企業がITスキル以上に「期待」していることとは?
対して、採用する企業側の「『ITエンジニア職』人材の確保方針」をみると、「中途採用で、実務経験者を確保している」が「84.0%」と一番高く、次いで「中途採用で、実務経験はないが軽微なエンジニアスキルがある人材を確保している」が「52.0%」と二番目に高い。
「中途採用で、実務未経験者を確保している」(16.0%)は人材サービスを利用した人材確保と社内人材の育成よりも低くなっている。これについて、企業側の意見として
「他社での経験値に期待」
「IT以外に秀でた能力や実績」
「自己改善に意欲的な姿」
などを評価する意見が挙がっている。
必ずしもエンジニア経験者やプログラミング熟達者を得たいわけではなく、「未経験者」や「微経験者」の前職で身に着けた知見や経験をITとからめた課題解決につなげたいという期待感があるようだ。
ところが、未経験者・微経験者側と採用企業側の間には、必要スキルへの若干の認識ギャップがあるという結果が出ている。
図10は「『ITエンジニア職』未経験者・微経験者が応募時に企業が最も求めると思うスキル」を集計したものだ。
これを見ると、上位に「現在トレンドなプログラミング言語、フレームワークの取得」(未経験者=24.7%/微経験者=16.9%)、「ビッグデータ処理や機械学習などBIツール関連の技術」(未経験者=19.2%/微経験者16.9%)、「ブロックチェーンやスマートコントラクトなどWeb3関連の技術」(未経験者=13.7%/微経験者=16.9%)などと最新の技術が並ぶ。
他方、図11の企業側の「『ITエンジニア職』として未経験者・微経験者採用時に最も期待するスキルの1位には「コミュニケーションスキルの向上」(25.0%)、次いで「ビッグデータ処理や機械学習などBIツール関連の技術」(19.0%)、マネジメントスキルの向上」(13.5%)が並ぶ。
このほかにも、未経験者・微経験者の従事したい業務には「Webエンジニア」、「ITコンサルタント(アプリ)」、「品質管理(IT・通信)」が上位に挙がるが、企業で求められているポジションは順に「社内SE」、「品質管理(IT・通信)」、「テクニカルサポート/ヘルプデスク」だった。こうしたことなどから、職種に対しても若干の認識のズレが発生している。
このため、良いキャリアの拡大や職場に定着することを考えると、企業研究や面接などで応募者と採用側の間で、ポジションやスキルの面ですり合わせることが必要になりそうだ。
この調査結果を受けてdodaキャリアアドバイザーは
「個人が考える応募時に求められているスキルと企業が求めているスキルにはギャップがみられ、企業は、具体的なITスキルではなく、『コミュニケーション力』を期待しているという結果になりました。
実際に職務経歴書の作成や面接時のアピールポイントをまとめる際は、前職での職務経験から、論理的思考力や自走してアウトプットにつなげられる力などを伝えるなかで、コミュニケーション力についても触れるよう意識するとよいでしょう。もちろん、プログラミングスクール等への就学歴、取得した資格、また自作したアプリなどの成果物があれば積極的に盛り込むことは大変有効です」
とコメントしている。
さらに、doda編集長の大浦征也氏は、
「企業へITエンジニア職人材の確保方針と対象を尋ねた調査結果からは、『実務経験者の採用』が8割超と多いながらも、次いで『微経験者の採用(52.0%)』が続き、『未経験者の採用』も16.0%に上る結果が出ています(【図7】参照)。
この結果を表すように、転職サービス『doda』で扱う『職種未経験歓迎』表記がある求人票は、2021年1月対比で約3.0倍に伸びています(【図2】参照)。これらのことからも、ITエンジニア職転職において、経験がない又は浅い方を対象にした採用は広がりをみせていることがうかがえます」
と総括する。
なお、「ITエンジニア職」に関する調査は「個人向け調査」と「企業向け調査」に分けて実施。個人向け調査では、全国に住む、転職を検討しているまたは興味があり、ITエンジニア職未経験者・微経験者および現職以前にITエンジニア職経験がある20から30代男女会社員(正社員・契約社員)の200人を対象としたインターネット調査を2023年1月20日から1月27日まで行った。
また、企業向け調査では、全国に住む、ITエンジニア職人材の獲得経験がある20代から60代男女の中途採用・人事担当者を対象に200名にインターネット調査を2023年1月20日から1月27日までに行った。