西洋を越えはしないだろうと筆者(注:上野泰也氏)はみていた。だが、欧州にも危機の火種ありと、市場はみるようになっている」
と、こちらもビックリの様子。そして、
「金融システムにまつわる不安心理には、いつどの程度まで拡大するかを事前に見通すことができない怖さがある。マネーは経済の血液で、金融システムは経済の循環器系。循環器系に不安が生じている時に身体への負荷をさらに重くするのは、正しい対処法ではない。その意味で、金融市場からFRBやECBは『この状況で本当に利上げができるのか』という声が出るのは、きわめて自然なことである」
と、欧米の2つの中央銀行の利上げ姿勢に疑問を投げかけた。