アパレル大手のオンワードホールディングス(HD)の株価が2023年3月7日の東京株式市場で一時、前日終値比29円(8.5%)高の370円まで上昇し、昨年来高値を更新した。
前日に発表した2月の既存店売上高(Eコマース含む)が前年同月比17.5%増と好調だった。これにより、2023年2月期のすべての月次の既存店売上高が前年同月超えを記録したことから、着実な業績回復を確かめられたとして投資家の買いが入った。
アパレル各社は百貨店とともに長期的な低迷が続いているが、ここへきて底打ちの兆しも見えているといえそうだ。
ウェブ掲載商品をリアル店舗で試着できるサービス「クリック&トライ」、販売拡大に貢献
まずは、月次データを詳しくみていこう。オンワード樫山など連結9子会社によるリアル店舗での売り上げとEコマースの売り上げから構成している。店舗、Eコマースともに前年割れした月はなかった。
足元では店舗の好調さが目立ち、1月は22.5%増、2月は34.7%増だった。オンワードHDは、前年に実施された行動制限がなく、実店舗への来客数が大幅に増加したことが売り上げ増につながっていると説明している。2月の実店舗では、全国的に気温が上昇したこともあり、ワンピースやブラウス、スプリングコートなどの春物商品の販売が伸びた。
売り上げの好調は決算にも反映している。
2022年3~11月期連結決算は、売上高が前期比4.9%増の1303億円、営業損益は43億円の黒字(前年同期は9億円の赤字)、最終利益は66.3%減の27億円だった。円安や原材料高騰という逆風はあるものの、客足が戻っていることで業績は回復基調だ。
公式オンラインストア掲載の商品をリアル店舗に取り寄せて、試着したうえで購入できる「クリック&トライ」と呼ぶサービスの利用者が高水準で推移したことも、リアル店舗での販売拡大に貢献した。
業績予想通りとなれば、4年ぶり営業黒字転換
これまでの業績に目を向けると、コロナ禍も影響して、2022年2月期まで3期連続で営業赤字だった。だが、業績予想通りに2023年2月期に50億円の連結営業黒字となれば、4年ぶりの黒字転換となる。
最終利益が大幅減益なのは、前期に200億円を超える不動産売却益を計上した反動だ。2023年2月期の連結最終利益の業績予想は、前期比69.7%減の26億円。
足元の2月までの月次データが好調なことで、2023年2月期連結決算は今の予想より上ぶれする可能性もある。さらに、本格的なウィズコロナ時代に入る2024年2月期への期待も投資家の間に高まっている。(ジャーナリスト 済田経夫)