戦略は大胆に、財務は堅実に
1兆円の年商規模に迫っているのが、ニトリとツルハだ。
ニトリは、商品企画から製造、販売を自社で手掛けるビジネスモデルで成長してきた。2020年末にホームセンターの島忠がグループ入りしたのは新たな事業戦略だ、と指摘している。
既存店でもプライベートブランドの家電が徐々に増え、衣と食の分野にも意欲的だという。似鳥昭雄会長は、2032年3000店舗、売上高3兆円を掲げ、海外展開も進めている。
ツルハは旭川市の薬局がスタート。M&Aをテコとして拡大してきた。国内2500店を超える店舗数を持つ。自らの屋号やビジネス上の手法を押しつけない代わりに、商品調達や管理業務など、あらゆる統合作業の段取りをまとめたツールが強みだという。
本書によると、中期目標は2025年に2750店舗、売上高1兆600億円だが、札幌市の本部内に貼り出されているのは「目標世界2万店、売上高6兆円」というから、驚きだ。
「アイン薬局」を展開するアインHDは、2022年5月、約100店舗を持つファーマシィホールディングス(広島県福山市)を子会社化した。薬局数は約1200店となり、業界2位の日本調剤にダブルスコアをつける形になった。
コロナ感染に対応したオンライン服薬指導にも一早く対応した。「かかりつけ薬局」として支持されることを目標に、2026年の売上高5000億円を目指している。
釧路市を発祥とするホーマックが合流したホームセンターのDCMホールディングス。小型ホームセンターとコンビニの機能を持ち合わせた「ホームコンビニ」というコンセプトで展開している。店舗名は「DCMニコット」。人口5000人未満のスーパーのない地域に、食品の品ぞろえを増やした小型店の出店を進めている。
本書は単に北海道企業の歩みを書いたものではない。人口減少、高齢化などさまざまな社会課題への取り組みにも触れている。
白鳥さんは、北海道発の小売企業を「ノーザンリテーラー」と呼び、成功の秘訣として、「戦略は大胆に、財務は堅実に」「デジタルを磨き、流通を自らコントロール」などと並び、「経営者はロマンとビジョンを語れ」と書いている。
M&Aをテコに拡大してきた企業が多いが、厳しい環境で育ったからこそ、強くなったのだろう。カラー写真も多く、この本を片手に北海道へ「ビジネス見学旅行」に行くのもいいだろう。(渡辺淳悦)
「不況に強いビジネスは北海道の『小売』に学べ」
白鳥和生著
プレジデント社
1760円(税込)