味の素の株価が2023年3月1日の東京株式市場で一時、前日終値比469円(11.7%)高の4487円まで上昇した。
前日2月28日の取引終了後に発表した中期経営計画が、ヘルスケア分野などに注力し、事業利益は2026年3月期にかけて年率15%以上の増益を重ねるとの意欲的な内容だったことを投資家が歓迎した。株主還元強化についても市場に評価された。
26年3月期まで事業利益年率15%増の目標...野村証券リポート「予想を上回る驚きの水準」
経営計画の中身を確認していこう。中期経営計画は「2030ロードマップ」と題しており、中長期的なビジョンを示したものだ。
市場が注目したのは、「2023年3月期までの構造改革局面から、2024年3月期以降、再成長フェーズに転じる」として明らかにした経営目標の水準の高さ。野村証券は3月1日配信のリポートで、「2026年3月期の財務目標はいずれも野村予想を上回る驚きの水準」と指摘した。
具体的には、事業利益は2023年3月期の1330億円(予想)から年率15%以上の成長を続けて2026年3月期に2000億円以上を目指す。その後は、年率10%以上の増益によって2031年3月期には約2850億円以上というもので、8年で2倍強に膨らむ計画だ。
また、ROE(自己資本利益率)は現預金の圧縮なども進めて、2023年3月期の11%から2026年3月期に18%、2031年3月期に約20%を目指す。
SMBC日興証券は3月1日配信のリポートで、2031年3月期は2023年3月期予想比約3倍とするEPS(1株当たり純利益)の目標に注目。事業利益の推移なども勘案して試算したところ、目標達成のための自社株買いの実行は累計で発行済み株式数の20%強に当たるという。
そして、「成長投資を強化しながら成長を加速させ、資産効率改善も進め株主還元も強化するという、実現できれば高く評価される内容」と記した。
足元の業績は好調 課題は、バイオ医薬品関連の収益伸長など「再成長」示せるか
味の素の足元の業績は好調だ。
2月28日には2023年3月期の連結業績予想を上方修正し、純利益を従来予想比70億円多い900億円と見込んだ。
遊休資産(固定資産)の売却利益計上などによるもので、本業の業績とは直接の関係はないが、もともと最高益を見込んでいたところにさらに70億円上乗せされるというものだ。そのうえ本業も、原材料費高騰を受けて調味料や冷凍食品を断続的に値上げし、収益を伸ばすことに成功している。
こうした中、中期経営計画で描いた道筋の通りに成長できるかを吟味する局面に入る。
今後、2024年3月期になって四半期の業績を公表していくなかで、「再成長」の一端を示すようなバイオ医薬品関連の収益の伸張などが確認できれば、株価には好影響となりそうだ。(ジャーナリスト 済田経夫)