企業の法務部門は何をしているのか?

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良き法務担当者は、良きビジネスパーソンである

   法務担当者のキャリアについて触れている。

   法務担当者として求められるスキルとして、・事務処理力・ビジネスの理解・法律等の理解・情報収集と分析・文書起案・倫理・組織横断的行動・解決策の整理と提案・交渉・リーダーシップを挙げている。これらの一連の能力のうち、法律等の理解以外はほぼすべて、「一般的なビジネスパーソンに必要な能力」ともいえる。

   だから、「良き法務担当者は、良きビジネスパーソンである」と言い換えられるかもしれない、と指摘している。

   調査によると、法務経験者としての中途採用者が在籍する企業は、67.0%だという。これは法務のキャリアの流動性が高いことを示している。つまり、転職市場でもキャリアの発展性があるということだ。

   第2章以降は、契約法務総論、契約法務各論、BtoC法務、紛争解決法務、知的財産権、労働法務、スタートアップ法務、テクノロジーと法務など個別の実務について解説している。そこで印象に残ったのは、「雛形があれば、1年目の法務部員でも、最低限の仕事ができる」という言葉だ。

   雛形を勉強するのは大変有益なことだ。

   その際、雛形を「無味乾燥な条項の集合体」として読んでも意味がないという。具体的な取引プロセスをイメージしながら、その雛形はどのような取引を想定しているのか、最低限必要な事項は何か、契約書で明示的に合意をしないと適用されるデフォルトルールは何か、雛形はデフォルトルールどおりになっているのか、といった観点から読むべきだ、と説明している。

   ITを導入したLegalTech(リーガルテック)についても言及している。

   法務部門が要らなくなる時代が来るかもしれないとさえ言われているそうだ。しかし、松尾さんは、仮にそうなっても、「良き法務担当者」、つまり、「良きビジネスパーソン」であれば、行う業務の内容は今後変わるかもしれないが、引く手あまただと考えている。

   法科大学院ができたものの、「法曹をめざさない法学部生」への疑問から、各大学の法学部の人気は下がった。だが、本書を読み、認識を新たにした。法務の知識を持ったビジネスパーソンは最強だと思ったからだ。(渡辺淳悦)

「キャリアデザインのための企業法務入門」
松尾剛行著
有斐閣
2090円(税込)

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