「猫っ可愛がり」という言葉は、母猫が子猫を溺愛して甘やかす様子から生まれたそうだが、いまや、ニャンにメロメロな人間を指す言葉になった。
しかし、「かわいい」だけではなく「お金がかかる」という現実も忘れてはいけない。生涯、一緒に暮らすと、けっこうな出費になる。
そんななか、保険代理店業務の「R&C」(東京都港区)が運営するファイナンス情報サイト「R&Cマガジン」が2023年2月20日、「猫の一生にかかるお金はいくら? 食費や医療費など生涯にかかる飼育費用を3000人調査」を発表した。
それによると、猫の一生にかかる費用は約264万円だという。これって高い?安い?
猫の食費、毎月1万円以上もかけるのは...?
「R&Cマガジン」の調査は、猫を飼っている3000人にアンケートを行ない、食費や雑費、医療費など、ひと月単位でかかるさまざまな費用を聞いている。
猫の一生でかかる費用を計算するあたり、猫の平均寿命を15.62歳とした。これは、一般社団法人ペットフード協会が発表した「2022年全国犬猫飼育実態調査」の数字をもとにしている。
その結果、子猫の時から老猫を看取るまで、猫の一生にかかる費用の合計の平均は264万6956円とわかった【図表1】。
まず基本となるのが食事、トイレ周り、消耗品の費用など「日常的にかかるお金」だ。最も高額なのが食事代で、主食・おやつはひと月3515円。一生になると64万4885円かかる。毎月の食費に注目すると、1001~3500円の範囲内に半数が集中するが、5000円以上という人も約20%いる。
1万円以上という人が3.5%いるが、これは毎日ビフテキを食べさせているわけではないだろう。老猫が特定の病気にかかったりすると、療法食が必要になる。5000円以上の猫には、そういった事情があるのかもしれない。
猫砂、消臭トイレシート、排泄物を入れる袋などトイレ周りの費用も日常的にかかる。ひと月1970円。約60%が2000円以内に収めている。とはいえ、一生で考えると36万936円もかかるから、馬鹿にできない額だ。猫砂は猫によって好みが分かれやすく、お気に入りの猫砂でしか排泄してくれないケースが少なくない。安い猫砂を気に入ってくれることを祈りたいものだ。
爪とぎ、シャンプー、おもちゃなどの消耗品は、ひと月1239円。一生だと22万4627円。ひと月1000円以内におさめる人が60%近くを占める。しかし、4000円以上も10%近くおり、いったい何を買ってあげているのだろうか。
以上、これら「日常的にかかるお金」を合計すると、ひと月6724円、一生になると123万448円にもなる【図表1】
医療費は生涯46万円だが、ペット保険加入者は24%
一方、「時々かかるお金」の代表的なケースが病気やケガによる医療費だ。1年でかかる医療費を聞くと、平均は2万9994円で、一生では46万8519円にもなる【図表2】。ペット保険に入っていないと、全額飼い主負担になる。
ちなみに、ペット保険に加入している人は24%。保険料はひと月2912円、一生にすると55万3891円になる。未加入が76%もいるが、この数字をどうとらえるかは難しいところだ。病気やケガの重さによっては、数万~数十万円かかる可能性がある一方で、保険は不要と考える人が多いのは事実のようだ。
アンケートでは、この1年で20万円以上かかった人が3.5%いる。万が一に備えて貯金をしておく、ペット保険を検討するなどの対策も必要だろう。
動物病院で接種する猫のワクチンはどれくらいお金がかかるのか。1年に1度が多く、費用は3001~6000円がボリュームゾーン。頻度と費用から、一生でかかるお金を算出すると6万7856円。注目ポイントは、半数がワクチン接種をしていないことだ。
定期的な健康診断についても、「受ける派」が約40%しかいなくて、頻度は「1年に1度」が多い。一生でかかるお金は11万2746円。病気の早期発見につながると考えれば、納得できる金額といえるだろう。健康診断もワクチン同様、必要性に対する考えがはっきり分かれている。
医療関係の費用と並んで、「ときどきかかるお金」の代表は冷暖房費だ。近年は異常気象によって夏の気温上昇が著しく、飼い主が外出している時でも猫のためにエアコンを使う必要がある。そうした電気代から冷房費用を算出すると、ひと月で5592円(7~9月のみ使用)。一生で26万2038円。「猫のために一日中つけっぱなし状態」という家庭もある。
また、猫は寒さに弱い動物なので暖房も欠かせない。暖房のほうはエアコン、床暖房、こたつ、猫用ホットカーペットと種類は多岐にわたる。こちらもあれこれ計算して、ひと月6295円(12?3月のみ使用)、一生で39万3363円という数字が出た。冷房より高くつく点が興味深い。
こうして「ときどきかかるお金」の総額を計算すると、一生で130万4422円になる。「日常的にかかるお金」(123万448円)より多いのだ【再び図表1】。
ペットショップ購入は平均18万円、70万円以上も
さて、3番目に重要なのが「最初にかかるお金」(初期費用)だ。まず猫を迎える時に、猫タワー、食器、トイレ本体などの基本グッズが必要になる。この平均が2万3152円。3万円以内に収めている人が約74%だった。必須ではないが、外出先から猫を監視できるペットカメラ、高機能トイレ、空気清浄機などを買えばさらに費用がかかるだろう。
また、去勢手術(オス)、不妊手術(メス)の費用が1万9076円。不妊手術は去勢手術より費用が高いのが一般的だ。ただし、保護猫団体や知人から譲渡を受けた場合は、すでに手術済みのケースもあり、飼い主の負担はない。
さらに、出会ったきっかけによっては高い額がかかる。保護猫団体や保健所、知人などから「譲渡」を受けた人がもっとも多く、39.4%。地域猫を保護した人が36.7%、ペットショップやブリーダーからの「購入」は22.5%だ【図表3】。購入にかかった費用は、平均18万5201円。
購入の場合は5万円?20万円がボリュームゾーンだが、それ以上という回答も目立つ。品種や購入先によって金額は大きく変わるようだ。また、保護猫団体によってはお金を支払うところもある。
こうした「最初にかかるお金」の総額は平均112万86円だった。
行方不明で、猫探偵依頼費が40万円...でも、高くない?!
さて、猫を飼ったことのある人なら経験があるだろうが、次々と臨時出費に見舞われるもの。猫はさまざまなハプニングを起こして、飼い主を困らせる。特に頭が痛いのは、「大事な物を壊された」ために、甚大な出費を余儀なくされるケースだ。
【図表4】は飼い主から寄せられた体験談の数々。
「羽毛布団に複数回吐かれてしまい、買い替えた」(出費12万円) 「買ってまもない55インチのテレビを壊された」(19万円) 「高級グラスを割られた」(20万円)
そして、挙句の果ては、
「迷子になったので猫探偵に依頼。チラシ印刷なども業者に頼んだ」
という事態になり、出費は40万円も!
しかし、無事に帰ってくれば、お金なんかどうでもよくなるもの。そう、猫の一生にいくらかかろうが、お金では決して買えない「幸せ」をもらっているのだから。
調査は、2022年12月26日~12月27日の期間、2021年以前より猫を飼っている全国の20~60代の男女3000人にインターネットを通じてアンケートを行なった。(福田和郎)
(※記事内容は公開当時の情報に基づくものです。)