「職場のエンゲージメントを高めて新入社員の離職を防止しよう」との人事部長の訓示...どう行う?【上司力を鍛えるケーススタディ CASE24(前編)】(前川孝雄)

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仕事の目的を考える習慣を身に着けさせる

   たしかに、働きがいとは仕事のなかで、各自が能動的に働きかけた結果から得られるもの。自分自身の体験を通して、実感するしかありません。しかし、新入社員はまず仕事の基礎知識や基本実務を一通り覚える研修やOJTに取り組む立場。そこで、自ら働きがいを感じる機会を得ることは、なかなか難しいかもしれません。

   それでも、上司や先輩が働きがいを大切に考えていることを示し、その意義や内容をしっかりと伝えていくことは重要です。仕事の経験を積ませる前のオリエンテーションの場でも、この点を心がけましょう。

   新入社員に限らず、部下自らが仕事へのモチベーションの維持・向上を図るためには、自分の仕事の真の目的とは何か。常にそこに立ち返り考える習慣を身に着けさせることが大切です。このテーマを考えるうえでの素材として、「3人の石切職人」の有名な逸話が参考になります。新入社員に紹介してもよいでしょう。次のような話です。

   一所懸命に作業をしている3人の石切職人がいました。そこで3人に、「あなたは何をしているのですか?」と尋ねました。

   1人目の職人は「これで生計を立てているんだ」と不機嫌そうに答えます。これに対して、2人目の職人は「国中で一番の石切の仕事をしているんだ」と少し自慢そうに答えました。そして、3人目の職人は、その目を輝かせながら「立派な大寺院を造っているのさ」と答えたといいます。

   同じ石切の仕事でも、その目的をどう理解するか、その目的への高い志を持って行っているかどうかで、働きがいも違ってきます。「より素晴らしい、後世に残るような大寺院を建てよう」と思えば、石の切り方も変わってくるかもしれません。また、その他にも自分ができる工夫や役割があるかもしれないと、進んで新たな仕事を開拓するかもしれません。

   同じ仕事でも目的に立ち返ることで、意味合いが変わって見えてくるのです。この逸話は、仕事の目的を考えることの大切さを分かりやすく伝えてくれます。

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