どうするFRB? インフレ退治か、銀行連鎖破綻か...しぶとい消費者物価指数 エコノミストが指摘「米景気悪化から世界金融危機のリスクも」

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今後の3つのステージ、最後に来る「三重苦」とは

   世界の金融危機に発展するリスクをはらむ今後の展開を、3つのステージで説明するのが、野村総合研究所のエグゼクティブ・エコノミストの木内登英氏だ。

   木内氏はリポート「景気が悪化すれば米国信用不安は次のステージに」(3月15日付)のなかで、SVBの破綻の背景の裏には、FRBによる急速な利上げによって長短金利差が逆転する「逆イールド」が生じて、米国の銀行は軒並み収益が悪化している、と指摘する。

   金利と債券の価格はシーソー関係にあり、金利が上昇すれば銀行が保有する債券の価格が下落するからだ。

   そして、米国と長期金利と短期金利のサイクルのグラフと、今後の3つのステージを表わす【図表3】を示しながら、こう説明する。

(図表3)米SVB破綻前後の米FF金利予想値2時点比較(野村総合研究所の作成)
(図表3)米SVB破綻前後の米FF金利予想値2時点比較(野村総合研究所の作成)
「(FRBの利上げの結果)銀行が保有する国債、政府機関債などの債券に大きな含み損が発生してしまった。そうした債券を売却すれば実現損となり、含み損を抱えたままでも大手行では規制上の自己資本が毀損される、などの財務上の問題が発生したのである。この局面を【第1ステージ】としよう」
「やがて短期金利の急速な引き上げによって、長短金利差は縮小し、さらに長短金利が逆転する逆イールドが生じる。短期で資金を調達し、貸出や長期債への投資など長期で運用するビジネスモデルを持つ銀行にとって、逆イールドは利鞘を縮小させ、資金収益を悪化させる」
「【第1ステージ】から銀行の財務環境が一段と厳しさを増すのが、この【第2ステージ】である。現在は、この【第2ステージ】にあると考えられる。このように、長期金利上昇による債券損失の拡大と逆イールドによる資金収益の悪化のいわば『二重苦』が、銀行全体の財務を圧迫する局面で今回のSVB破綻が生じたのである」
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シリコンバレーの中心地、サンノゼの市街地

   SVBにとって「二重苦」はとりわけ大きかったが、苦しみはすべての米国の銀行に共通している。今後はこれまでの大幅値上げによって、米国経済が悪化するという「三重苦」が加わる【第2ステージ】が待っているというのだ【再び図表3】。

「局面がこの【第3ステージ】に進めば、信用不安、市場の動揺の第2弾が生じる可能性があるのではないか。金融市場が懸念しているのは、経済、金融のショックが生じる際に、リーマンショックやコロナショックでFRBが見せたように、政策金利を一気にゼロにまで引き下げるといった積極的な措置を、今回は見せないということだろう」

   それは、歴史的なインフレを定着させないという至上命題がFRBにあるからだ。木内氏はこう結んでいる。

「【第3ステージ】に至れば、米国の銀行不安と証券市場の動揺が重なる、新たな信用不安となり、それがグローバルに波及していく可能性が考えられる。米国経済の動向を注視しておく必要があるだろう」

(福田和郎)

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