人材の教育から、会社全体を「変革」へ
さらに、中小企業の経営者に「あなたの企業全体のDXに取り組みレベルを上げるために、現在足りていないと思うもの」(複数回答)を聞くと、第1位が「従業員のリスキリング」で52.9%、第2位が「経営陣のリスキリング」の52.0%と、「リスキリング」がトップ2を占めた。第3位は「DX推進のための人材確保・採用」で43.5%だった。【図3参照】
「リスキリング」とは、新しい職業に就くために、あるいは今の職業で必要とされるスキルの大幅な変化に適応するために、必要なスキルを獲得すること・させることで、近年は特にデジタル化に対して使われる(出典:経済産業省「DX時代の人材戦略と世界の潮流」)。
政府は、2021年11月にデジタル化におけるデジタル人材の育成に対して3年間で4000億円を投じると発表。また、22年10月には今後5年間で1兆円を「リスキリング」に投じると発表するなど注力しはじめている。
ただ、中小企業では社員が少ないため、ITに精通した人材が少なく、DX化を推進するためには経営陣、社員とも、まずは「自社の課題は何か」「どのようなIT手段で解決できるか」を学ぶことが必要になる。同研究所は、「そのため、まずはリスキリングで、DX化の進め方を学ぶ必要がある」と指摘。人材の教育から、会社全体を「変革」していくべきという。
中小企業のDX推進について、平良学所長は、
「中小企業の経営者が実践的にDXを進めていくためには、自社の現在の経営を可視化し、データとデジタル技術を活用して、業務分析や各種データ資産を洗い出し、経営方針や組織体制の再構築が必要となります。また、デジタル社会ではコンプライアンス上からも、データや情報を適切に取り扱う義務が生じるため、個人情報保護法や情報処理促進法などを順守することが求められます。アナログのビジネスモデルをデジタル社会に対応したフォーメーションに置き換えることで『企業経営をトランスフォーメーション』して、競争上の優位性を確立することが重要です」
とコメントしている。
なお、調査は全国の中小企業の経営者を対象に、2023年1月10日~2月10日に実施した。有効回答数は1619人。