日本経済、先行きに暗雲? 1~3月企業景気予測が悪化、エコノミストが指摘「世界経済の悪化で、製造業の生産や輸出が減速...」

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   世界的に景気後退の危機が迫るなか、日本経済の先行きに黄色信号を灯すような経済指標がまた発表された。

   2023年3月13日、内閣府と財務省が公表した1~3月の法人企業景気予測調査だ。大企業の全産業の景況判断指数(BSI)がマイナス3.0と、3四半期ぶりにマイナスとなった。特に製造業はマイナス10.5と落ち込みが大きい。

   大丈夫か、日本経済? エコノミストの分析を読み解くと――。

  • どうなる日本経済?(写真はイメージ)
    どうなる日本経済?(写真はイメージ)
  • どうなる日本経済?(写真はイメージ)

マイナスに転じた製造業、プラス維持の非製造業に明暗

   景気の先行きに不安を与える経済指標については、3月8日、内閣府が1月の景気動向指数速報値を発表したばかり。前月より3.0ポイント低くなり、コロナ禍直後以来、最大の下げ幅となった。

   J‐CASTニュース会社ウォッチでは、景気の後退局面入りが近いと予測するエコノミストの分析も踏まえて「日本経済、景気後退入り近い? 1月景気動向指数が悪化、エコノミストが指摘「世界的な製造業落ち込みで、日本の輸出が悪化...」(2023年3月9日付)という記事で紹介した。

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景気は後退する?(写真はイメージ)

   今回の「法人企業景気予測調査」とは、日本経済に大きな影響を与える企業活動を把握するために、内閣府と財務省が合同で行う調査だ。結果は3か月ごとに年4回、6月、9月、12月、3月に公表する。景況判断指数の1つで、企業に対し自社企業の「業績」「景況」「売上高」「経常利益」「設備投資」などの項目について判断や見通しを聞く。

   回答は「上昇」「不変」「下降」「不明」とあり、「上昇」と回答した企業の割合から「下降」と回答した企業の割合を差し引いて指数を算出する。たとえば、自社の「景況」(景気の受け止め)について前の3か月と比べて「上昇」と答えた割合から「下降」と答えた割合を差し引いた、プラス・マイナスの指数で表す。

   今回の調査は1万4007社から回答を得た。内閣府・財務省が公表した「法人企業景気予測調査(令和5年1~3月期調査)結果の概要」や、報道をまとめると、大企業の全産業の景況判断指数(BSI)はマイナス3.0と、3期ぶりのマイナスだった。特に、製造業が海外経済の減速が響き、マイナス10.5となった。製造業は2期続けてのマイナスだ。

   スマートフォンなどの需要が減ったことが響き、情報通信機械器具製造業がマイナス20.8。原材料コストの上昇が景況感を下押しし、化学工業はマイナス17.3、食料品製造業はマイナス23.6といった案配だ。

   ただ、製造業の「設備投資」は好調を維持している。2022年度は前年度比8.6%の増加見込みで、化学工業(20.3%増)や情報通信機械器具製造業(23.1%増)が全体を押し上げた。

   一方、新型コロナが落ち着き、正常化が進む非製造業は「景況」はプラス0.6だった。生活関連サービス業ではプラス52.9と絶好調、政府の観光支援策「全国旅行支援」もあって宿泊業・飲食サービス業はプラス3.2だった。

   財務省では「一部に弱さは見られるものの、景気は緩やかに持ち直している。原材料価格の上昇の影響などについて引き続き、注視していきたい」としている。

製造業は5期連続マイナス、景況感の悪化が続く

   こうした結果をエコノミストはどう見ているだろうか。

   「海外景気悪化の影響を受け、大企業製造業の企業マインドに下押し圧力がかかり、先行きに慎重になっている」と指摘するのは、第一生命経済研究所の副主任エコノミスト大柴千智氏だ。

   大柴氏はリポート「法人企業景気予測調査(2023年1-3月期)~製造業で先行き慎重姿勢が窺える内容に~」(3月13日付)のなかで、「景況判断BSIは季節性が出やすく、また、前期から改善したか、悪化したという方向性の回答のため、景況感を把握するには季節調整値を見るのが適している」として独自に指数を算出、グラフを作って分析した【図表】。

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(図表)景況判断BSI(大企業、季節調整値)(第一生命経済研究所の作成)

   すると、大企業製造業の景況感悪化が際立ったという。

「季節調整値でみると、大企業全産業でプラス1.2(10~12月期:マイナス4.7)、大企業製造業でマイナス4.6(10~12月期:マイナス9.6)、大企業非製造業でプラス4.0(10~12月期:マイナス2.4)となった。大企業非製造業で景況感が改善したことで、大企業全産業もプラスに転じた」
「その一方で、大企業製造業では5期連続のマイナスとなり、景況感の悪化が続いている。米国の金融引き締め長期化による海外景気の悪化懸念を背景に、輸出や生産が減速していることが企業マインドを下押ししているとみられる」

   また、2022年度の売上高計画と経常利益計画(除く金融保険業)をみると、ともに全産業では前回(10~12月期)に比べ、やや上方修正となっているが、業種別にみると、非製造業は上方修正なのに、製造業は下方修正となっており、製造業に下押し圧力がかかっていることがわかる。

   そして、2023年度の設備投資計画を見ると、前年度に比べて製造業がプラス20.1%、非製造業がプラス2.9%と、2023年度に引き続き強い投資計画となっており、企業の設備投資意欲が衰えていないことが示唆される。この点は内閣府・財務省の発表どおりの傾向だ

   しかし、大柴氏はこう指摘するのだ。

「製造業を中心とした景況感や利益計画の悪化を踏まえると、設備投資計画の強さを額面通りに受け取れないだろう。上述の通り、2022年度の経常利益計画は製造業が下方修正となったほか、2023年度の利益計画は全規模全産業でも同マイナス1.2%と減益計画となっている」
「米国の金融引き締め長期化による海外景気の悪化懸念から輸出や生産の減速が予想される中、製造業を中心に設備投資の原資となる企業収益について厳しさを増すことが予想される。国内景気が緩やかに回復することで非製造業の持ち直しが期待できることから、先行きの設備投資は均せば増加傾向が続くと予想するものの、海外経済減速の下押しで増勢は鈍化する可能性が高いだろう」

(福田和郎)

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