「週刊東洋経済」「週刊ダイヤモンド」「週刊エコノミスト」、毎週月曜日発売のビジネス誌3誌の特集には、ビジネスパースンがフォローしたい記事が詰まっている。そのエッセンスをまとめた「ビジネス誌読み比べ」をお届けする。
人口減の日本が経済成長するには、生産性向上しかない
3月6日発売の「週刊東洋経済」(2023年3月11日号)の特集は、「大解剖! ニッポンの給料」。昨年までと打って変わり、今春は賃上げを表明する企業が相次ぐ。最新の給料事情を追っている。
なぜ今、賃上げが注目されるのか。
1つ目は、輸入品の値上がりによる物価上昇だ。物価が上がっているのに給料が上がらなければ、社員の実質賃金はマイナスとなり、就業意欲をそぐことになる。そうした事情が経営者を賃上げに駆り立てている。
2つ目は、構造的な人手不足時代に突入したことだ。女性と高齢者の労働力参加には、もう頼れない。BNPパリバ証券の河野龍太郎・チーフエコノミストは、「日本の労働供給はいよいよ掘り尽くされ、限界に近づいてきている」と分析している。
3つ目は、日銀が目指す「2%物価目標の達成」に影響するからだ。物価や賃金のノルム(常識ないし規範)が変化すれば、金融政策の正常化も実現する。2%目標に見合う賃金上昇率を日銀は3%程度に見ているという。
今年の春闘は、賃金の上昇を好機に変え、生産性向上や消費の拡大につなげていけるのか、大きな転機になると見られる。
金融アナリストで小西美術工藝社社長のデービッド・アトキンソン氏は、日本経済の浮揚には「最低賃金の引き上げが不可欠」と訴える。人口減の日本が経済成長するには、生産性向上しかない。生産性と最低賃金は強い相関関係があり、それゆえに最低賃金の引上げが必要だ、というのだ。
また、日本には生産性の低い中小企業が多過ぎるとしたうえで、生産性を高めることをしていない企業、最低賃金で労働者を搾取する企業が淘汰されるのは何ら問題がない、と語っているのは印象的だ。
◆初任給横並びを11年ぶりに破った三井住友銀行
一方、日本企業の賃金に関する新しいルールを紹介している。
たとえば、横並びと前例踏襲が多かったメガバンクでは、新入社員の初任給では各行が違いを出そうとしている。
三井住友銀行は2023年4月に入行する大卒新入社員の初任給を25万5000円にする。みずほファイナンシャルグループは24年4月入社組の初任給を26万円にする方針だという。長らく20万5000円で横並びだったのが一転、3メガバンクの初任給は引き上げ合戦の様相を呈している。
その一因は銀行人気の低落にあるという。コンサルや商社にどんどん内定者を取られているからだ。三菱UFJ銀行も24年4月入社の新卒から追随するものと見られる。
「飛び級」で昇進する大和ハウス工業の人事制度も興味深い。
上司の推薦があれば、6等級(主任・係長格)から4等級(課長格)に一気に昇進できるという。標準で入社13年、最短でも9年かかる管理職への昇進が早まるのだ。この飛び級で、月給は15万円も増えるそうだ。成果を出せないと降格もあるため、信賞必罰の側面があることも忘れてはいけない。
同誌が独自試算した40歳年収のランキングも載っている。上位1400社を業種別で分けて掲載している。すべての業種でランキングすると、上位10社は以下の通りである。
1位M&Aキャピタルパートナーズ(3031万円)、2位キーエンス(2266万円)、3位ヒューリック(1812万円)、4位地主(1700万円)、5位伊藤忠商事(1527万円)、6位ストライク(1523万円)、7位三井物産(1500万円)、8位三菱商事(1491万円)、9位丸紅(1418万円)、10位レーザーテック(1358万円)
就活生に人気が高い大手商社が上位に並ぶ。親しい友人といえども、給料の額を尋ねるのははばかられる。このランキングを見ると、おおよそのことがわかるだろう。もっとも、40歳で年収1000万円を超える会社はそう多くはないようだ。