「職場のエンゲージメントを高めて新入社員の離職を防止しよう」との人事部長の訓示...どう行う?【上司力を鍛えるケーススタディ CASE24(後編)】(前川孝雄)

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    「前川孝雄の『上司力(R)』トレーニング~ケーススタディで考える現場マネジメントのコツ」では、現場で起こるさまざまなケースを取り上げながら、「上司力を鍛える」テクニック、スキルについて解説していきます。

   今回の「CASE24」では、「職場のエンゲージメントを高めて新入社員の離職を防止しよう」との人事部長の訓示に悩むケースを取り上げます。

働きがいが生まれる現場を見せる

「職場のエンゲージメントを高めて新入社員の離職を防止しよう」との人事部長の訓示...どう行う?【上司力を鍛えるケーススタディ CASE24(前編)】(前川孝雄)>の続きです。

   「百聞は一見に如かず」と言う通りに、新入社員を働きがいが生み出される現場、瞬間に立ち会わせ、触れさせることは効果的です。間接的な体験ではありますが、言葉以上に説得力があり、実際の自分の職場での仕事場面を通して働きがいを体感できることが重要です。

   上司や先輩社員の仕事への立ち合いや同行は、OJTの一環として設定する機会があるでしょう。ただし、ここでのポイントは、単に仕事の内容・手順を見せるだけでなく、上司や先輩がお客様や取引先にたいする便益(お役立ち)を図り、それに対して相手からの感謝を頂ける場面を見せることです。

   特別な場を設定する必要はありません。日常の店頭や窓口などでの接客・相談業務や、取引先との打ち合わせ等への立ち合いや同行の機会などでよいのです。ただその際に、上司・先輩は顧客満足をより高めることができるポイントを予め想定しておき、意図的に行います。

   そして後ほど、その場面を新入社員と一緒に振り返り、どのような意図や準備をもって行ったのかを伝えるのです。そのことによって、新入社員は相手に貢献することで感謝を得られる働きがいの場面を目の当たりに感じるとともに、そのための考え方や方法も学べます。

   自社のなかで、組織の理念やビジョンに沿った仕事や熱意をもつ上司や先輩の仕事ぶりを直接見ることで、「自分もこの職場で力をつければ、顧客貢献や地域貢献などを通して働きがいが得られる」という可能性と希望を感じられるのです。

チームに貢献する仕事を与え、感謝や称賛を表す

   新入社員に、働きがいを体験させるもう一つの有効な方法は、上司や先輩などチームのメンバーに貢献する役割や仕事を与え、成果の手応えを実感させることです。

   新入社員は、しばらくは手習い期間中で、仕事を通してチームの役に立てるまでには時間がかかります。それでも、わずかずつでも自己効力感を持たせることは大切です。また、本人が今の自分にできることで少しでもチームや組織に貢献しようとする気持ちは育てたいものです。

   そこで上司は、新入社員にできる上司や先輩のサポート業務や、チームへの貢献業務を与えて、効果的に実行できるようにしましょう。新入社員の役割や働きがチームから感謝される場面や、承認され頼りにされる状況をつくるのです。いわば、新入社員の株を上げる工夫です。まだ顧客貢献にまで手が届かないなかでも、上司や先輩から感謝されることは本人の働きがいを十分に高めるのです。

   そのためにも、新入社員の貢献に対しては、積極的に感謝の意を表しましょう。

   「〇〇さんが〇〇してくれたおかげで本当に助かった。どうもありがとう」ときちんと言葉で伝えます。また、あまり目立たない行為でも役立ったことであれば、「〇〇に気を利かせてくれたことがよかった」と褒めましょう。感謝や称賛を述べることは、チーム全員の前で行ってよい行為です。

   上司や先輩から承認され、頼りにされ、感謝をされる――。その体験によって、働きがいを実感し、自らそうした役割や仕事を積極的につくり出していこうとする意欲を育んでいくことがなによりも大切なのです。

※「上司力」マネジメントの考え方と実践手法についてより詳しく知りたい方は、拙著『部下全員が活躍する上司力 5つのステップ』(FeelWorks、2023年3月)をご参照ください。
※「上司力」は株式会社FeelWorksの登録商標です。


【プロフィール】
前川 孝雄(まえかわ・たかお)
株式会社FeelWorks代表取締役
青山学院大学兼任講師、情報経営イノベーション専門職大学客員教授

人を育て活かす「上司力」提唱の第一人者。リクルートを経て、2008年に管理職・リーダー育成・研修企業FeelWorksを創業。「日本の上司を元気にする」をビジョンに掲げ、「上司力研修」「50代からの働き方研修」「eラーニング・上司と部下が一緒に学ぶ パワハラ予防講座」「新入社員のはたらく心得」などで、400社以上を支援。2011年から青山学院大学兼任講師。2017年働きがい創造研究所設立。情報経営イノベーション専門職大学客員教授、一般社団法人 企業研究会 研究協力委員、一般社団法人 ウーマンエンパワー協会 理事なども兼職。連載や講演活動も多数。
著書は『50歳からの逆転キャリア戦略』(PHP研究所)、『「働きがいあふれる」チームのつくり方』(ベストセラーズ)、『コロナ氷河期』(扶桑社)、『50歳からの幸せな独立戦略』(PHP研究所)、『本物の上司力~「役割」に徹すればマネジメントはうまくいく』(大和出版)、『人を活かす経営の新常識』(FeelWorks)、『50歳からの人生が変わる 痛快! 「学び」戦略』(PHP研究所)等30冊以上。最新刊は『部下全員が活躍する上司力 5つのステップ』(FeelWorks、2023年3月)。

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