47都道府県別に見る「世帯の状況」...「婚姻率、離婚率」と「共働き世帯」には関連性あるか?【俯瞰して見る日本(2)】(鷲尾香一)

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   シリーズで連載中の「俯瞰して見る日本」。第2回は、世帯の状況を見ていきたいと思う。

   まずは、一般世帯数の状況を取り上げる。そして、婚姻率と離婚率、一般世帯数に占める共働き世帯の割合。さらに、婚姻率、離婚率と共働きの関連性に注目してみた。

世帯数最多の東京都は、最小の鳥取県の33倍

   2020年度、全国の一般世帯数は5572万世帯。これは、前年度よりも239万世帯(4.5%)増加した。

   都道府県別で見た場合の世帯数は、当然のことながら、人口数に比例する。第1位の東京都には722万世帯が暮らしている。これは全国の13%、1割以上の世帯が東京都に集中しているということだ。東京都の世帯数は、最も少ない鳥取県の22万世帯の33倍に当たる。

   また、上位10都道府県の世帯数の合計は3339万世帯で、全国の世帯数の60%を占める。

   わずか10の都道府県に全世帯の6割の世帯が集中していることが、大都市への人口集中が進み、地方の過疎化が進んでいることの表れだ。

   世帯数の下位10を見ると、いずれもが人口減少により過疎化が進んでいる県が顔を揃えている。ちなみに、一般世帯のうち単身者世帯が多いのは、東京都で50.24%だ。東京都の半分は独身者世帯で、これは全国でも圧倒的な比率だ。(表1)

人口1000人あたりの婚姻率...5件超えるのは東京都、沖縄県だけ

   では、婚姻率と離婚率はどのような状況なのかを2020年度の状況から見てみよう。

   まずは婚姻率だが、人口1000人当たりの婚姻率が5件を超えているのは、東京都と沖縄県だけとなっている。人口数の多い東京都で婚姻率が高いのは、上位10に入っている他の都道府県が大都市を抱える都道府県であることからわかる。ただ、婚姻率の全国平均は4.17件で、これを上回っているのは、7位の広島県までだ。

   一方で、沖縄県は2021年度の東京都の人口数1401万人に対して、25位の147万人に過ぎない。ところが、連載第1回の人口関連で取り上げた通り、合計特殊出生率は全国1位だ。半面、東京都の合計特殊出所率は全国最下位であり、東京都では結婚する割合は高いが、子どもが生まれない一方で、沖縄県では結婚する人が多く、同時に子どもが生まれるということがわかる。

   婚姻率の下位10には特に東北地方を中心に人口減少が進み、高齢化率が高い県が並ぶ。これらの県の婚姻率の低さには、結婚適齢期にあたる若者層の人口減少が強く関係していると思われる。(表2)

   当然のことだが、婚姻がなければ離婚はない。したがって、離婚率の上位10には、婚姻率の上位10に入っている沖縄県、福岡県、大阪府が入っている。離婚率のトップは沖縄県で2.32件と最下位の富山県の約2倍の離婚率となっている。(表3)

   ちなみに、婚姻率7位の広島県は、離婚率では23位、8位の滋賀県は36位となっており、滋賀県は結婚しても、離婚しない県民性と言えるかもしれない。逆に、婚姻率下位7位の高知県は離婚率上位7位に入っており、離婚を厭わない県民性と言えるかもしれない。

共働き世帯の割合...全国最小は東京都 トップは福井県

   さて、家庭環境を見る際の一つの指標となる、共働き世帯の割合を見てみよう。

   共働き上位では福井県がトップで、一般世帯の34.69%が共働き世帯となっている。全国平均は23.71%で、これを下回っているのは下位10位の高知県までだ。つまり、47都道府県中37県は共働き世帯の割合が平均以上となっている。(表4)

   東京都は共働き世帯が多いというイメージがあるが、実は東京都の共働き世帯の割合は、全国で最も少なく17.34%でしかない。

   共働き世帯の割合は、世帯数の多い大都市のある都道府県で低い。これらの都道府県では、仕事が豊富にあるにもかかわらず、共働きの割合が低いのは、所得水準が高いことに起因しているのかもしれない。

   興味深いのは、婚姻率や離婚率と共働き世帯との関係だ。

   婚姻率上位10の中で東京都、大阪府、沖縄県、福岡県、神奈川県、兵庫県の6都府県は、共働き世帯下位10に入っている。一方、離婚率上位10位のうち大阪府、沖縄県、北海道、福岡県の1府1道2県は共働き世帯下位10に入っている。

   つまり、共働きが「少ない」ことと、婚姻率、離婚率が高いことに関連性が見られる。特に、大阪府、福岡県、沖縄県は、いずれも婚姻率と離婚率が高く、共働きが少ない上位10に入っている。

   一方、婚姻率下位10のうち山形県、島根県、岐阜県の3県は共働きの多い上位10に入っている。また、離婚率下位10のうち福井県、山形県、長野県、島根県、新潟県、石川県の6県は共働きの多い上位10に入っている。

   このように、共働きが「多い」ことと婚姻率、離婚率が高いことにも関連性が見られる。特に、山形県と島根県はいずれも婚姻率と離婚率が低く、共働きが多い上位10に入っている。

   共働きが離婚の原因となっているとのイメージは、もしかすると間違っているのかもしれない。

   さて、第3回は「家庭の経済」について取り上げる。【第3回につづく】

鷲尾香一(わしお・きょういち)
鷲尾香一(わしお・こういち)
経済ジャーナリスト
元ロイター通信編集委員。外国為替、債券、短期金融、株式の各市場を担当後、財務省、経済産業省、国土交通省、金融庁、検察庁、日本銀行、東京証券取引所などを担当。マクロ経済政策から企業ニュース、政治問題から社会問題まで、さまざまな分野で取材。執筆活動を行っている。
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