シリーズ連載中の「俯瞰して見る日本」。第3回は、所得額や貯蓄額、消費者物価から家計関連を取り上げてみる。都道府県によって、所得額や貯蓄額にどの程度格差があるのか。また、物価水準が違うのかを見てみる。
1人当たりの所得額...1位東京都、2位愛知県と大きな開き
2018年度の1人当たり所得額は、東京都が圧倒的に多く、都道府県で唯一500万円台となっている。2位の愛知県の372万円とは約170万円の開きがある。また、最も少ない沖縄県の239万円とは2倍以上の格差がある。
1人当たり所得額の上位を見ると、大都市を抱える都道府県が中心なのかと思えば、人口の上位10に入っているのは東京都、神奈川県、愛知県、静岡県の1都3県のみだ。同様に、下位10に入っているところで、人口の下位10に入っているのも、高知県、島根県、鳥取県の3県のみ。
したがって、必ずしも人口数の多さ(経済圏の大きさ)が所得額に比例しているわけではなさそうだ。ただ、所得額の下位10は総じて、少子高齢化により人口減少が進んでいる傾向が強い。(表1)
もっとも、1人当たり所得額の全国平均は331万円で、平均額以上なのは7位の滋賀県までで、それ以下はすべて平均以下ということになる。
1人当たりの貯蓄額...全国平均692万円を上回るのは15位まで
一方、2020年度の1人当たり銀行預金額と1人当たり郵便貯金額を足した1人当たり貯蓄額でも、東京都が圧倒的に多く、2492万円となっている。2位の大阪府の1057万円の2倍以上となっており、最も少ない沖縄県の459万円の5倍以上の貯蓄額だ。(表2)
全国平均は692万円で、これを上回っているのは15位の福井県の699万円までで、それ以下はすべて平均以下ということになる。所得額、貯蓄額とも、突出している東京都が平均値を引き上げていることがわかる。
さて、所得と貯蓄の関係を見ると、所得額上位10で貯蓄額上位10に入っているのは、東京都、愛知県、富山県の1都2県のみ。一方で、所得額下位10で貯蓄額下位10に入っているのは、沖縄県、宮崎県、青森県、鹿児島県、高知県と半数の5県ある。
所得の多さは貯蓄の多さに必ずしもつながっていない一方で、所得の少なさ・貯蓄の少なさに影響を与えていると考えられそうだ。そんな中で、奈良県と愛媛県は、所得額が下位10に入っていながら、貯蓄額は上位10に入っており、両県の県民性が現れている。
「東京は物価が高い」というのは、国民の共通認識だろう。たしかに、2021年度の都道府県別の消費者物価指数(総合指数)を見ると、東京都が104.5で1位となっている。ただ、全国平均の100を上回っているのは8位の石川県までで、それ以外の府県は平均以下の物価指数ということになる。(表3)
食料物価...高いのは福井県・沖縄県、安いのは長野県
所得と物価の関係性を見ると、所得が上位10に入っていて、物価が上位10に入っているのは東京都、滋賀県、神奈川県の1都2県。所得が下位10に入っていて、物価が下位10に入っているのも宮崎県、鹿児島県、奈良県と3県である。群馬県のように、所得では上位10に入っていながら、物価では下位10に入っているところもあり、所得と物価に強い関連性は見られない。
物価で気になるのは、食料と住居だろう。そこで、2021年度の食料の消費者物価指数を見ると、意外にも最も高いのは福井県と沖縄県の103.9。次いで、石川県の103.4、東京都は4位の102.8だ。食料だけでいえば、福井県、沖縄県、石川県の方が、東京都よりも高いということになる。
一方、食料の物価が安い1位は長野県、次いで、宮崎県となっている。だが、大都市を抱える府県は食料が高いのかといえば、下位10には福岡県や愛知県が入っており、人口の多さが食料の物価に影響しているとはいえなさそうだ。(表4)
ただ、住居の消費者物価指数は、明らかに人口数の影響を受けている。
2021年度の上位10は軒並み人口数の多い都道県が入っている。全国平均の100を超えているのは、東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県、京都府の1都1府3県のみで、それ以外は平均を下回っている。東京近郊の不動産価格がいかに高いのかがわかる。一方、下位10には少子高齢化により過疎化が進む県が並んでいる。(表5)
こうして家計関連を取り上げて見ると、所得額、貯蓄額、さらには物価を引き上げているのは東京都であることが鮮明になり、東京都の影響がいかに大きいかが明らかだ。
次回は税金と福祉に焦点を当ててみたい。【第4回につづく】