いまや「DX(デジタルトランスフォーメーション)」が話題にならない日はない。
企業がビッグデータやAI(人工知能)、IoT(モノのインターネット)をはじめとするデジタル技術を活用して、業務プロセスの改善や商品・サービス、ビジネスモデルを変革するとともに、組織や企業風土、文化をも改革していくDX。ところが、中小企業の経営者の3人に1人が「DXをよく知らない」ことがわかった。
GreenとDigitalを活用した中小企業の変革を目指すフォーバルGDXリサーチ研究所(東京都渋谷区)が、1619人の中小企業の経営者に「中小企業のDXに関する実態調査」を実施。2023年3月6日に発表した。
人材不足などの厳しい経営状況もあって、自身の会社が「DXに取り組めていない」と答えた経営者は49.2%と、約半数にのぼっている。
DXへの認知、意識が低い実態が明らかに...
調査によると、中小企業の経営者に「DXとは何か知っているか」と聞いたところ、「聞いたことはあるが、よく知らない」(21.9%)と「知らない」(8.2%)を合わせた30.1%の人が、DXについて「よく知らない」と答えた。【図1参照】
また、49.4%と約半数の人が「知っているが、説明できるほどではない」と回答。デジタル庁の発足やDX投資促進税制の導入などDX化への動きが加速するなか、中小企業ではまだDXについての理解が十分でなく、DXへの認知、意識が低い実態が明らかになった。
フォーバルGDXリサーチ研究所は、
「(DXへの)有効的な施策を実行するのは困難な状況であると推察される」
としている。
次いで、「あなたの企業はDXに取り組めていますか?」と質問したところ、50.8%と約半数が「取り組めている」と回答。そのうえで、「取り組めている」と答えた経営者に、取り組みのレベルを、下記のステップ1から3に分けて聞いたところ、60.6%の人がステップ1の「意識改革」にとどまっていることがわかった。
DXによって、実務の課題解決にまで到達できている中小企業はごく少数であると推察される。【図2参照】
人材の教育から、会社全体を「変革」へ
さらに、中小企業の経営者に「あなたの企業全体のDXに取り組みレベルを上げるために、現在足りていないと思うもの」(複数回答)を聞くと、第1位が「従業員のリスキリング」で52.9%、第2位が「経営陣のリスキリング」の52.0%と、「リスキリング」がトップ2を占めた。第3位は「DX推進のための人材確保・採用」で43.5%だった。【図3参照】
「リスキリング」とは、新しい職業に就くために、あるいは今の職業で必要とされるスキルの大幅な変化に適応するために、必要なスキルを獲得すること・させることで、近年は特にデジタル化に対して使われる(出典:経済産業省「DX時代の人材戦略と世界の潮流」)。
政府は、2021年11月にデジタル化におけるデジタル人材の育成に対して3年間で4000億円を投じると発表。また、22年10月には今後5年間で1兆円を「リスキリング」に投じると発表するなど注力しはじめている。
ただ、中小企業では社員が少ないため、ITに精通した人材が少なく、DX化を推進するためには経営陣、社員とも、まずは「自社の課題は何か」「どのようなIT手段で解決できるか」を学ぶことが必要になる。同研究所は、「そのため、まずはリスキリングで、DX化の進め方を学ぶ必要がある」と指摘。人材の教育から、会社全体を「変革」していくべきという。
中小企業のDX推進について、平良学所長は、
「中小企業の経営者が実践的にDXを進めていくためには、自社の現在の経営を可視化し、データとデジタル技術を活用して、業務分析や各種データ資産を洗い出し、経営方針や組織体制の再構築が必要となります。また、デジタル社会ではコンプライアンス上からも、データや情報を適切に取り扱う義務が生じるため、個人情報保護法や情報処理促進法などを順守することが求められます。アナログのビジネスモデルをデジタル社会に対応したフォーメーションに置き換えることで『企業経営をトランスフォーメーション』して、競争上の優位性を確立することが重要です」
とコメントしている。
なお、調査は全国の中小企業の経営者を対象に、2023年1月10日~2月10日に実施した。有効回答数は1619人。