市場はパニックに陥っていないが、米国株は一進一退
パウエル発言を受けて、「市場では積極的な金融引き締めへの織り込みが加速した」と指摘するのは野村アセットマネジメントのシニア・ストラテジスト石黒英之氏だ。
石黒氏はリポート「パウエルFRB議長の議会証言はタカ派的な内容」(3月8日付)のなかで、わずか1日で今後の利上げ予想を変えた「FF(フェデラル・ファンド)金利先物市場が予想する3月FOMCの利上げ確率」予想のグラフを示した【図表2】。
これを見ると、3月6日時点で、3月FOMCで0.5%の利上げを予想する割合は24.7%だったが、パウエル発言があった3月76日時点では62.8%に増えた。
また、9月FOMCまでに累計で1%利上げする確率は100%となり【再び図表2】、同1.25%利上げする確率も19.8%(前日は0%)となるなど、FF金利の到達地点が6%に達する可能性も出ている。
しかし、石黒氏は「市場はパニックには陥っていない」と指摘する。
「2023年末のFF金利先物が5.5%超となるなど、昨年12月のFOMCで示された同5.125%(中央値)よりもさらに引き締めが進む可能性を織り込む動きとなっていますが、市場のリスク選好姿勢は衰えていないようにみえます。3月7日の米国市場では2年国債利回りが上昇(価格は下落)し、米国株は総じて軟調でしたが、パニック的な動きにはなっていません。
今後はFRBの利上げの累積効果が徐々に物価抑制に効き始めると予想されるほか、現在の米経済は高金利に耐えられる状況にあるとみられ、当面はインフレ指標をにらみながら米国株は一進一退の動きとなりそうです」